天神・博多・中洲と一線画す「西中洲」ブランドとは?(前)
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まちのブランド化
福岡・西中洲は、商人の町・博多と武士の町・福岡を結ぶ、福博であい橋に接しており、古くから人で賑わうエリアだった。今でも、平日約2万3,000人、休日約2万6,000人の歩行者が行き交う福岡のセントラルポジションだ(福岡市公表「都心部歩行者交通量等調査(令和3年度)」参照)。
福岡市の中心部に相応しい喧騒が想起されるが、意外にも西中洲は落ち着いた雰囲気に包まれており、九州最大の繁華街・天神の奥座敷としても知られている。
落ち着いた雰囲気を保っている要因は2つある。1つは「西中洲地区建築協定」だろう。2004年に締結されたこの建築協定は、西中洲エリア約2haを対象に、風俗店やパチンコ店、ゲームセンターの新規出店、ならびに関連するネオンサイン広告を禁じている。建築物ならびに広告物に関して厳しい基準が設けられたことで、中洲とは一線を画す“西中洲”としての特徴付けに成功している。
もう1つは、17年から始まった市による道路の高質化工事。自然石や玉砂利、煉瓦やタイルなどの使用が推奨され、西中洲の道路は徐々に石畳化が進んでいった。併せて、夜間の照明を暖色系に統一することで、風情ある路地空間が創出され、大人の隠れ家としての趣も醸成されていった。
このほか、室外機を植栽で目立たなくするなどの修景や、飲食店が暖簾をかけることで生まれる町並みへのアクセントなど、規模の大小を問わず、官民一体となって行われたさまざまな景観誘導が、天神の奥座敷というブランディングにつながっている。通(つう)の社交場としてすでに評価を得ていた西中洲が、さらにその価値を高めることができたのは、こうした2000年代以降のまちづくり施策によるところが大きい。
インフラ更新が生む期待感
飲食店や駐車場、住居が混在し、町並みに統一感のなかった西中洲は、官民連携のまちづくり施策によって、都心の喧騒を束の間忘れられる、日本情緒と華やかさが感じられる一画へと再生を遂げた。那珂川と薬院新川の2つの川に挟まれた町内には、寿司・懐石の「河庄」、馬肉料理の「好信楽西中洲」、Whisky Bar「夢庄」など、舌の肥えた食通からも高い評価を受ける飲食店やBarがひしめき合っており、これら飲食店の存在も、高質な空間形成に欠かせない要素となっている。
那珂川の対岸に広がる歓楽街・中洲、大人の隠れ家・西中洲は、天神~博多間の回遊軸でもある国体道路でつながっているが、国体道路の一部でもある春吉橋は経年劣化により新橋へと架け替えられた。架替工事期間中に架設された迂回路橋は、永久橋として残されており、橋長約64m、幅約23m、橋上敷地面積約1,500m2という空間を生かしたイベントスペースとして、周辺エリアの賑わい創出に一役買っている。
19年には、天神中央公園・西中洲エリアがリニューアル。かつて同エリアは木が鬱蒼と茂り、夜間の1人歩きには不向きと言わざるを得ない状況にあった。都心部、リバーサイドという立地特性を生かせていなかったのだ。しかし、飲食・休養施設「HARENO GARDEN(ハレノガーデン)」の新設を核とする、天神中央公園西中洲エリア再整備事業が完了。ランドマークでもある旧福岡県公会堂貴賓館は存在感を増し、観光客を中心にSNS用のフォトスポットとなった。
(つづく)
【代 源太朗】
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