市街地整備進む「笑顔で暮らす自然都市なかがわ」(後)
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拠点の明確化と連携による、
コンパクトで賑わうまちへ21年度に開始された那珂川市総合計画の将来像「笑顔で暮らす自然都市なかがわ」を実現するためのまちづくりの基本的な方針を示す「那珂川市都市計画マスタープラン」(21年4月策定・公表)では、目指すべき都市の姿として「拠点の明確化と連携によるコンパクトな賑わいのあるまち」「少子・高齢社会に対応したまち」「誰もが安心して快適に暮らせるまち」の3つを提示。また、都市計画の基本理念として「水とみどり、歴史・文化を生かしたまちづくり」「環境に配慮したまちづくり」「市民協働で実現するまちづくり」の3つを掲げている。
将来都市構造では、福岡市や春日市と隣接する市北部エリアを「中心拠点」と位置づけ、商業や子育て機能、公共交通などの都市機能のさらなる充実により、利便性の高い居住環境を形成していくとしている。また、市役所周辺を「行政・福祉拠点」と位置づけ、行政・福祉サービスの強化を図る。さらに、国道385号と県道56号・県道575号が交わる山田交差点(那珂川市山田)付近と、南畑小学校(那珂川市埋金)付近の2カ所を地域拠点と位置づけ、南部地域の市民の生活・コミュニティの拠点として生活に必要な施設の維持を行っていくほか、北部市街地へのアクセス拠点としての機能強化を図っていくとしている。
今後の土地利用の方針としては、現行の市街化区域においては、都市機能の誘導や快適な住環境の創造と維持・更新による住みやすい地域を目指すために、用途地域などの見直しを検討。市街化調整区域においては、優良農用地の積極的な保全や、既存集落における集落維持対策の検討、さらに国道・県道沿いでの沿道利便施設や地域の雇用の場の創出に資する施設、医療・福祉施設の立地を誘導していくとしている。また、主に南部の山間部を中心とした都市計画区域外のエリアについては、乱開発の防止による良好な自然環境の維持・保全のほか、体験型観光の場としての活用検討を行っていくとしている。
3カ所の新市街地整備のほか、
新たな総合運動公園整備も現行の市街化区域を拡張するかたちの「新市街地整備検討地区」では、現行の拠点に隣接する地域や拠点間を結ぶ幹線道路沿いの地域について、住宅地の確保と、行政・教育・福祉などの公共性の高い施設や利便施設、雇用の場の創出に資する業務施設の誘導を目的として、幹線道路の整備と合わせた都市計画手法の活用や土地区画整理事業などの市街地開発事業により、計画的な市街地創出を検討するとしている。具体的に検討が進められているのは、「道善・恵子地区」「仲・五郎丸地区」「国道385号沿道」の市内3カ所。
「道善・恵子地区」では、土地区画整理事業による宅地造成を行い、都市計画手法を活用して商業施設および医療・福祉施設などを誘導するほか、公共交通の利便性を生かした住環境を整備するとともに、公共交通機能の強化を図っていくとしている。前項の市長インタビュー内でも話題にのぼっていたが、同地区では現在、「道善・恵子土地区画整理事業」が進行。施行面積約10.3haのエリア内を大きく商業ゾーン、住宅ゾーン、医療・福祉ゾーン、バス営業所の4つの区画に分けて開発を進めていく予定で、23年11月には先行して那珂川自動車営業所が移転開業。今後は(株)イズミの商業施設「ゆめモール那珂川(仮称)」の開業などが予定されている。
複合文化施設「ミリカローデン那珂川」の周辺にあたる「仲・五郎丸地区」では、県道那珂川大野城線北側の市街化調整区域について、子育て支援施設や文化施設、医療・福祉施設といった既存の都市機能集積と併せて、農業との調整に十分配慮したうえで、都市計画手法の活用や土地区画整理事業等の市街地開発事業により住宅や利便施設、業務施設の立地を誘導。利便性の高い市街地の創出を検討するとしている。
そして「国道385号沿道」では、中心拠点と行政・福祉拠点を結ぶ国道385号沿いの市街化調整区域について、都市計画手法の活用や土地区画整理事業等の市街地開発事業による拠点へのアクセス性の高い市街地の創出を検討する。こうした市街地の拡張以外にも現在、新たな「那珂川市総合運動公園」の整備も進んでいる。那珂川市後野の約7.1haの敷地において整備が進められている那珂川市総合運動公園は、「那珂川市民の健康とやすらぎをはぐくむ運動の森公園」として、多世代の人々が楽しむレクリエーション拠点づくりを目指すもの。多目的広場やテニスコート、フレキシブルコート、クラブハウスなどが整備される「スポーツゾーン」をはじめ、「遊具・健康広場ゾーン」や「緑地ゾーン」のほか、駐車場や防災関連施設などが整備される予定となっている。当初は23~24年度の供用開始を目指して事業を推進していたが、コロナ禍の影響などにより計画を見直し、供用開始は2~3年程度の遅れる見通しとなっている。
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18年の単独での市昇格時点をピークに、その後の人口は5万人を割り込むなど、現在はやや停滞気味にある那珂川市。市昇格の立役者であり、町長時代から数えて通算5期目となる武末茂喜市長の旗振りの下、新たな開発や整備を進めていきながら、群雄割拠状態にある福岡都市圏のなかでいかに存在感を示していけるか、今後の動向が注目される。
(了)
【坂田憲治】
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