高市早苗・元大臣に米国での経歴詐称疑惑再浮上──誤訳による印象操作は明白

高市早苗氏    総裁選で小泉農水大臣と並んで有力視されている高市早苗・元大臣に、米国での経歴詐称疑惑が再浮上した。発端の1つは「ひろゆき」こと西村博之氏のX(旧・ツイッター)で、「高市早苗さんが『米連邦議会立法調査官』と名乗ってる画像。一部の例外を除くとアメリカ国籍しか公務員になれないから、画像が正しいなら高市早苗さんはアメリカ二重国籍か経歴詐称?」と発信。これを日刊スポーツが8月3日、「ひろゆき氏、高市早苗氏の過去の“肩書”に私見『画像が正しいなら…』」と銘打った記事で報じたのだ。

 これを受けて私は9月19日の高市氏出馬会見の終了宣言の後、声掛け質問をした。質問者として指されなかったので大声を張り上げたのだ。

 ──経歴詐称疑惑について一言。アメリカに弱みを握られているのではないですか。

 高市氏 無言(首を傾げる)。

 ──経歴詐称疑惑について一言。ひろゆきさんが疑問提示をしている。

 司会者 これで記者会見を終了させていただきます。

 ──アメリカに弱みを握られて言いなりになるのではないか。一言ぐらい、答えてください。経歴詐称疑惑についてひろゆきさんが疑問提示をしている。

 高市氏 私の名誉にかかわります。(アメリカに)決して弱みなど握られていませんし、私が米国連邦議会のコングレッショナル・フェロー(Congressional Fellow)であったことは事実でございます。文書もございます。

 ──米国籍ではないと(連邦議会の公務員には)なれないのではないか。

 高市氏 無言(再質問には答えず)
 司会者 それではご退出ください。どうもありがとうございました。
 高市氏 ありがとうございました。

 このやりとりは、「高市早苗氏が『経歴詐称疑惑』問う不規則質問に『私の名誉にかかわる』と全否定 総裁選政策会見」(19日の日刊スポーツ)や「高市早苗氏 会見終了後に怒り形相→ド迫力で睨み反論」(20日のデイリースポーツ)などと報じられたが、内容は高市氏の反論を受け売り(引用)するだけで、「米連邦議会立法調査官」と書かれたひろゆき氏注目の画像との整合性を検証するものでもなかった。

 疑惑のポイントは「米連邦議会立法調査官」という日本語訳。この肩書は高市氏の著書「政治ギャル、永田町を叱る!」や選挙チラシなどで使用されているが、米連邦議会で「官(公務員)」として働くには米国籍の取得が必要。ひろゆき氏が「アメリカ二重国籍か経歴詐称?」と疑問を提示したのはこのためだ。

 これに対して高市氏は、過去に使用した「連邦議会立法調査官」ではなく、「コングレッショナル・フェロー(Congressional Fellow)であった」と反論したが、これは公務員を意味する肩書ではない。米国国会議員の研修生(インターン)にすぎず、費用は松下政経塾が負担し、米議会から給与が支払われる公務員(調査官)ではなかったのだ。

 「カイロ大学主席卒業」という肩書を著書に記して学歴詐称疑惑が浮上した小池百合子都知事と二重写しになるではないか。高市氏も「米連邦議会立法調査官」という公的ステータスを印象づける肩書きをアピール、小池氏と同じようにキャスターを経て国会議員へとキャリアアップする階段を駆け上ったのだ。

 なお高市氏の経歴詐称疑惑は2016年に発覚。ネット媒体「IWJ」はその当時、「高市早苗総務大臣の経歴に『印象操作』発覚!『米国議会の立法調査官』の肩書は初当選した93年以来使用していない、という説明に偽りあり!」と題する城石エマ氏の検証記事を公開した。このなかで、高市氏が反論の根拠とした文書を紹介したうえで、「初当選した93年以来使用していない」という主張に偽りがあることも指摘していた。93年当時の選挙チラシや選挙公報の文書を根拠として示した後、総務大臣(当時)の資質に疑問符をつけた。

 「選挙にあたって、有権者が目にした『立法調査官』という、『米国の公務員』を連想させる訳語は、やはり不適切というほかない。『米国議会の公職のポストまで務めたのかと思いきや、公職じゃないじゃないか、騙された!』と有権者から批判を受けても、反論の余地はないだろう。自らの経歴に、このような『印象操作』が発覚した高市大臣」(同)。

 総務大臣時代のIWJ批判記事から9年後、高市氏は総理大臣となる可能性が高い総裁選候補として名乗りをあげた。経歴詐称疑惑(印象操作)の非を認めず、唯我独尊的な反論をする高市氏はリーダーとして相応しいのか。10月4日投開票の総裁選の結果が注目される。

【ジャーナリスト/横田一】

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