【BIS論壇】ルバング島の将軍

 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は6月14日の記事を紹介する。

 2000年代初頭、東京経済大学ゼミ生海外研修旅行でニューヨーク、ワシントンを訪問。ニューヨークでは1980年代に商社駐在員として懇意にしていた紅花のロッキー青木会長に成功物語をゼミ生諸君に話してもらった後、ニューヨークの有名ジャズバー「Birds’ Nest」に学生諸君を案内した。

 たまたまブラジルから日本へ帰国途中にニューヨークに立ち寄られた小野田寛郎元陸軍情報将校ご夫妻も招待した。小野田少尉ご夫妻とは筆者がブラジルのリオデジャネイロ駐在中から懇意にしており、小野田さんが商社の社員時代、中国漢口駐在時、同じビルのニチメン(現・双日)の若手とジャズバー に出入りし、ジャズにはご興味あるとのことで、小野田ご夫妻もご一緒いただいた。

 ちょうど演奏中の米国でも有名な秋吉敏子さんが夫のタバキンさんと共演中であった。休憩時間に小野田さんご夫妻を秋吉さんご夫妻に紹介した。秋吉さんご夫妻は非常に喜ばれ、第二部の演奏で、小野田少尉がフィリピンのルバング島から30年ぶりに生還されたことに感銘を受けて秋吉敏子さんが作曲された『将軍』をタバキンさんと演奏され、小野田少尉が感激された。 その際、近くタバキンさんと東京を訪問。青山の有名なジャズバー「ブルーノート」で演奏するのでぜひ再会したいとのことであった。

 東京青山のブルー・ノートで秋吉敏子さんご夫妻と小野田少尉ご夫妻が再会された。秋吉さんは名曲『将軍』を夫のタバキンさんと演奏され、聴衆が強い感銘を受けていた。

 フィリピン・ルバング島で終戦後も30年間、任務に忠実に生き抜かれた小野田寛郎陸軍少尉は敵ながら米国人にも高く評価されている。小野田少尉の『No Surrender-My Thirty Years War』―US Naval Institute 、 Annapolis 刊 (日本での邦訳『たった一人の30年戦争~男が生と死のはざまで見つめた戦争と平和~東京新聞出版局 ― 』)は今でも米国で評価が高く、アナポリスの米国海軍兵学校で教科書として活用されているという。

 日本では防衛大学でのテキストとして教材に使われているとは聞いたことがない。昨今の日本の再軍備、武器輸出を策動している高市首相以下、悲惨な第二次世界大戦の経験のない自民党政治家各位には、この機会に小野田寛郎元陸軍少尉の『たった一人の30年戦争』を味読し、戦争の悲惨さを追体験することを強調したい。

 青山「ブルーノート」での写真、右から4人目小野田寛郎元陸軍少尉、5人目秋吉敏子氏、6人目タバキン氏、7人目小野田町枝夫人、右2人は筆者夫妻。


<プロフィール>
中川十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。

関連記事