NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は「コメの価格を人為的に引き下げるのではなく、消費者に対してコメ購入を支援する補助金を投下することが望ましい」と論じた5月28日付の記事を紹介する。
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日本におけるコメの年間消費量は約800万トン。政府の備蓄水準は100万トン。コメの価格が高騰し、政府は備蓄米の放出を始めた。これまでに30万トン程度放出した。しかし、価格入札で放出したため、価格は高水準で、コメの流通価格を押し下げる効果を発揮しなかった。
農水相が小泉進次郎氏に代わり、新たに備蓄米を安値で販売し、そのまま小売価格に反映させる方針が示された。まずは、30万トン程度を販売する。政府が価格を決めて、そのまま小売価格に反映させる条件を付けて放出するから、この分についてはコメの低価格が実現する。
しかし、政府の備蓄米は古いコメ。今回の放出で22年産米は底をつき、21年産米も含まれる。23年産米は古米。22年産米は古古米。21年産米は古古古米。これ以上古いコメは家畜のエサに使われる。保存の温度と湿度によってコメの劣化に大きな差が出る。玄米はぬか油の言葉が示すように油分を含む。この油分が酸化する。その結果、炊き上げた際の香り=匂いに変化が生じる。
政府が備蓄米をどのような状態で保管していたかによって放出されるコメの味は大きな影響を受ける。「5キロ2,000円の安値での提供」だけが大宣伝されているが、コメもピンからキリまで。30万トンを放出すると残りは30万トン強になる。国内のコメ消費量は年間800万トン。この需要を満たす供給が行われる可能性はゼロだ。
古古古米が5キロ2,000円で売られても、銘柄米の新米は5キロ2,000円で売られるわけがない。単なるアリバイ作りになる可能性が高い。無理やり低価格での販売を維持しようとすれば外国からコメを輸入するしかなくなる。
小泉進次郎氏が農相に就任してメディアがはやし立てているが、グランドデザインのない、場当たりの弥縫策を提示しているだけに見える。古古古米を安い値段で売っても、それがどうしたということで話が終わるのではないか。また、購入希望者が多い場合に、公平に配分できるのかどうかも疑わしい。備蓄米の販売が完了したときにコメ価格全般に有意な変化が観測されるのかどうかが問われることになる。
基本判断を明確に保持することが必要不可欠。重要事項が三つある。第一は、コメの完全自給体制を確実に維持すること。第二は、そのための前提条件になるが、コメ農家が営農可能な所得環境を確立すること。第三は、消費者に対するコメ提供価格を低位に保つこと。この三つを成り立たせることが必要。
古古古米を5キロ2,000円で販売しても、それは全体のほんの一部に過ぎない。安易に海外産のコメを入れれば国内自給体制は崩壊する。小泉進次郎氏はコメ輸入拡大を否定しない。ここに最大の問題がある。
※続きは5月28日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「コメ農家なくして食糧安保なし」で。
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福岡市民ホール(小ホール)
〔プログラム詳細〕
講演『財務省の正体とビジネス防衛論』 午後3時~4時半
質疑応答 午後4時半~5時15分
出版記念パーティー(軽飲食付き) 午後5時15分~6時
〔講師〕
植草一秀氏(政治経済学者)
〔参加費〕
1万円(飲食、新刊書籍、書下ろし資料代含む)※要申込
〔お申し込み先〕
専用フォームあるいはTEL、FAXにて
▶ 専用フォーム
TEL:092-262-3388
FAX:092-262-3389
主 催:(株)データ・マックス
※当セミナーの詳細な内容は告知記事にてご確認ください。
<プロフィール>
植草一秀(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーヴァー研究所客員フェロー、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)=TRI代表取締役。金融市場の最前線でエコノミストとして活躍後、金融論・経済政策論および政治経済学の研究に移行。現在は会員制のTRIレポート『金利・為替・株価特報』を発行し、内外政治経済金融市場分析を提示。予測精度の高さで高い評価を得ている。政治ブログおよびメルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。