西日本圧接業協同組合 理事長
全国圧接業協同組合連合会 会 長
松本一彦 氏
資材価格の高騰や人材不足、働き方改革など、建設業界を取り巻く環境は大きな転換期を迎えている。圧接業界も例外ではなく、品質確保や適正価格の実現、担い手育成が喫緊の課題となっている。全国圧接業協同組合連合会(以下、全圧連)の松本一彦会長に、2025年度の取り組みを軸に、地域組合の役割、他団体との連携、人材育成の現状、そして業界の未来像について話を聞いた。
品質と価格の基盤づくり
──2025年度は全圧連として、どのような取り組みを進めてこられましたか。
松本 25年度は、圧接業界を取り巻く環境が大きく変化するなかで、「品質の確保」「人材育成」「適正価格の実現」「業界の魅力向上」を重点方針に掲げて、活動を進めてきました。資材価格の高騰や労務単価の上昇、新技術への対応など、地域ごとに課題が複雑化するなかで、とくに力を入れたのが標準見積書の普及と運用の強化です。発注者、元請、専門工事業者の間で、適切な契約と価格設定が行われる仕組みづくりを進めてきました。
また、技能講習の回数や内容を拡充し、OJT指導員を対象としたリフレッシュ講習も実施することで、現場で求められる技量の均質化を図っています。さらに、高校や大学、専門学校との連携を強化し、現場見学会や動画コンテンツの制作などを通じて、若い世代に圧接業を知ってもらう広報活動にも注力しました。全国の組合員の声を集約し、行政や関係団体へ政策提言を行ってきたことも、25年度の大きな成果だと考えています。
──そのなかで、西日本圧接業協同組合(以下、西圧協)はどのような役割を担っているのでしょうか。
松本 西圧協は、全国連合会の方針を地域に根づかせる「実行部隊」としての役割を担っています。九州から中四国にかけての広いエリアを対象に、地域特性に応じた講習会や安全パトロール、技術支援を行い、現場の品質向上と労働災害防止に寄与しています。
標準見積書の普及においても、事業者から寄せられる実務上の疑問や課題を丁寧に吸い上げ、使いやすさを重視した運用方法を提案するなど、地域密着型の支援を展開しています。また、建設業協会や鉄筋協同組合、元請企業との意見交換会を定期的に開催し、地域の課題を整理したうえで、全国連合会へフィードバックしています。地域の声を最も近くで受け止め、それを全国へ発信する「架け橋」としての役割は非常に大きいといえます。
連携で挑む業界改革
──他団体との協力・連携については、どのように取り組まれていますか。
松本 圧接業界が直面する課題は、単独の組織だけで解決できるものではありません。そのため、建設業協会や鉄筋事業協同組合、元請企業、教育機関、行政機関など、幅広い団体との連携を重視しています。とくに若手人材の確保に向けては、高校や専門学校での出前授業、企業説明会、インターンシップ、現場体験学習などを通じて、建設業の仕事の魅力や社会的意義を伝える取り組みが定着しています。
安全衛生面では、他団体と合同でパトロールや研修会を実施し、現場の危険要因の共有と改善につなげています。さらに、資材価格や労務単価、標準見積書の理解促進に向けた意見交換も活発に行っており、業界全体の透明性向上に寄与しています。カーボンニュートラルやICT施工、作業効率化といった将来テーマについても、こうした連携のなかで検討が進んでいます。
人材と環境の再構築
──職人不足への対応や人材育成について、どのような考えで取り組まれていますか。
松本 職人不足は全国的な課題であり、圧接業界も例外ではありません。そのため全圧連では、「早期教育」「段階的育成」「働きやすい環境づくり」の3つを柱に対策を進めています。高校での出前授業や現場見学、実技体験などを通じて、若い世代に早い段階から業界を知ってもらう機会を設けています。
育成面では、基礎技能講習や資格取得支援、指導員研修を組み合わせた体系的な教育体制を整備し、短期間で現場の即戦力となるよう、段階的に育てる仕組みを構築しています。また、適正な労務単価の確保や安全衛生の徹底、休日制度の整備など、働き続けられる環境づくりにも力を入れています。女性や中途採用者、外国人材の活躍促進にも取り組み、多様な人材が活躍できる業界づくりを進めています。
──資材高騰や労務単価、労働環境など、建設業界全体の課題をどう見ていますか。
松本 建設業界は現在、資材価格の高騰、労務単価の上昇、慢性的な人材不足、働き方改革への対応など、複合的な課題に直面しています。とくに資材高騰は中小企業の経営に大きな影響を与えており、適正な価格転嫁が難しいケースも少なくありません。このため、全圧連では標準見積書の普及を通じて、透明性のある契約と適正価格の確保を支援しています。一方で、技能者の高齢化と人材不足を背景に労務単価は上昇しているものの、それが現場で十分に反映されていない点も課題です。
長時間労働や厳しい作業環境は若年層の入職を妨げる要因となっており、業界全体での改善が求められています。さらに、カーボンニュートラルやDX推進といった新たな対応も必要なのですが、専門工事業にとっては負担が大きいのが実情です。全圧連としては、安全教育の充実や省力化技術の導入支援、発注者との協議強化を通じて、持続可能な建設産業の実現に貢献していきたいと考えています。
──2026年の抱負をお聞かせください。
松本 小さな団体ではありますが、建物において重要な役割を担う圧接業としての誇りと責任を胸に、技能・技術の向上と技能者の処遇改善に取り組みます。2026年は丙午のごとく飛躍する1年とし、業界の向上に向けて前進してまいります。
【内山義之】
<プロフィール>
松本一彦(まつもと・かずひこ)
1966年1月生まれ、熊本県天草市出身。84年3月、熊本県立天草高等学校卒業。同年4月、栄進工業(株)に入社。2006年3月に同社統括営業部長、10年3月に専務取締役を歴任し、13年3月に代表取締役に就任。社外でも、西日本圧接業協同組合の理事長(12年5月就任)や、全国圧接業協同組合連合会の会長(24年5月就任)などの要職を務める。

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