NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は「選挙が盛り上がらないのは〈革新〉が一つにまとまらないことに原因がある」と指摘したうえで「立民有志・れいわ・共産・社民の連帯による〈革新大同団結〉が求められる」と論じた6月18日付の記事を紹介する。
日本の政治勢力における革新勢力の後退が著しい。しかし、この変化が主権者の側の変化を反映したものであるのかは疑わしい。建前の上では主権者が代表者を選出して政治が行われるが、実際には主権者が主体的に代表者を送り出すのではなく、主権者は目の前に示されたメニューから選択しているに過ぎない。レストランで言えば、客が本当に食べたいと思うメニューが満載の店もあれば、食欲の湧かないメニューしか記載のない店もある。
食欲の湧かないメニューしかない店なら、多くの人がレストランに行くこと自体を選ばない。逆に、客が満足する魅力満載のメニューがふんだんに提示される店なら、すべての人がレストランに行って好みのメニューを注文するだろう。提示されるメニューが魅力的なものであるか、そうではないか。この違いを表すのが投票率だ。
思えば2009年8月の総選挙では投票率が7割近くに達した。当時の鳩山民主党の人気が絶大だった。民主党政権は2009年から2012年まで3年余続いたが、人気を博したのは鳩山由紀夫内閣だけだ。小沢-鳩山人気で政権が樹立されたが、2010年6月以降は、このおこぼれに預かった不人気の者たちが政治権力を横取りしてしまった。日本政治に活力がなくなったのはこのときから。「民主党」という名称は同じでも、中身がまったく異なるものに変質した。
現在の政治情勢における最大の特徴は〈ゆ党〉の拡大。〈ゆ党〉とは〈隠れ自公〉、〈第二自公〉、〈チーム日〉のこと。〈第二自公〉勢力が拡大しても政治に緊張感が生まれるわけがない。唯一、事態が変化したのは2017年から21年にかけての4年間。民主党が国民民主と立憲民主に分裂した。〈革新〉と〈隠れ自公〉に分離されたと理解された。
〈革新〉と理解された〈立憲民主〉が主権者の支持を受けて躍進した。多くの主権者は野党中核を担う〈革新〉勢力の登場を待望している。期待の持てる〈革新〉がメニューに載れば、客は大きく動く。しかし、2021年に立民が変質。〈革新〉から〈隠れ自公〉に変質した。枝野幸男氏はもともと守旧勢力の一員で、鳩山内閣から権力を強奪した側の人物だから、その本拠地に回帰しただけかも知れない。立民の右旋回は必然のものだったのかも知れない。
立民が右旋回してから、メニューの魅力が一気に落ちた。そして、この機に乗じて〈ゆ党〉を強化する工作が拡大している。〈維新〉、〈都民ファ〉、〈再生〉、〈参政〉、〈保守〉のすべての勢力が〈ゆ党〉ないし〈極右〉に分類される。〈立民〉も〈ゆ党〉化を鮮明にしている。
はっきり〈革新〉と呼べる政治勢力は〈れいわ〉、〈共産〉、〈社民〉三勢力に限定される。潜在的には〈革新〉支持の主権者は多い。これはと言えるメニューが掲載されれば、主権者は一気に強い支持を示すことになるだろう。2009年現象はいつでも再現されるはずだ。
※続きは6月18日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「れ共社大同団結で地殻変動を」で。
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植草一秀の『知られざる真実』