田久保眞紀氏が伊東市長選に立候補表明 「学歴詐称」疑惑で集中砲火も、メガソーラー阻止など訴え

高橋清隆氏

田久保眞紀氏の立候補表明と主要政策の提示

 前伊東市長の田久保眞紀(たくぼ・まき)氏(55)が12月7日告示、14日投票の伊東市長選に立候補を表明した。記者会見で田久保氏は、図書館の改修と新たな活用や、大規模太陽光発電施設(メガソーラー)建設問題への対応、一碧湖(いっぺきこ)畔一部所有者による私的利用への対応など、主要政策について考えを示した。

記者の質問に答える田久保前市長(2025.11.19、伊東市八幡野コミュニティセンターで筆者撮影)
記者の質問に答える田久保前市長
(2025.11.19、伊東市八幡野コミュニティセンターで筆者撮影)

会見ダイジェスト
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 報道陣からは「学歴詐称」疑惑を中心に、悪質な質問が次々と浴びせられた。「説明責任が果たされないなか、どうしてまた出るんだとの声が上がってきている」「卒業証書とされるものを警察から求められたら提出するかしないか」など。後援者から「やめろ」「恥ずかしいよ」などの声が飛び、制止される一幕もあった。

 記者会見は後援会の報告会の後、約1時間開かれた。30人ほどの支援者が残る会場に、40人ほどの報道陣が入った。カメラの放列の前にぽつんと座った田久保氏は、立候補の意図と主要政策を説明した後、記者の質問に答えた。

 田久保氏は「市長退任後、進退について熟慮を重ね、他候補の政策も拝見した。華やかな政策が並ぶなという感想もあるが、本当にこの町に山積する課題について、もっとシビアな目線で政策提言・議論を重ねていくべきではないかと思っている」と切り出した。

 幾人かの候補者は、「市民全員に○○万円を給付」などとばらまきを公約に掲げている。

 そのうえで、「この先の伊東の未来について、もう一度お任せいただけるなら、伊東市長選にチャレンジしたい」と立候補の意向を示した。

 政策については、まず図書館を挙げた。5月の市長就任翌日、新図書館建設事業の入札を停止し、工事を止めている。しかし、完全廃案が報じられたのは、市長退任後だった。田久保氏は「約束の第一歩が達成でき、安堵したというのが正直なところ。しかし、これで終わりというわけにはいかない」と強調した。

 今後は市民・有識者・行政による協議会の設置や、現在図書館が入る中央会館の改修、「皆に本が届く仕組みづくり」の構築とともに、自習室や市民活動の場を設けることを提案。小中学校の統廃合の必要性を訴える一方、「どうしたら子どもを減らさずに済むか考えたい」として、転入増や市内での転校の円滑化に言及した。

 メガソーラーについては、「心残りの1つ」と吐露。河川占用許可をめぐる裁判で市側が負けた場合、同事業が前に進むのか、転売されるのか、予断を許さない状況であることを説明。「そうなってはいけない。そのため、陣頭指揮を執って弁護団の前に立っていける首長が必要」と力を込めた。

一碧湖問題と市政課題への向き合い方

 一碧湖の環境問題にも言及した。日本百景にも選ばれている観光名所だが、10月31日から遊歩道の一部が通行止めになっている。市は所有者と無償の使用契約を結んでいたが、所有者が手漕ぎボートが置ける小さな桟橋設置を計画し、一方的に契約解除を通知してきたからだ。

 田久保氏は「湖を個人使用させるのか、させないのか。市民がこの環境を今まで通り守るのか、時代に即して変えるのか。重要な決断が求められているが、議論の場に上がってきていない」と問題視。市議会の議題にしたい考えを示した。

 「どの地方都市も問題を抱えている」と達観。選挙前の現金給付提案より、国の地方創生交付金や物価高騰対策予算の拡張などを活用し、市民生活を最大限支える対策に意欲を示した。

 質疑応答では、「学歴詐称」疑惑や、この件で刑事告訴人の1つになっている市議会との関係について、雨あられのように質問が浴びせられた。

「市民の間では、失職に至ったきっかけとして、一連のことがあった。説明責任が果たされないなか、どうしてまた出るんだとの声が上がってきている」

 「議会や職員との信頼関係の回復が大事になってくる。自身が市政に戻ることで、混乱が生じる可能性があるが、再出馬される理由は」

「市議会は不信任案を2回突き付け、失職させる判断をした。市長選では、この市議会に対する是非は問わないのか」

「やり残したことがあるので再出馬を決めたということだが、卒業できなかった大学に再入学する考えは」

「市民の間には、『学歴などどうでもいい。ただ説明責任を果たしてほしい』との声がある。選挙期間中も、それには答えないのか」

「『たくぼる』が流行語になった。今日はなぜ『たくぼる』バッジを付けて来ないのか」

 報道機関への会見の案内メールには、注意事項として「現在、刑事告発を受けている関連のご質問に関しましては捜査への影響を考慮し引き続き回答できません」と書かれているにもかかわらずだ。

 しつこいものもあった。地元テレビが「学歴詐称」の問題に触れた。

 記者「先ほど『真摯(しんし)な対応をしていきたい』とおっしゃっていたので真摯なご回答を求めたい。卒業証書とされるものを警察から求められたら提出するかしないか、『はい』か『いいえ』でお答えください」

 田久保「捜査上の問題については慎重にすべきなので、お答えは差し控える」

 記者「それは捜査に支障を来すという考えからか」

 田久保「先ほどの発言の通りです」

 記者「元公人として市民に対して失礼では。1度失職しながら説明責任を果たさないというのは、信頼するに足りないとの意見もある」

 田久保「捜査上関係あることについては、お答えできない。『誠意がない態度』というのは個人の意見として賜るが、私は個人として誠意のない態度ではなく、現状でできる精一杯のなかでの対応をしているので、ご了解いただきたい」

 記者「ご自身の意思についての確認です」

 田久保「何度も申し上げているが、私の意思で決められることではないので」

 会場の市民から、やじが飛んだ。
「やめろ」
「恥ずかしいよ」

詰め掛けた報道陣(同)
詰め掛けた報道陣(同)

悪質なマスコミに対する、田久保氏の対応と情報発信方針

 筆者は、こうした悪質なマスコミに対応する心境について尋ねた。

 「これまでマスコミに散々たたかれてきた。何を言っても重要な政策部分は取り上げず、揚げ足取りしかしないメディアに対し、今もこうして丁寧に会見を開いている。不利にしかならないと思うが、それでも開かれている理由は」

 田久保氏は「今は一市民、候補者に立場が変わったので、ここからはしっかり自分発信で正しい情報、それから自分がやりたいと思っていることは伝えていきたい」と述べる一方、「そうは言ってもメディアの方々とこうやって会見を開いて多くの方に伝えていくということも必要」と答える。

 そのうえで、悪質なメディアを一例挙げ、苦言を呈した。「たまたま私が『渋滞するから』と早く市庁舎を出て、一番乗りした会議の場で、『ぽつんと1人で座り、孤立している』とかいった報道は避けていただきたい。お互いの関係性のなかで改善できれば」

 筆者が追問する。
「国民の間に誤解が広がった部分もあるかもしれない。その誤解を解くのも、自分をいじめてきたマスメディアに頼るしかないという面も自覚されているか」

 田久保氏は、「そうは言いましても今の時代は、自分発信できるSNS(交流サービス)とかネットという媒体がある。私は市民活動しているときや市議をしているときも積極的に活用してきた方」と振り返った。

 市長就任後、情報発信の在り方に迷うこともあったとしながら、「これからはきちんと皆さんに対して自分の考えだとか、事実関係と違うことがあれば、きちんと訂正していきたい。そのうえで、見てくださっている皆さんが、何が本当か、何が大切か、それを判断していくことも今、非常に必要ではないか」と展望した。

 5カ月間、茨の道を歩んだ田久保氏。「もう一度市長になろうとは、何が突き動かしたか」との質問があった。田久保氏は次のように答えた。

「実は、市長に返り咲きたいということではなく、街を歩いていたり、外食したとき話し掛けていただいて、『もっと負けないで頑張ってほしい』という声をたくさんいただいた。今、道半ばでこのまま降りるのは違うのではないか。もう一度、この町のために尽くしたい」

 14日投票の伊東市長選にはこれまで、他に小野達也元市長や杉本憲也(かずや)前市議ら6人が立候補を表明している。

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<プロフィール>
高橋清隆
(たかはし・きよたか)  
 1964年新潟県生まれ。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)、『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)、『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)、『山本太郎がほえる〜野良犬の闘いが始まった』(Amazonオンデマンド)。ブログ『高橋清隆の文書館』

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