2024年04月20日( 土 )

続・「ゼネコンは全部知っている」~杭打ち偽装で専門家さらに語る

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 横浜の傾いたマンションを発端に広がる旭化成建材の杭打ちデータ偽装。建物を支える基礎である杭打ちで起きた偽装や不正は、ほかの会社が手がけた物件でも懸念される。「ゼネコンは全部知っている」と明らかにした一級建築士仲盛昭二氏に杭打ち不正についてさらに詳しく語ってもらった。

 ――仲盛さんはゼネコンの責任を指摘していますね。

syorui 仲盛 横浜のマンションのデータ偽装が発覚してから、直接偽装したのが旭化成建材で、もちろんその責任は逃れられないが、ゼネコンが知らなかったはずはないと言い続けています。今行われている追加調査でも、気になることがあります。

 今やっている追加調査は、スウェーデン式貫入試験(サウンディング)という方法です。スウェーデン式貫入試験は、一般的に住宅などの軽微な試験で信頼性に乏しく、価格も一般のボーリング試験の20%くらいです。この試験は、土のサンプル、土質標本が取れないのが、欠点です。
 一般的には、深さが10メートル程度の場合に採用する方法で、15メートル以上であれば、標準貫入試験をしないと確認申請さえ、受理されません。横浜マンションのような11階建のビルでは採用しません。支持地盤に当たっていなくても、礫などの層に当たったところで、波形が大きく振れるので、支持地盤に到達したと錯覚することがあるからです。

 支持地盤に到達していたかどうか確かめるために追加調査をするというのに、スウェーデン式貫入法ではチェックの役割を果たせません。
 これだけの高さのマンションの場合、地盤調査するには、標準貫入法が普通です。これはボーリング調査した坑を利用して、地盤の工学的性質(N値)を求める方法で、ボーリング調査で土質標本を採取でき、それと直接見比べながら、支持地盤を確認します。それをゼネコンが知らないはずがありません。なぜスウェーデン式貫入法で追加調査をしているのか理解に苦しみます。

 ――鹿島建設が施工した福岡県久留米市のマンションで、杭打ちの何が問題ですか。

 仲盛 福岡県久留米市で鹿島が施工したマンションの杭打ち工法は、横浜のマンションとは違います。場所打ちコンクリート杭と言われ、現場で鉄筋を組んで、杭を打つ穴にいれて、コンクリートを流し込んで固める。横浜のマンションでは、工場であらかじめ作った杭を埋め込んだ。今は、横浜のマンションのように、工場で作った杭を打ち込むのが普通になっています。
 場所打ちコンクリート杭の場合、施工する時に、杭を打つ穴が崩れないようにベントナイト(粘板岩)を入れます。崩れやすさに応じて、ベントナイトを入れる量は変わるので、ボーリングした時に採取した土質標本を見て、どれだけの量を入れるか判断します。もちろん、杭打ちする穴が支持地盤に到達したかどうか判断するにも、土質標本との比較が不可欠です。

 ところが、地盤調査がされていません。地盤調査結果が建築確認資料に見当たりません。
 久留米のマンションの場合、鹿島は、ボーリング調査の資料や土質標本がなければ、場所打ちコンクリート杭を施工することはできなかったのです。
 そもそもボーリング調査がなければ地盤を決めることもできないので、ボーリング調査の資料のない建築確認申請はあり得ません。建築確認した久留米市は、「マンション建設当時、建築確認は適切に行われていたものと認識している」と言っています。どうやって地盤を確認し、建築確認を許可したのか、住民に説明する責任があります。説明できないなら、行政の「確認検査偽装」で、久留米市の責任は重大です。

 

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