2024年04月16日( 火 )

天神・博多・中洲と一線画す「西中洲」ブランドとは?(後)

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清流公園も再整備へ

 道路の高質化や公園再整備などにより、西中洲ではホテルや商業ビルの開発計画が相次いで始動した。薬院新川沿いのコインパーキングだったところでは、ホテルグランドルチェ博多(S造・地上11階建)が、天神中央公園の南側ではテナントビル・AER西中洲(RC造・地上7階建)、MKホテルズ西中洲(RC造・地上9階建)が、国体道路沿いではホテル・DEL style福岡西中洲(S造・地上10階建)が開発された。

 また、春吉橋からキャナルシティ博多(住吉)にかけて広がる清流公園は、福岡地所(株)を代表とするグループがPark-PFI制度を活用してリニューアルすることが決定。24年度の着工、25年春頃の供用開始を予定している。福岡地所は「水辺のロケーションとエリアの特性を生かした公園整備、施設整備による憩いの空間創出と、多様なイベント開催による賑わいの創出を通じ、公園利⽤者の利便性や満足度の向上、都心部の回遊性強化を図り、エリアの魅力増進に貢献します」としており、建築と広場が一体となったシンボリックなデザインの建物を開発予定だという。

清流公園(南側)イメージパース 資料:福岡地所
清流公園(南側)イメージパース 資料:福岡地所

西中洲の再興と未来

 天明期(1751~89年)に大阪の芸妓が九州入りし、寛政期(89~1804年)には博多でも芸妓が定着したと言われている。その後、黒田藩によって旧浜新地(現在の博多区中島町5丁目辺り)が歓楽地に定められ、これを契機に芸者屋や飲食店が周辺エリアにも広がっていったとされる。1889(明治22)年には博多初の券番()が相生町に誕生し、中洲券番や新券番など、複数の券番が後に続いた。

 1924(大正13)年、九州鉄道の起点駅・福岡駅(現・西鉄福岡(天神)駅)が開業すると、天神も博多に負けず劣らずの賑わいを見せるようになる。第二次世界大戦に突入するとすべての券番が消滅したが、戦後の47年には春吉で中洲券番が復活するなど、周辺エリアは花街としての華やかさを取り戻していく。

 西中洲もこの流れのなかで、割烹料理店や料亭が軒を連ね、芸妓が通りを行き来する、華やかながらものどかな時間が流れる町としての特性を備えることになる。西中洲で働く人たちはそのまま町内に住居を構え、所帯をもち、築き上げてきたものを子どもたちへと託してきた。しかし、博多、天神のまちづくりが盛況を極めるなかで、西中洲の人口は減少を続け、西中洲地区建築協定締結時の2004年の人口は250名を割り込んでいた。生活拠点から訪れる場所へと町の特性が変質していくなかで、前述のまちづくり施策や民間開発が呼び水となり、23年には351名まで増加(福岡市公表「登録人口(公称町別、12月末時点)」参照)。再び人々の暮らしの息吹が感じられる町として、活気を取り戻している。

 大人の隠れ家としてのブランド構築と維持のための施策が民間企業の開発意欲を高め、生活拠点としての利便性が見直されたことで、減少傾向に歯止めがかからなかった町内人口は増加に転じた。意図されたものではなかっただろうが、西中洲地区建築協定締結から続く一連の連鎖型まちづくりとも呼べる動きは、改めて官民一体となった地方創生への取り組みこそが、将来を見据えた都市計画マスタープランに不可欠であることを示している。

行列が絶えない元祖博多めんたい重
行列が絶えない元祖博多めんたい重

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 博多と天神を結ぶエリアであり、福岡市内における2大都心の狭間のエリアでもある西中洲を舞台にした民間企業の開発意欲は、今後も高まっていくかもしれない。都心に近いにもかかわらず、静けさを残す西中洲らしさを守りつつ、さらなる発展を遂げることができるのか、まちづくりの動向が注目される。

※券番…芸妓の取り次ぎや花代と呼ばれる芸妓の出演料の清算などを行う事務所のこと。 ^

(了)

【代 源太朗】

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