近年、磐梯山周辺で急増している野生動物

千葉茂樹(福島自然環境研究室)

 福島県在住で情報発信をしている千葉茂樹氏から、近年、磐梯山周辺で野生動物が急増している状況についてレポートが届いたので共有する。

 21日、磐梯連峰赤埴山にある「会津テラス 伐採地」に行ってきました。伐採地を3分の1ほど進んだら、進行方向約100m先に大型のツキノワグマが出現しました。私の気配を感じたクマは急いで沢の上部にある地竹の林に逃げ込みました。大型で体長約2m、肉付きが良いらしく、逃げる際に毛並みが波打っていました。

ツキノワグマが出現

 赤埴山では、クマがいるのは山頂部の岩がゴロゴロしているところと、その両サイドの桂沢、琵琶沢でした。この付近は今まで生息していなかったはずですが、21日は大型のクマがいました。生息域が拡大しているようです。また、地竹採りの人が多数入っていました。

 人の気配があったので、私はその方向に向かって「大型のクマがいます」と大声で知らせました。さらに猪苗代警察署に電話して「地竹採りの人がいるところにクマが出現しました」と話しました。

 対応した警察官は、地元のことや山のことをまったく知らないようで「赤埴山」「会津テラス」「地竹採りの人がクマの近くにいます」と言っても、ちぐはぐな返答しかありませんでした。警察官は地名を知りません。山の常識をまったく知りません。

 クマの話に戻れば、クマも地竹の新芽を食べにきたようです。人も地竹の新芽を採りにきています。斜面傾斜が約40度ありますので、上部にクマがいた場合、人はまったく逃げられません。この人たちは、クマよけの鈴などをつけていないようですし、人の気配を消しているようでした。

赤埴林道に20匹程度のサルの集団

 ということで、進行方向にクマがいますので、私は途中で引き返しました。帰り道、赤埴林道に20匹程度のサルの集団がいました。私の車が近づいても、逃げません。5mほどの距離でも、道路わきで毛づくろいをしていました。写真のように、まだ冬毛です。今年は林道に雪が残っていますので、生え変わっていないようです。例年、この時期は夏毛に代わっているのですが…。

まだ冬毛

 ここ数年、赤埴山では野生動物が増えています。昨年は、赤埴林道を通行時、50%程度の確率でサルかイノシシに会いました。どちらも丸々と太っていました。私は、遭遇時、クマとは戦えますが、サルやイノシシは集団なので戦いたくはありません。

 雄ザルはかなり大きいです。小学校の中学年くらいに見えます。イノシシは、人より大きいです。大きいものは体重150kgくらいあるのではないでしょうか。私が頻繁に調査していた1980~2000年ごろは、磐梯山の恐ろしい動物はツキノワグマくらいでしたが、現在は上記のようにクマ以上に恐ろしい動物が急増しました。

 なお、山麓でも野生動物が急増しています。私の散歩道、公園の舗装道路の約15m離れたところに「キツネの巣」があります。道路からもよく見えますが、ほとんどの人は気が付いていません。キツネも人を小馬鹿にしているようで、日中でも巣穴の前で日向ぼっこをしています。人は、完全になめられています。

 巣穴の前に、食べた動物の頭蓋骨や鶏の羽毛(真っ白で目立つ)が、放置されています。このキツネは、私が巣穴の位置、生活している巣穴(巣穴は数カ所あり、数年ごとに居場所を変えている)を知っていて、毎日観察していることを知らないようです。今の巣穴は、おととしの秋から使っています。


<プロフィール>
千葉茂樹
(ちば・しげき)
千葉茂樹氏(福島自然環境研究室)福島自然環境研究室代表。1958年生まれ、岩手県一関市出身、福島県猪苗代町在住。専門は火山地質学。2011年の福島原発事故発生により放射性物質汚染の調査を開始。11年、原子力災害現地対策本部アドバイザー。23年、環境放射能除染学会功労賞。論文などは、京都大学名誉教授吉田英生氏のHPに掲載されている。
原発事故関係の論⽂
磐梯⼭関係の論⽂
ほか、「富士山、可視北端の福島県からの姿」など論文多数。

関連キーワード

関連記事