万博EVバスの奇妙な業者選定──選対委員長の西村元経産相の発信が影響したのか?

    「中国産より国産を」という経済安保の旗印の下、40億円の補助金投入が無駄になる業者選定が行われていた。自民党選対委員長の西村康稔・元経産大臣が昨年4月、「大臣当時、大阪のバス会社が中国製EVバスの導入を進めていたことに危機感を抱き、日本企業製のバスの導入を奨励」とX(旧・ツイッター)で投稿した「EVモーターズ・ジャパン」(北九州市、EVMJ)のことだ。

 大阪市城東区に「EVバスの墓場」と呼ばれる敷地がある。大阪メトロが万博で使用後に路線バスに転用する予定だったEVMJ のEVバスが、使われないまま100台以上も野ざらしになっているのだ。

 大阪メトロは万博開幕前の2022年から24年度にEVMJから190台を購入、うち150台を万博会場への移送などで使用したが、開催期間中からトラブルが頻発。昨年9月には国交省がEVMJに立入調査をして総点検を指示したが、それでも不具合が根絶されることはなく、大阪メトロは3月末、安全性確保は困難として路線バス転用中止を発表。4月14日には、購入代金96億円の返還を求めていることも明らかにした。

 なお大阪メトロの購入費には国や大阪府市の補助金40億円以上も含まれており、国交省は補助金返還を要求。しかしEVMJは4月14日、資金繰り悪化の懸念を理由に民事再生法の適用を申請した。スポンサー支援による事業再生を目指しているかたちだが、地元の経済記者は「安全性確保は困難とダメ出しをされたEVバスに競争力があるはずがなく、支援するスポンサーが現れる可能性は低い。事実上の倒産といえるだろう」と指摘する。大阪市が100%株主の大阪メトロが莫大な損失を被り、補助金投入が無駄になる恐れが出てきたのだ。

 ここで注目されるのが、冒頭の西村氏の投稿。この発信の通りに、実績のある中国・BYD社から実績の乏しい国内企業・EVMJ社への業者選定変更が行われていたからだ。

 「万博EVバス『負の遺産』に」と銘打った4月17日の東京新聞は、このことを次のように報じていた。

「この問題を市議会で追及してきた杉田忠裕市議(公明)は『なぜEVモーターズ社から購入することになったのか。その経緯が不透明だ』と指摘する。EV社は19年創業。杉田氏の調査によると、大阪メトロが購入を決めた当時、赤字決算で実績も乏しかった。このため、バス運行を担う(大阪メトロの)子会社の大阪シティバスの取締役会は『国内で実績のある中国・BYD製がベターだ』とメトロに提案したが、最終的にEV社となった」

 このBYDからEVMJへの変更について、大阪メトロの株主である大阪市トップの横山市長に4月24日の会見で聞くと、こう答えた。

「当時の経過として複数の選択肢を検討していたのは当然、聞いている。複数の選択肢を検討するなかで、『国内の企業』というのは一定議論にあったとは思うが、詳細については、就任前で詳細な議論まで聞いているわけではない。『生産体制の確保を含めてEVMJの方で可能である』という判断の下でEVMJと契約をしたという認識だ」

 ここで注意しないといけないのは、EVMJが国内での生産体制を有していたわけではなく、中国メーカーに生産を委託、それを輸入していたことだ。西村氏の「国産」との発信は事実誤認にすぎず、業者選定変更の理由になり得なかった。今から振り返ると、EVMJとの契約が不適切であったことは明らかだ。そこで、私は次のような再質問をした。

「(EVバスの選定に)西村さんの発言をどう影響したのかを含めて『なぜEV社のバスを選んでしまったのか』。民事再生がうまくいかなければ(大阪メトロは)大損となるわけだから、それを徹底的に検証する大阪府市第三者検証委員会みたいなものをつくる考えはないのか」

    これに横山市長は、こう答えた。

「万博でEVバスにチャレンジをする。そのときはEVバスの事業者をどうするのかを協議したうえでEVMJ社に決定して今に至る。当時の経過は大阪市が株主である(大阪)メトロ社の経営判断でなされたところで、西村大臣の発信、発言がどう関連しているのかまでは定かではない」「まずはEVMJ社の補償について(大阪)メトロ社が進めてもらうように、また再発防止に向けてリスクマネージメントをしっかりしてもらうように、株主としてチェックしていきたいと思う」

 しかし再発防止のためには真相解明が不可欠だ。このことを指摘したうえで、「(府市)第三者検証委員会はつくらない考えなのか。検討するということなのか」と迫ったが、それでも横山市長は「そういう意見だけ受け止めておく」と答えるに止まった。

 税金の無駄撲滅を掲げる維新だが、自民とともに進めた国家的イベント・大阪万博での無駄遣いを徹底検証しないのは不可解だ。言行不一致と言われても仕方がない。今後の維新の対応が注目される。

【ジャーナリスト/横田一】

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