高市新総裁で幹事長は小泉大臣ではなく麻生義弟──事実上の“第二次麻生政権”は誕生するのか

 総裁選本命の小泉進次郎大臣を破った高市早苗新総裁だが、逆転勝利のカギは支持要請をした麻生太郎・最高顧問(当時)に人事を任せたこととされる。その産物が麻生氏の義弟の鈴木俊一元大臣の幹事長就任。7日の産経新聞が「高市自民、役員人事で『石破主流派』一掃 党内に動揺『第2次麻生政権のようだ』」と銘打って報じたのはこのためだ。

自民党幹事長に就任した鈴木俊一氏
自民党幹事長に就任した鈴木俊一氏

    しかも、この記事は「鈴木氏自身は党内融和の観点から小泉氏が幹事長に適任との考えを周囲に漏らしていたという」との内情も紹介、こう続けていた。

 「高市氏の側近のなかにも小泉氏を推す声があったが、『一番お世話になったのは麻生氏』(高市陣営幹部)と却下された」(前出の産経新聞)。

 要するに高市氏は神輿に担がれたお飾りで、実質的な人事権を有する最高権力者は麻生氏ということになる。

 そこで念のため、10月7日の小泉進次郎・農水大臣会見で本人に確認してみた。石破首相が政策転換を決断した「コメ増産」に関する質問が相次いだのに関連づけて、高市氏からの幹事長打診の有無について聞いてみたのだ。

 ──米増産に関連して、高市新総裁から幹事長を打診されたが、それを断って農水大臣続投を、米増産を引き続いてやりたいみたいなやりとりはなかったのか。
小泉大臣  なかったです。

 ──打診はなかったということか。
小泉大臣  なかったです。

小泉農水大臣会見    高市氏が人事権を麻生氏に移譲していたことを確信した。一年前の総裁選で敗れた高市氏は「幹事長以外は受けない」と石破新総裁に迫ったが、拒否された。「党内対立を避けたいのなら決戦投票2位の総裁候補を幹事長として起用すべき」というメッセージが聞き流された結果、高市氏は非主流派となり、石破おろしの急先鋒として振る舞うことにもなった。

 高市氏は自身の経験から「幹事長人事が総裁選後の党内融和のカギを握っている」ことを分かっていたはずだ。

 ジャーナリストの石戸諭氏も10月5日の「サンデー・ジャポン」で「石破総理の失敗を繰り返してはいけない。幹事長は進次郎氏にすべき」と提言していた。

 また元自民党参院議員の山本一太・群馬県知事もブログで「適材適所で全員に仕事をしてもらう」という趣旨の高市氏演説を引用。「ここはぜひ国会議員票の半数を獲得した小泉進次郎農相を、高市政権の『幹事長』に任命し、党内の結束を図ってください!!」と発信していた。

 しかし、高市氏は、こうした助言を聞き流すかたちで、麻生義弟の鈴木幹事長起用が決まった。麻生氏が人事権を握っているとしか考えられない総論功行賞人事が罷り通ったともいえる。

 ちなみに幹事長以外の党役員人事では、麻生氏が菅義偉・元首相に代わって副総裁となり、同じく麻生派の有村治子参院議員が総務会長となった。党四役と副総裁の5幹部のうち、3人(幹事長と総務会長と副総裁)を麻生派が占めることになったのだ。

 高市氏が首相になった後の閣僚人事でも、主流派となった麻生派厚遇と非主流派冷遇の方針は続くに違いない。とすれば、石破政権浮揚の期待を担って農水大臣に抜擢された小泉氏も交代になる可能性が高いのではないか。そうなれば、石破首相が決断した減反政策からコメ増産への政策転換も有名無実になってしまう恐れがある。

 そこで7日の会見では「高市さんに、農水大臣続投の希望を伝えられたことはないのか」とも聞いてみたが、小泉大臣は「こちらから希望を伝えることなんてありません。そんな僭越なことはいたしません」という回答が返ってきた。

 露骨な論功行賞を強行した高市自民党は党内融和とは程遠いスタートとなったが、10月10日には公明党の連立離脱。自民党内からは「総裁選をやり直すべき」という声も出始め、首班指名選挙での高市首相誕生、事実上の“第二次麻生政権”発足も怪しくなってきた。揺れ動く永田町から目が離せない。

【ジャーナリスト/横田一】

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