2024年06月13日( 木 )

野村不の福岡戦略、大手門再開発と物流施設

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 東京に本社を置く大手不動産企業は、日本全体で少子高齢化が進展するなかでも人口流入が続く福岡に着目し、事業展開を進めている。大手不動産企業の一角である野村不動産(株)(東京都新宿区)は、福岡・大手門エリアでの旧福岡家庭裁判所跡地の再開発に参画するほか、同社として九州初の物流施設「Landport福岡久山I」(福岡県糟屋郡久山町)を昨年から稼働している。同社オフィス事業部門は、福岡の市場について「九州のなかでも人口の増加している福岡は重要な投資先であると認識しております」とし、今後も積極的に投資を進めていく姿勢を明らかにした。

大手門の再開発
住宅などノウハウ注入

大手門再開発の完成外観イメージ(出典:財務省福岡財務支局の公表資料)
大手門再開発の完成外観イメージ
(出典:財務省福岡財務支局の公表資料)

 財務省福岡財務支局は1月18日、福岡市中央区大手門の旧福岡家庭裁判所跡地の一般競争入札について、野村不動産、東京建物(株)、西日本鉄道(株)、九電不動産(株)の4社グループが落札したことを公表した。2月19日に公表された落札金額は、約133億4,700万円。オフィスや住宅、ホテルなどを4社で共同開発する複合開発プロジェクトとなっている。

 建設を予定している建物は地下1階・地上23階建、延床面積4万8,400m2の規模で、低層部である1階に賑わいを生み出す200m2の緑とアートの広場空間、2~3階にオフィスを整備するほか、2階に眺望テラス、4~9階に外資系ホテル「インターコンチネンタルホテルズ&リゾーツ」(全117室)を設ける。10~23階は、全225戸の高品質な住宅(間取り1LDK〜4LDK)とする予定で、延床面積の約64%(3万1,000m2)とメインの用途を占める計画となっている。2029年度第4四半期に竣工、30年度第1四半期に開業する予定だ。

 オフィスや住宅、ホテルなどの詳細な開発内容については、共同開発する4社がそれぞれ分担して進めていくことになる。野村不動産は、とくに住宅やオフィスに関して、同社がこれまで培ったノウハウを反映していく方針だ。高品質な新築分譲マンションブランドである「PROUD(プラウド)」、賃貸住宅「PROUD FLAT(プラウド フラット)」などを展開し、「住まいのNO.1」ブランドを目指すとしている。また、オフィスは中規模ハイグレードオフィスの「PMO」、スモールオフィスの「H¹O」、サテライト型シェアオフィス「H¹T」を展開している。

 今回落札が決まったことについて、野村不動産の住宅事業部門は「事業者として、福岡市のなかでもとくに魅力の高い開発立地と捉えており、(福岡市の)セントラルパーク構想とも親和性のある、福岡市の発展に資する計画となると考えております」としている。

福岡でさらに3施設
物流施設の整備を計画

 野村不動産は23年6月、高機能型物流施設「Landport(ランドポート)」シリーズとして九州初の物件「Landport福岡久山I」の稼働を開始した。九州自動車道・福岡ICから約2.6kmと、福岡都市高速による福岡市内配送、九州自動車道による広域配送に適した久山地区に位置した良好なアクセスの立地。また、昨今の人手不足の状況では雇用確保も物流施設運営において重要で、同施設の周辺5km圏内には労働人口が約11万人と、雇用の確保が見込めるとしている。野村不動産の物流施設部門は、「福岡エリアにおける物流ニーズの高い福岡ICから約2kmに立地しており、施設も2階建で物流施設として利便性が高い物件。そのため、長期にわたり安定的な物流需要を取り込める物件と考えています」と評価している。

九州初となる「Landport福岡久山 Ⅰ」(出典:野村不動産プレスリリース)
九州初となる「Landport福岡久山 Ⅰ」
(出典:野村不動産プレスリリース)

 「Landport福岡久山I」は日清エンタープライズ(株)が1棟利用している。設備の仕様は、1階と2階はともに梁下有効高6.5mと高さがある空間を確保し、高い保管効率を実現。また、大型トラック(10tトラック)に対応可能な片面バース(トラックが乗り付けて荷物の積み降ろしなどに利用するスペース)のほか、荷物用エレベーター2台、垂直搬送機2台を実装し、効率の良い上下運搬が可能となっている。最近の物流施設に求められる特徴としては、雇用確保の観点から従業員が快適に働くための設備を充実させている点にある。「Landport福岡久山I」では、食事や休憩のためのカフェテリアのほか、120台の乗用駐車場数を確保し、マイカー通勤にも対応。さらに、環境への配慮とランニングコストの削減を目的として、事務所エリアなどを除いて全館人感センサー付LED照明を採用している。

 同社の物流施設部門では、福岡の市場を「九州の消費財ニーズが集積している福岡エリアは引き続き堅調」と見ており、福岡エリアでさらに3カ所の物流施設の整備を予定している。

 野村不動産の福岡における事業展開は、現時点で事業部門ごとに行っている段階だ。全社で統一した組織体制による事業展開を行うことに関しては、「まだ何も決定していない」(野村不動産)という。ただ、野村不動産は、これまで示してきた通り、福岡での事業展開を積極化する方針であり、近い将来の組織体制の強化が期待されるところだ。


<プロフィール>
桑島良紀
(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。

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