2025年度上期、経常黒字が過去最大 実態は円安が押し上げた名目膨張
2025年11月13日 16:00
財務省が11日に発表した2025年度上期(4~9月)の経常収支は17兆5,128億円の黒字で、半期として過去最大、前年同期比14.1%増となった。9月単月も4兆4,833億円の黒字で、同月としては過去最高で8カ月連続の黒字となった。牽引役は第1次所得収支で、海外子会社配当などが伸び、22兆2,758億円(前年同期比2.1%増)の黒字と半期では過去最大となった。
貿易収支は494億円の黒字へ転換(前年同期は2兆3,600億円の赤字)。輸入3.8%減(原油・石炭の縮小)により改善し、輸出0.6%増(アジア向け半導体部品が寄与)も下支えした。一方、サービス収支は1兆8,603億円の赤字ながら、旅行収支の黒字3兆3,112億円で赤字幅は縮小。対照的にデジタル関連は3兆3,492億円の赤字が重しとなった。総じて、輸入が縮小した一方で、輸出が持ち直し、巨額の投資収益が黒字を押し上げた。
円安が膨らませた“見かけの過去最大黒字”
もっとも、こうした黒字拡大は実力の底上げというより、円安が名目値を押し上げた側面が大きい。第一次所得収支の膨張は海外配当や利子が外貨建てで計上されるため、円安が続くかぎり円換算額が機械的に膨らむ構造にある。貿易黒字も輸出数量の増加より、エネルギー価格の下落と円安による価格効果が寄与した。経常黒字が過去最大に達した事実の裏側では、「海外で稼ぐ力の本格回復」ではなく、「円安による見かけの黒字拡大」という構図が一段と鮮明になっている。
【内山義之】
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