2024年06月13日( 木 )

いよいよ動き出した九大箱崎の再開発(1)

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九州大学箱崎キャンパス跡地
九州大学箱崎キャンパス跡地

次点以下に大差を付け、住商グループがトップに

 4月18日に「九州大学箱崎キャンパス跡地地区土地利用事業者募集」の開札が行われ、優先交渉権者として、住友商事(株)(東京都千代田区)を代表とし、九州旅客鉄道(株)(JR九州)や西日本鉄道(株)、西部瓦斯(株)(西部ガス)らで構成される企業グループが選定された。同グループにはほかに、清水建設(株)、大和ハウス工業(株)、東急不動産(株)、(株)西日本新聞社が参加。譲渡価格は371億7,800万円で、定期借地用地3.5haの土地賃貸料は月額1,260万円で、借地期間は60年となっている。今後、土地の引渡しに係る協定とまちづくりに係る協定などは2025年度に締結される予定で、25年度以降に土地の引き渡しが行われる予定となっている。

 今回の公募は、18年9月末の伊都キャンパスへの統合移転完了をもって、大学キャンパスとしての役割を終えて閉校となった箱崎キャンパス跡地において、その後の再開発を行う土地利用事業者を決めるためのもの。募集概要では、箱崎6丁目の約28.5ha(一般定期借地を含む)において、九州大学箱崎キャンパス跡地グランドデザインの実現を目指して、(1)まちづくりのコンセプト、(2)スマートサービス(スマートサービスコンセプトや先進的な取り組みなど)、(3)都市空間(広場・動線計画や街並み景観・歴史の継承など)、(4)都市機能(都市機能の配置計画や新たな来街者を呼び込む交流・にぎわい機能など)、(5)まちづくりマネジメント(エリアマネジメント組織の取り組みなど)の5項目の提案を求めていた。

【図】今回の公募の対象地(九州大学HPより)
【図】今回の公募の対象地(九州大学HPより)

 対象地(【図】参照)はA街区約20.1ha(A-1:約6.2ha、A-2:約2.4ha、A-3:約11.5ha[うち3.5haは定期借地用地])、B街区約0.9ha(B-1:約0.4ha、B-2:約0.5ha)、C街区約7.5ha(C-1:約1.4ha、C-2:約3.2ha、C-3:約2.9ha)の計約28.5ha。各街区の最低譲渡価格はA街区(定期借地部分を除く)が245億200万円、B街区およびC街区が126億7,600万円で、A街区の定期借地部分の最低土地賃貸料(月額、公租公課相当額を含む)は1,260万円となっていた。

 今回の公募ではほかに、九州電力(株)や(株)九電工、東京建物(株)らで構成されるグループと、トライアルグループの計3グループが応募していた(【表】参照)。5月16日に公表された審査結果では、企画評価点が最大750点、価格評価点が最大250点の総得点1,000点満点のうち、住商らのグループが企画評価点659.3点、価格評価点241.0点の総得点900.3点を獲得。九電らのグループは企画評価点563.6点、価格評価点250.0点の総得点813.6点、トライアルグループは企画評価点400.8点、価格評価点241.0点の総得点641.8点だった。企画内容の評価項目である「まちづくりコンセプト」「スマートサービス」「都市空間」「都市機能」「まちづくりマネジメント」のすべてで、住商らのグループがほか2グループを引き離した。一方で、価格評価点では九電らのグループが満点を獲得してトップだったが、総得点では住商らのグループが次点の九電らのグループに90点近くの大差を付けた。

【表】優先交渉権者&応募者

高質で、みどり豊かな未来のまちづくり

 優先交渉権者に決定した住商・JR九州・西鉄・西部ガスらのグループの提案では、まちづくりのコンセプトを「HAKOZAKI Green Innovation Campus」とし、箱崎キャンパス跡地および九州大学の歴史を継承したうえで、高質でみどり豊かなまちづくりを進めて新たな価値を提案し、新産業を創造・発信していくとともに、環境先進都市として世界を牽引する、未来のまちづくりを実現するとしている。また、コンセプトの6つの方針を「九州大学100年の歴史の継承」「新しいライフスタイルの創出」「新産業の創造と成長」「福岡の文化・千年の歴史の継承」「みどりあふれる空間の創出」「環境先進都市の創造と成長」と提示。加えて、IOWN構想(※)に基づいた新たな価値創造により、提案コンセプト実現に向けて取り組んでいくとしている。

※IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は省電力・低遅延・大容量に関する革新的な通信技術。IOWN構想はまち全体のデジタルツインを実現したうえで、すべてのスマートサービスを統合・連携することで未来のスマートシティを実現する考え方。

 公募で提案が求められていたスマートサービスについては、生活の質や空間の質、仕事の質のそれぞれを向上させて“人生の質”を高めるサービスとなることが重要だと定義。「Co-Creation(みんなで生み出す)」「Inclusive(誰でも使える)」「Personalize(1人ひとりに最適化)」「(R)Evolution(進化し続ける)」の4つのキーワードとIOWN構想を基に、職住遊近接のエリア特性を生かしたスマートサービスを提供し、「スマートサービス×都市空間・都市機能」によって分野を横断した価値を創造し、1人ひとりに最適なサービスを提供していくとしている。

 具体的なスマートサービスの提案を分野別に見ると、「安全」ではエリア全体を見守るスマートマネジメントセンターやAI見守りカメラの設置など、「健康」では健康情報を一元管理するPHR基盤やスマートクリニックサービスなどが挙げられている。また、「移動」では多様なシェア型パーソナルモビリティ(EVサイクル、EVスクーター等)などが、「防災」では3日分以上の非常用エネルギーを備えた地域防災拠点や、相互協調する分散型インフラ(eight-grids)構築などが、「エネルギー・環境」ではZEB・ZEH化による最大限の省エネ、再エネ由来電力の活用によるエネルギーの地産地消などを例示。さらに、「分野自由・横断」では、自律移動型ロボットを活用した施設内の警備や清掃、商品の販売・配送、空中3Dホログラフィックアートやプロジェクションマッピングなどを活用したインタラクティブアート、まちまるごと生体認証サービスなどが挙げられているほか、「先進的取り組み」では歩行者センサーを活用した歩車混在型の新しい自動運転社会への挑戦、「水素の利活用」ではさまざまな都市機能に応じた純水素燃料電池の利活用など、さまざまなスマートサービスの提案が行われている。

(つづく)

【坂田憲治】

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