全国知事会(会長=村井嘉浩宮城県知事)は25日、小泉進次郎農林水産大臣と阿部俊子文部科学大臣に対し、国産木材の活用を進めるため、木材を使った建築物への国の支援をさらに強化するよう要請した。知事会では「国産木材活用プロジェクトチーム」を立ち上げており、同チームを代表して小池百合子東京都知事が同日、両大臣と面会し提言書を手渡した。
提言書の主な内容は、JAS構造材の流通量拡大やCLTなどの普及による民間建築物の木造化・木質化の推進、木材・木材製品の輸出拡大など。また、国産木材活用の意義や魅力の周知・啓発にも一層取り組むよう求めている。
国土の約7割を占める森林は約4割が人工林で、その多くが本格的な利用期を迎えている。輸出向け、バイオマス発電向けなどとして国産木材の需要が増えているが、主な活用先である住宅の市場が縮小期に入っており、縮小を補完する需要先の開拓も求められている状況だ。
また、産地においては整備が行き届かず、国土の保全や水源の涵養、地球温暖化防止などの公益機能が十分に発揮されていない森林も多く見受けられる。加えて、川上の林業やそれを加工する川中(製材・加工業など)は地域経済を支える重要な存在だが、担い手不足などを要因に川上・川中の産業が立ちゆかなくなることも懸念されている。
一方で、木材は再生可能素材であり、「2050年カーボンニュートラル」実現へ向けて、木材活用の拡大は重要な位置づけを占める。このため国は、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(2021年施行、通称:都市(まち)の木造化推進法)など、公共・民間建築物における木造化を推進する環境を整えてきた。
これにより、近年になって中高層木造建築物(木造非住宅)に関する民間プロジェクトが複数進展するなど、我が国の林業・木材産業は大きな節目を迎えている。知事会による今回の提言は「この機を逃すことなく」、木材活用をさらに推進することを国に迫るものとして注目される動きだ。
【田中直輝】