中国半導体、世界1兆ドル市場に備えられるか

イメージ    9月29日、上海智微資本の第1号ファンド 「上海智微攀峰基金」の設立記念式典が開かれた。ファンド規模は15億元(約315億円)に達する。

 智微資本は、中国の半導体製造装置大手である中微半導体設備(AMEC)が戦略的に発起し出資した投資プラットフォームだ。半導体、汎半導体、戦略的新興分野を対象に、産業と資本を結び付け、装置産業チェーン上下流をカバーする投資体系を構築している。

 中微は現在、時価総額が1,800億元(約3兆7,800億円)を超える中国の代表的な装置メーカーで、過去14年間の年平均売上成長率は35%を上回る。エッチング装置や薄膜形成装置の一部はすでに世界先端水準に並び、創業者である尹志堯(イン・ジーヤオ)董事長は「我々は初期投資家に60倍、中期投資家に30倍のリターンをもたらした」と式典で述べた。

 ただし近年、中国半導体産業全体の投資は低迷している。調査会社CINNO Researchの統計によれば、2024年の中国(台湾を含む)半導体投資額は6,831億元(約14兆3,000億円)と前年比4割減少。2025年上半期も4,550億元(約9兆5,500億円)と前年同期比で1割近く落ち込んだ。

 設計、製造、材料、封止テストといった分野の投資が軒並み減るなか、半導体装置だけは逆行し、前年同期比で5割増と唯一プラスを記録した。投資地域の中心は長三角 (江蘇省・上海市・浙江省)だ。2025年上半期、中国本土21省市のうち江蘇省が全国シェア20.7%で首位、上海市が18.8%、浙江省が14.4%と続き、江蘇・上海・浙江の3地域で全体の半分を超える投資額を集めた。

 上海臨港新区はその象徴的な存在である。2019年には集積回路関連企業がわずか3社だったが、2024年には300社超に増加。産業規模は2018年の1億元 (約21億円)から、2025年には500億元 (約1兆500億円)に拡大する見込みだ。臨港経済区の呉暁華(ウー・シャオホア)副書記は「臨港は中国集積回路産業発展の奇跡」と強調する。ここには中微のほか、ウエハー製造の中芯国際集成電路製造有限公司 (SMIC)、パッケージング・テストの江蘇長電科技(JCET)など、国内外の主要企業が集結し、装置から製造、材料、封測に至るクラスターを形成している。

 世界の半導体市場は拡大が続く。デロイトの報告によると、2024年の売上高は6,270億ドル(約94兆円)で前年比19%増。2025年には6,970億ドル(約105兆円)と史上最高を更新する見通しだ。2030年には1兆ドル(約150兆円)を突破する可能性が高く、年平均7.5%の成長で2040年には2兆ドル(約300兆円)に達すると予測される。

 産業構造も変化しており、人工知能(AI)関連製品へのシフトが鮮明だ。GPUを軸とするAIデータセンター需要の高まりで、米エヌビディア(NVIDIA)の時価総額は約4.4兆ドル(約660兆円)に達し、米インテル(Intel)の1,600億ドル(約24兆円)を大きく引き離した。両社は相互出資を通じて、データセンターとPC市場での補完関係を強めている。

 中国勢もAIブームの恩恵を受けている。AIチップ大手の寒武紀科技 (Cambricon)は2025年上半期に28.8億元(約606億円)の売上を計上し、前年同期比43倍の急成長を遂げた。GPU新興の摩爾線程(Moore)は2022年の売上高4,608万元(約9億7,000万円)から、2024年には4.38億元(約92億円)へと拡大している。

 ただし中国半導体は欧米や台湾勢に比べれば出発点が遅く、技術力やエコシステムの面で課題も残る。迫り来る「世界1兆ドル市場」で、中国企業がどこまで存在感を示せるかが試される局面だ。


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