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2015年11月06日 13:21

巨人軍野球賭博で久々に名前を聞いた大分出身・大鶴基成元特捜部長(前)

 読売巨人軍の底知れぬ野球賭博疑惑――。その真相を解明するために日本野球機構が設けた特別調査委員会の委員長に就任したのは、ライブドア・村上ファンド事件のときの東京地検特捜部長として知られる大鶴基成弁護士だった。大分県出身で鹿児島のラ・サール中高卒、福岡・大分地検の検事を務めたなど九州とゆかりが深い。あのライブドア事件時の「額に汗する人を守りたい」発言は今でも覚えている人が多いだろう。検察界では異名を轟かす名物検事だったが、民主党の小沢一郎党首(当時)の陸山会事件の捜査では大鶴氏特有の”強引”な捜査手法がたたって、検察を去った人物でもあった。

大鶴氏の影に熊崎氏の存在

kensatu 今回、大鶴氏が起用された背景には、日本野球機構の熊崎勝彦コミッショナーの存在がある。熊崎氏は有力ヤメ検弁護士の一人で、山一證券など4大証券・第一勧銀の総会屋利益供与事件や大蔵省・日銀の接待汚職を摘発した当時の東京地検特捜部長だった。東大卒、京大卒など高学歴者の少なくない検察内では珍しい明治大卒ということもあって、”赤レンガ”派と呼ばれる法務省本省の管理職ポストには縁がなく、ほぼ事件一筋。しかし、大蔵・日銀スキャンダル後は、「それまで合法だった官僚への接待が、突然ルール変更されて違法になった。そもそも接待程度のことで汚職といえるのか」と大蔵省高級官僚人脈から猛反発を受け、”熊崎憎し”の声が霞が関に満ち満ちた。結局、検察内でも「やりすぎ」ともてあまされ、最高検公安部長で退官した。

 その後、熊崎氏はヤメ検弁護士をしてきたものの、霞が関全体の”熊崎憎し”という空気が手伝い、この約10年間、弁護士に転じてもそれほど大活躍というわけではなかった。そうした境遇への憐憫もあったのか、特捜検察に食い込んでいたことで知られる名物記者上がりの読売新聞の山口寿一東京本社社長ら読売人脈も多少奏功したのだろう、コミッショナーの地位を得たとみられる。
 この熊崎氏が今回、同様にヤメ検弁護士に転じていた大鶴氏のために久々の大舞台を用意した。大鶴氏は、検察内の人脈では熊崎氏の子分に近かったからだ。「クマが今回、大鶴に仕事をやったんだ。大鶴は検察をやめて弁護士になったものの、さえなかったからね」と、元特捜OBで繁盛しているヤメ検弁護士は言う。
大鶴氏も熊崎氏同様、退官後の活躍ぶりはいまひとつで、イオンフィナンシャルサービスやモーニングスターなどの社外取締役を複数兼務して生計を立てていくらしかった。そんな彼が久々にスポットライトを浴びたのが今回の特別調査委員長への起用である。
 そもそも大鶴氏は何者か――。

ラ・サール中高卒の優等生

 大鶴氏は1955年、大分県佐伯市の出身の60歳。父義基、母セツはともに郵便局員で、二人は旧郵政省主催の珠算大会で出会って結婚。父は真面目でおとなしい人だったというが、鹿児島出身の母は教育熱心で「セツさんのしつけは非常に厳しかった」と同郷の親戚の一人は言う。ポケットに手を入れてはいけないとポケットの口は縫い付けてあり、まだ3歳の大鶴少年を「そこに座りなさい」と正座させてビンタをすることもしばしばだったという。
 かくして大鶴氏は「当時としてはまだ非常に珍しかった」(実家近所の人)というラ・サール中高に進学。母セツの実家は警察署長を出した家で、そこから通学したそうだ。しかし、父が鮎捕りの際に溺死する悲劇に見舞われた。「それで、いずれは母の面倒を見るんだ、と言っていました。一生懸命勉強してラ・サールでは首席だった。周囲は医師をすすめたが、本人は検事になるんだと言ってきかなかった」(親戚の一人)と東大に進学した。

 だが、検事任官後はいばらの道だった。1980年に東京地検に任官後、翌81年に福岡地検、83年に大阪地検、85年に釧路地検、87年に水戸地検、89年に大分地検と全国を転々。任官13年目の92年にやっと東京地検に配属された。「上司が東京に送りこもうとしたけれど、なかなか機会に恵まれなかった」とベテランの司法ジャーナリストは振り返る。
 あこがれの東京地検特捜部に配属されると、後に特捜部長になった熊崎氏のひきもあり、次第に頭角を現すようになる。かつて熊崎氏は「大鶴は『こういう供述をとってこい』というと必ず取ってくる男だった」と漏らし、非常に高い評価を与えていた。しかし、それは別の見方をすると「あらかじめ決められたストーリーに沿って強引に供述をとるやり方で、大鶴の取り調べ室からはいつも、彼のすさまじい罵声が周囲に響いていた」(特捜部で一緒だった元検事)ともいわれる。

(つづく)
【田中 絹】

 
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