政治とカネに甘い自民を維新は延命させるのか──高市氏投票の絶対条件ではない企業団体献金廃止

 維新が「改革政党」の看板をかなぐり捨て、政治とカネの問題に甘い自民党を延命させようとしている。10月15日の高市早苗新総裁と吉村洋文代表(大阪府知事)のトップ面談で、自民党と維新は急接近。首班指名選挙で高市氏と書く可能性を吉村代表が口にすると、翌16日から代表と政策担当者による政策協議が始まり、初回では合意にまで至らなかったが、17日に第二回目の協議を行うことにもなった。

日本維新の会の藤田文武共同代表と斉藤アレックス政調会長
日本維新の会の藤田文武共同代表と
斉藤アレックス政調会長

    維新が自民党との連立に前のめりな姿勢は、第一回目の政策協議後の藤田共同代表会見でもはっきりと見て取れた。維新の看板政策である「企業団体献金廃止」が、首班指名での高市氏投票の絶対条件ではないことが明らかになったのだ。

 吉村代表が首班指名での絶対条件は「副首都構想」と「社会保障改革」であると発言したことを受けて、維新が政治とカネの問題で自民党に譲歩するのか否かについて次のように問い質した。

 ──維新の旗である「企業団体献金廃止が(首班指名での高市氏投票の)絶対条件ではない」と吉村代表が言っているわけだから、自民党がこれを飲まなくても高市さんと書く可能性があると。これは、まさに政治とカネの規制強化案を(自民党が)認めなくて連立離脱をした公明党と真逆の方に行って、その(政治とカネに甘い)自民党に助け船を出すと。古い自民党、政治とカネに甘い自民党を延命させる可能性があるということではないか。それでもいいということなのか。

 藤田共同代表 吉村代表は(企業団体献金廃止は)絶対条件ではないと言っているのか。

 ──吉村代表は、絶対条件は「副首都構想」と「社会保障改革」と(言っている)。

 藤田共同代表 それはニュアンスが違う。訂正してもらいたいが、そもそも合意文書の中で、一番ハードルが高いのは分かっているし、首班指名の日までお互い重大な意思決定(をすることになる)。こちらはマニフェストに載せているし、向こうは載せていないという中で一気にやれるのかというと、どこまでトップがパワープレーを出来るのか。これは交渉をやったことがある人なら誰でも分かると思う。それは意地悪な質問であって、我々はとにかくこの問題についてどこまで踏み込み、または合意するためにどこまで譲歩できるのかを含めて、態度や基本姿勢があまりにも私たちとかけ離れているのであれば、没交渉になるだろうし、そのあたり総合的に見るのが、いわゆる外交関係でもそうだが、信頼関係に基づく交渉だ。ですから100とゼロの議論をしているわけではない。そういう難しさも分かった上で、お互いの立場を思い測って、でも本当に踏み込んでいけるのか。だから、最後まで詰めの作業をしていきたいと思う。

 ──企業団体献金廃止が絶対条件か否かを聞いている。イエスかノーかで答えて下さい。

 藤田共同代表 答えました。

 ──イエスかノーか分からない。絶対条件ということでいいわけですね。「自民党が飲まなかったら高市さんとは書かない」と。確認です。

 藤田共同代表 言っていないことを決めつけて言わないで下さい。吉村代表は絶対条件と言っていない。

 ──絶対条件が「副首都構想」と「社会保障改革」なので、「政治とカネ」が抜けていたので。(企業団体献金廃止が絶対条件なのか)イエスかノーかで答えて下さい。

 藤田共同代表 (二つ以外の要求項目は)絶対条件ではないからどうでもいいということになるのか。大人の交渉だから。次、お願いします(別の記者を指名)。

 藤田共同代表は結局、曖昧な回答に終始した。「総合的に見る」「大人の交渉」という言葉から透けて見えるのは、「企業団体献金廃止を自民党が受け入れなくても妥協する」との結論ありきの姿勢だ。「それ以外の維新の要求政策を自民党がある程度受け入れてくれれば、総合的判断で高市氏投票をする」という決定をすることが見え見えなのだ。

 しかも吉村代表はテレビ局をはしごしながら「議員定数削減」も絶対条件と言い出した。これも姑息な目くらまし戦術で、「政治とカネの問題(企業団体献金廃止)」を絶対条件としないことへの不信感から目をそらそうとしているとしか考えられないではないか。“改革政党”の看板を下ろして裏金自民党を延命させようとしている維新に国民が騙されるのか否かが注目される。

【ジャーナリスト/横田一】 

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