埼玉マンホール転落事故 事業者の安全管理の問題か、市に確約した保護具装着なし
埼玉県行田市で2日に下水管の点検業務の男性作業員4人がマンホールのなかに転落し死亡した事故をめぐって、市は同業務を委託していた三栄管理興業(株)(さいたま市浦和区、高松六男代表)が墜落制止用の保護具の使用を確約する業務計画書を6月に市へ提出していたと明らかにした。しかし実際には4人とも転落時に保護具を装着していなかった。
三栄管理興業は土木・舗装工事、下水道の調査・改善などを手がけている。作業員は2日午前、現場作業中に転落。全員が同日夕方までに救助されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。4人とも頭部などに擦り傷や打撲があり、1人がマンホール内のはしごを下りている途中で意識を失って落下し、その後に救助しようとした3人も同様に転落したとみられる。
労働安全衛生法ならびに関連規則では、高さ2m以上の開口部作業、または墜落の恐れがある現場での囲い、手すりなどを設けるか、それが困難なときは作業者に墜落制止用器具を着用するなどの防止措置を講じるよう事業者に求めている。事業者はこうした関連法を基に市との間で安全策を確約していたわけだが、それが現場では徹底されていなかったことになる。
同業務計画書には、ほかにも硫化水素の濃度を測定し、安全を確認した後に作業することなども含まれていた。同社によると、現場で別の作業員が4人の転落を確認した際、検知器は、国の基準値(10ppm以下)の15倍以上を示していた。
県警は安全管理に問題がなかったかどうかを含め、当時の状況を捜査している。
今回の点検業務は今年1月に同県八潮市で発生した道路陥没事故を受け、国土交通省が3月から進めている下水道管の特別重点調査の対象の1つ。管理する自治体などが業者に委託している。国交省は4日、下水道を管理する都道府県や市町村などに対し、再発防止のために作業員の安全確保を徹底するよう求める通知を出した。
【茅野雅弘】