「価値」「強み」「差別化」をどう伝えるか?──不動産編

 経営でも営業でもマーケティングでも、重要になるのが「価値(Value)」「強み(Strength)」「差別化(Differentiation)」のトライアングルです。どれも似たような言葉に思えますが、役割はまったく異なります。まずは整理してみましょう。

価値(Value)とは、顧客が当たり前に求めるメリットを指します。「これが欲しい」と思う理由やメリットがないと、選ばれません。
≪事例≫
・不動産賃貸:入居者が「住みたい物件をすぐ見つけられる」
・不動産管理:オーナーが「安心して物件を任せられる」
・建売:購入者が「完成済みでイメージが湧きやすい」
・マンションデベロッパー:購入者が「立地やブランドに安心できる」

強み(Strength)とは、自社の得意領域(内部視点)のことで、顧客には直接見えにくい部分です。
≪事例≫
・不動産賃貸:地域密着の情報網、即時対応できる営業体制
・不動産管理:修繕・清掃・トラブル対応をワンストップで行える体制
・建売:自社施工チームで短工期・安定品質を確保
・マンションデベロッパー:資金力・ブランド力、販売網の強さ

差別化(Differentiation)とは、競合と比べた独自性(市場視点)であり、競合が簡単には真似できない要素です。
≪事例≫
・不動産賃貸:普通の物件紹介ではなく「動画内覧やLINE接客で即決を促す」
・不動産管理:管理料だけでなく「空室対策や収益改善提案」まで行う
・建売:ただ建てて売るのではなく「デザイン性+家具付き+アフター保証」で差別化
・マンションデベロッパー:立地や価格だけでなく「コミュニティ設計」「環境配慮型の最新設備」で独自性を出す

営業資料にどう落とし込む?

 営業の現場では、「御社の価値は?」「強みは?」「差別化は?」とよく問われます。戦略的には大切な視点ですが、問題はこれをそのまま営業資料に書いても顧客には伝わらないということです。なぜなら「価値・強み・差別化」は社内用語であり、顧客にとって直感的に理解できる言葉ではないからです。では、どうすればよいのでしょうか?

 まず、価値は「メリット」に翻訳する。たとえば、賃貸なら「物件が見つけやすい」ではなく、『通りすがりの方が“一目で”物件を認知できます』と伝える。

 強みは「裏付け」に変える。たとえば、管理会社なら「ワンストップ対応」ではなく、『オーナーさまは複数業者とやり取り不要。すべて当社に一本化できます』と伝える。

 差別化は「他社との違い」で見せる。たとえば、建売住宅なら「他社建売が家具は別途購入、保証は自己負担のところ、当社建売なら入居初日から家具付き+10年保証で安心」といったように、比較形式で提示すれば、「だから御社を選ぶ理由」が鮮明になります。

 このように、営業資料にはフレームワークをそのまま載せるのではなく、顧客の言葉に翻訳し、事例で具体化することが重要です。


<プロフィール>
山本啓一

(やまもと・けいいち)
1973年生まれ。大学に5年在学し中退。フリーターを1年経験後、福岡で2年ほど芸人生活を送る。漫才・コントを学び舞台や数回テレビに出るがまったく売れずに引退。27歳で初就職し、過酷な飛び込み営業を経験。努力の末、入社3年後には社内トップとなる売上高1億円を達成。2004年、31歳でエンドライン(株)を創業。わずか2年半で年商1億2,000万円の会社に成長させる。「エッジの効いたアナログ販促」と「成果が見えるメディアサービス」でリアル店舗をモリアゲる「モリアゲアドバイザー」として、福岡を中心として全国にサービス展開中。

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