兵庫知事選 斎藤前知事がまさかの再選可能性
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パワハラなどの疑惑告発文書をめぐる問題で、不信任案が全会一致で可決、辞職に追い込まれた斎藤元彦・前兵庫県知事が11月17日投開票の兵庫県知事選で再選する可能性が出てきた。
政党の支援がないことから当初は泡沫候補扱いで、稲村和美・前尼崎市長と清水貴之・前参院議員(維新)の戦いと見られていたが、意外なことに世論調査で斎藤氏が2位に食い込み、現時点ではわずかにリードする稲村氏を猛追する情勢になっているのだ。
その猛追ぶりは、斎藤氏の街宣場所に行くと実感できる。駅前での街宣場所は、明石駅でも尼崎駅でも神戸駅でも黒山の人だかりができており、拍手や頑張れコールが沸き起こっているのだ。
予兆はあった。失職直後から斉藤氏は、JR須磨駅を皮切りに通勤時間帯の駅前街頭活動(朝立ち)を始めていたのだが、意外なことに人気者になっているのを目の当たりにした。
10月10日の尼崎駅前では、通勤客や学生に「おはようございます」と頭を下げる斉藤氏に罵声を浴びせる人が皆無である一方、握手やサイン、ツーショット写真の撮影を求める人が列をなしていた。とくに驚いたのは、斉藤氏が立ち去る時、大きな拍手が沸き起こり、「頑張れ」「頑張って」という声がかけられていたことだ。
その1人である中年女性はこう話す。「メディアの報道が正しかったかは疑問だ。イケメンだし、パワハラやおねだりなど悪いことをやるような人とは思えない。今日は、斎藤さんを支援する『【公式】さいとう元彦応援アカウント』の情報を見て、尼崎駅に駆け付けました」。
支援者にはメディアを疑問視する人が多く、斉藤氏が県議会や会見で厳しく追及されたのとは正反対の温かい雰囲気に包まれた空間となっていた。この支援ムードが次第に強まりながら県知事選に突入したかたちだ。
しかし素朴な疑問が浮かび上がってくる。斉藤氏の支援者の記憶から、「元県民局長を死に追い込んだ文書問題が消え去ってしまったのか」と疑いたくなるのだ。
そこで、一連の経過を振り返ることにする。全体像と核心部分については、9月19日の集英社オンラインが以下のように説明している。
「県は、(告発をした元西播磨県民局長の)Aさんに懲戒処分をかけたうえ、片山副知事らがAさんの公用パソコンから抜き出した個人情報を幹部間で共有もしていた。幹部の1人、井ノ本知明前総務部長(8月に更迭)は個人情報を県議らに見せて回っていた。さらに維新の増山誠県議は文書の全面公開を議会内で求めたりし、Aさんは『一死をもって抗議する』との言葉を残して、7月に自死している」この個人情報漏洩について初めてスクープしたのは週刊文春だが、関連記事を10本以上出している集英社オンラインも、その“実行犯”のような井ノ本前部長について何度も言及、核心部分に迫っていたのだ。
これらの記事を参考に私は、斎藤知事の会見で関連する質問を繰り返していった。9月11日の会見では「暴力団の組長を守るために直系幹部が敵対的告発者の弱みを握って死に追い込んだのに、組長が知らんぷりして居座っているようなもの」と問い質した。
しかし井ノ本氏は身の危険と体調不良を理由に8月30日の百条委員会を欠席。そこで私は、井ノ本氏の再調査をしないのかと何度も聞いたのだが、斉藤氏は「そこはいま人事課のほうが準備していると聞いている」と答えるだけで、すぐに動こうとはしなかった。
「権力犯罪者が開き直って自分の罪も認めずに出直し選挙に出る一方で真相解明はまったく手つかずだと。こういう対応をして恥ずかしくないのか。人の道に外れると思わないのか」と9月26日の知事会見で問い質したのはこのためだ。
今回の兵庫県知事選は、元県民局長を死に追い込んだ可能性のある個人情報漏洩について徹底調査をしようとしない斎藤氏が果たして「YESかNO」かが一大争点と言える。17日投開票の県知事選の結果が注目される。
【ジャーナリスト/横田一】
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