2024年06月13日( 木 )

いよいよ動き出した九大箱崎の再開発(3)

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閉校前から動向注目 約50haの広大な跡地

在りし日の九大・箱崎キャンパス(2014年2月撮影)
在りし日の九大・箱崎キャンパス
(2014年2月撮影)

    さて、今回の優先交渉権者決定により、長らく動向が注目されていた九大・箱崎キャンパス跡地の再開発がいよいよ具体的に動き出していくわけだが、ここで同跡地をめぐるこれまでの経緯などをおさらいしておこう。

 遡ること1991年、九大では箱崎キャンパス(東区)や六本松キャンパス(中央区)などキャンパスが分散していたことに加え、建物の老朽化や福岡空港の航空機騒音に悩まされていたことから、箱崎および六本松両キャンパスと福岡県粕屋町の「原町農場」の統合移転を決めた。移転先となる伊都キャンパスは、丘陵地帯を切り拓いて整備された東西約2.5km、南北約2kmの約270haという国内最大級の敷地面積で、ヤフオクドーム約40個分。整備工事は2000年に着工し、05年の工学部を皮切りに、順次移転事業を進めてきた。そして18年9月末に伊都キャンパスへの統合移転が完了。箱崎キャンパスは大学キャンパスとしての役割を終えたが、1911年1月の大学創立からキャンパス閉校までの107年の間に、約16万7,000人の学生(学部・修士・博士の学位取得者)を輩出するとともに、社会の発展に貢献するさまざまな研究成果を生み出してきた。

 その歴史を継承する意味も込めて、九州大学箱崎サテライト(旧箱崎キャンパス)に残る一部の建物は近代建築物群として保存・活用される予定で、「旧九州帝国大学工学部本館」「旧九州帝国大学本部事務室棟」「旧九州帝国大学本部建築課棟」「旧九州帝国大学門衛所」の4棟が23年2月に国の登録有形文化財(建造物)に登録されたほか、今年3月には「旧九州帝国大学正門及び塀」が登録内定されたことで、箱崎サテライトに残存するすべての建造物が国の登録有形文化財となる。

 周辺エリアも含めて約50haもの広大な箱崎キャンパス跡地の再開発に向けては、閉校前からさまざまな協議が重ねられてきた。これまでに17回におよぶ跡地利用協議会(13年7月~24年5月)が開催されてきたほか、「跡地利用将来ビジョン」(13年2月)や「跡地利用計画」(15年3月)、「九州大学箱崎キャンパス跡地グランドデザイン」(18年7月)などを順次策定・公表。グランドデザインでは「まちづくりの基本的な考え方」として、「イノベーションを生み出す新たな拠点の創出」と「高質で快適なライフスタイルや都市空間づくり」の2つを設定。まちづくりの方向性として、平面・立体・複合的につながる多様な都市機能の誘導を図るほか、“ここ箱崎だからこそできるまちづくり”に向けてのまち全体の一体感を創出する空間整備や環境と共生した持続可能なまちの形成、良好なコミュニティを形成するマネジメントの仕組みづくり―などが示された。

 これらを踏まえたうえで、20年6月には福岡市が都市計画の決定・変更手続きを実施。これは、新たな拠点創出に向けて、地域拠点にふさわしい機能の導入を図るとともに、土地利用転換に向けた都市基盤を整えるためのもの。このとき用途地域の変更や、市施行の土地区画整理事業の事業実施に向けての区域決定などが行われた。

 その後、事業者公募に向けた条件整理などを実施。公募で提案を求める範囲は、箱崎キャンパス跡地などのまちづくりエリアのうち、UR都市機構が開発行為を行う南エリアの大部分と、福岡市が土地区画整理事業を行う北エリアの南側部分とされた。事業者公募は当初、20年度中にも開始される予定だったが、新型コロナの感染拡大で企業の経済活動が停滞していることなどを理由に2度にわたって延期。23年4月から事業者公募が開始となり、今年1月29日・30日の2日間で締め切られ、その後審査が進められていた。

JR新駅は27年開業 貝塚駅周辺で区画整理事業も

 今回、住商らのグループが優先交渉権者に決定したことにより、いよいよ箱崎キャンパス跡地の“本体”の新たなまちづくりが始まることになるが、並行して周辺での基盤整備も進んでいる。

 たとえば箱崎キャンパス跡地のすぐ近くの鹿児島本線の千早~箱崎駅間においては、今後の再開発を見込んでJRの新駅も設置される。新駅は西鉄貝塚線および福岡市地下鉄の貝塚駅の東側付近で、既存のJR箱崎駅から約1.7km、JR千早駅からは約2.3kmの距離となる場所で、現在はJR線路の踏切があるところに、踏切を廃止するかたちで設置を行う予定。新駅の東西を歩行者などが行き来できるよう市が自由通路を整備する方針で、事業費は概算で約13億円を見込んでおり、うち半額をJR九州が、残りを九大とURとが負担する。新駅の開業時期については、当初25年を目標としていたが、27年目標へと延期された。

 また、貝塚駅(福岡市地下鉄/西鉄)および新設予定のJR新駅の駅前広場や、エリア内の道路・公園・緑地などの再配置に関する「貝塚駅周辺土地区画整理事業」も進行。同区画整理事業では、貝塚駅の西側に設けられた駅前広場から国道3号に向けて幅員14mの新たな区画道路を整備し、その道路によって既存の貝塚公園を南北に分割するほか、貝塚駅とJR新駅との間を広場等でつなぐことで、交通結節機能の強化が図られている。事業施行期間は、事業計画の決定を公告した21年3月29日から、29年3月末(清算期間を除く)までを予定している。

 さらに福岡市においては16年秋に、世界経済フォーラムの「トップ10の都市革新」などの事例を参考に、アジアのリーダー都市を体現する新たなまちづくりのチャレンジとなる市のプロジェクト「FUKUOKA Smart EAST」が発表された。これは、広大な敷地で新たなまちづくりを行うことができる強みを生かし、「跡地利用将来ビジョン」や「跡地利用計画」を踏まえながら、モビリティやセキュリティ、エネルギーといった最先端の技術革新による、快適で質の高いライフスタイルと都市空間の創出に向けて取り組むもの。プロジェクト自体は、箱崎キャンパス跡地だけでなくアイランドシティも含めて対象エリアとしているが、すでに開発が進んでいるアイランドシティとは違い、これから大規模な開発が進んでいく箱崎キャンパス跡地がはたす役割は大きいとみられる。

(つづく)

【坂田憲治】

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