【新春トップインタビュー】リアル店舗と食品の専門性で価値高める 2035年1,000億円への成長戦略

(株)フードウェイ
代表取締役副社長 後藤英和 氏

 リアル店舗の価値と高い専門性を武器に、フードウェイグループは九州および関東で新たな成長ステージに踏み出している。長崎スタジアムシティのようなスポーツ施設併設型店舗など、立地特性に応じた店舗運営の経験を蓄積。ライブ感ある売場づくりと、回転寿司「すし大臣」とのシナジーで、「ネットにはない体験価値」を提供する。2035年に売上高1,000億円という目標を見据え、26年はロードサイド型の戦略拠点となる板付店の出店や東海エリア進出を行う。将来的な垂直統合まで視野に、地域ナンバーワンを狙う中長期戦略について、(株)フードウェイ代表取締役副社長・後藤英和氏に話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 執行役員 鹿島譲二)

長崎、埼玉に初出店

(株)フードウェイ 代表取締役副社長 後藤英和 氏
(株)フードウェイ
代表取締役副社長 後藤英和 氏

    ──2024年10月の長崎県初出店となる「長崎スタジアムシティ店」、25年11月には同じく埼玉県初出店と大規模プロジェクトがこの約1年の間に続きました。

 後藤英和氏(以下、後藤) はい。「長崎スタジアムシティ店」(長崎市)は、サッカースタジアムの関連施設内という立地で、ほかの食品スーパーと比べて非常に特殊な場所にあります。そうした特徴を踏まえ、当初から「売上だけを追うのではなく、この特殊な立地での知見、データを貯めること」を最大の目的としていました。

 実際に稼働してみると、地域住民の方々のプロスポーツチーム、サッカーのV・ファーレン長崎やバスケットボールの長崎ヴェルカに対する熱量は、私たちの想像をはるかに超えるほど熱いものだと実感しました。試合開始の3~4時間前には、スタジアム周辺がサポーターの方々で埋め尽くされます。あまりの混雑に、スーパーである当社もお客さまの入場制限を行わなければならないほどでした。これは通常の店舗運営ではまずあり得ない経験で、ピークの予測や人員配置の面で非常に勉強になりました。

 同スタジアムは飲食物持ち込み可能で、かつすぐ近くに当社のスーパーがあってそこで買い物ができるということが、サポーターの方々の観戦スタイルにも影響をおよぼしているようです。施設内にはもちろん飲食ゾーンもありますが、スーパーではお寿司やお惣菜、お酒をそれよりも廉価で購入できるため、それをスタジアムに持ち込んで観戦するというニーズが非常に高いのです。とくにハーフタイムになるとお客さまが一斉に押し寄せます。こうした「スポーツ施設併設型スーパー」としての成功パターンを掴めたことは、今後の出店戦略において大きな武器になると考えています。

 ──埼玉県初進出の「西武飯能ペペ店」(埼玉県飯能市)は同県初進出ということで注目されましたが、現在はいかがですか。

 後藤 おかげさまで非常に好調です。同店はもともと居抜き物件で、以前のテナントの売上実績も把握していましたが、現在はその150%という極めて高い水準で推移しています。

 客層としてはご高齢の方が比較的多いのが特徴です。層の厚さは、当社の地盤である九州の「稲築店」(福岡県嘉麻市)や「中間店」(福岡県中間市)に近い感覚があります。近隣には(株)OICグループの「スーパーバリュー」のような強力なディスカウントストア(DS)が徒歩5分圏内にありますが、価格競争だけに走るつもりはありません。

 同店でうまくいっている要因は、競合を意識しつつも、その地域の住民の方々のニーズを「ご用聞き」のように丁寧に拾い上げて品ぞろえに反映させていることだと考えています。高齢のお客さまは「いつもの醤油、いつもの味噌」という、ご自身の慣れ親しんだ味を大切にされている傾向が強く見られます。そこで現地のバイヤーの意見を聞きながら、その地域の調味料をきめ細かく品ぞろえに組み込んでいます。もし「いつもの味」が店になければ、お客さまは別の店に行ってしまいかねません。

リアル店舗の価値再認識

 ──25年を振り返ってみていかがですか。

 後藤 一言でいえば「リアル店舗の可能性を追求し、新たな知見を貯めた1年」でした。新規出店に関しては、この長崎と飯能の両店が大きな柱となりました。

 並行して既存店のリニューアルにも非常に力を入れた年でもありました。一部店舗の設備が物理的に古くなったという理由もありますが、「惣菜部門の強化」という全社的な方針をかたちにするためです。具体的には、当社の強みである鮮魚部門のバックヤードを広げ、売場でも圧倒的な存在感をもたせることで、お客さまに「ライブ感」を楽しんでいただける店づくりを推し進めました。生鮮の鮮度感、躍動感こそが、ネットスーパーにはない「リアルの価値」だと再認識した1年になりました。

 ──DSに客が集まるなか、フードウェイが選ばれる理由は何だとお考えですか。

 後藤 加工食品(グロッサリー)に関しては、スケールメリットを生かした大手やDSに価格面で勝つのは容易ではありません。たとえば、大手小売業の他社などは非常に強力なプライベートブランド(PB)をもっています。マヨネーズのような調味料はどのお店で買っても中身は同じですから、安さが優先されるのは当然です。しかし、生鮮三品の肉、魚、野菜はまったく別物です。

 私たちが徹底しているのは、「作業場をお客さまから丸見えの状態にする」ことです。職人が今まさに魚を捌き、肉をカットしている。その「ライブ感」をお客さまに直接感じていただくことで、鮮度への安心感と「ここで買いたい」というワクワク感が生まれます。

 さらに、そこに「プロの接客」という要素を加えています。スタッフがお客さまと「今の時期はこれがおいしいですよ」「この魚ならこういう調理法がおすすめですよ」といった会話をするのです。効率化だけを求めるのではなく、旬の食品を手に取り、匂いを嗅ぎながら買い物をする「楽しさ」を提供する。これこそがお客さまに提供すべき本質的な価値であり、私たちが生き残る道であると確信しています。

すし大臣とのシナジー

 ──「すし大臣」を運営する(株)大臣をM&Aで傘下に入れ、連携を進めています。各部門の進化についても詳しく聞かせてください。

 後藤 25年4月に「フードウェイ野間大池店」の隣に出店しました(パセオ野間大池店)。スーパーの隣での出店というのは初めての試みです。スーパー側の鮮魚の鮮度と、約50年の歴史をもつ寿司専門店のノウハウを融合させることで、他社には真似できないクオリティを実現していると自負しています。一方で、スーパーのお客さまにも日常的に利用していただくためには、専門店としてのこだわりを維持しつつ、価格帯にさらなる幅をもたせる必要があり、出店を通してそうした今後の課題もより明確にできたと思います。

 ベーカリー、惣菜の各部門においてもそれぞれ体制を変えたり強化を図ったりしています。ベーカリーでは、以前はスクラッチ(粉からつくる方式)にこだわっていましたが、近年は冷凍生地が目覚ましく進化しており、冷凍生地も活用する方式に変更しました。現在は(株)フランソア(子会社の(株)エフエフビーが冷凍生地を提供)としっかりタッグを組んでいます。同社の専門家が10日間ほどつきっきりで現場を指導してくれる体制もあります。これにより、街のパン屋に負けない品質のパンや、薄生地の本格的な焼きたてピザを安定して提供できるようになりました。

 惣菜は現在最も注力したい部門です。関東の先進的なスーパーを視察すると、惣菜のクオリティと価格とのバランスに圧倒されます。プロセスセンター(PC)を有効に活用しつつ、現場での「手づくり感」をどう両立させるか、模索を続けています。他社がよい惣菜を出しているからといって、それを真似たところで簡単に同じような品質を再現し人気を出せるわけではありません。同等以上の品質の食材を安定して調達できるよう仕入れ先から見直すなど、根っこの部分から改革していく必要があると思います。

店舗のブランディング

 ──新横浜の店舗などでは、一般的なスーパーの枠を超えた取り組みをされており、ほかの店舗とは異なる意外な売れ行きを示す商品もあると聞きました。

 後藤 新横浜では、約50坪のスペースを使ってプレミアム系のセレクトショップのような売場をつくりました。輸入菓子やこだわりのチーズ、ワインなどをそろえ、カルディさんのようなワクワクする雰囲気を追求しています。

 高額消費という点では、「西武飯能ペペ店」でも高級ウイスキーの売れ行きが非常に良く、驚かされました。1本3~5万円もする「山崎」などは、「特段売れることはないだろう」と思っていたのですが、下からライトアップして展示したところ、予想に反して定期的に売れています。購入されているのは地域の方に加え飲食店オーナーの方もいて、ドン・ペリニヨンをまとめて5~6本買っていくような消費行動も見られるほどです。これは、当社が他社にあまり品ぞろえのない「価値あるものを提案する場」として地域の方々から認知され始めている証拠だと捉えています。このような需要もあるのだと認識し、品ぞろえを意識しています。

「現場主義」の人材育成

 ──急成長には支える「人材」が欠かせません。採用や育成において大切にしていることは何ですか。

 後藤 今年は大卒・専門卒を合わせて全体で28名の新卒者に内定を出しています。

 一方で、今の若い世代、とくにSNSや動画に慣れ親しんだ世代とのコミュニケーションには独特の難しさもあると感じています。さまざまな情報が容易に入手できる現在、教育や指導時の会話や言葉遣いに気を遣いすぎると良い関係性は築きにくいです。

 しかし、スーパーのバックヤードは人間関係がすべてであり、会話がスムーズにできなければ仕事は回りません。そのため、入社後の半年間は現場の全部署をじっくりと経験してもらい、その適性を見極めるとともに、新入社員にも「会話の重要性」を伝えています。

 また、若いころから九州を出て、関東の店舗で経験を積ませる挑戦の機会も積極的につくっています。今年も若手約7名が関東へ赴任しています。

 ──各部門の責任者(チーフ)には、かなりの裁量を与えているのでしょうか。

 後藤 はい、基本的には部門の独立採算を目指しています。とはいえ、各部門の目先の利益を追うのではなく、全体で最大限の利益を出すようにしないといけません。たとえば、29日の「肉の日」には、本部から「これだけの安売りを」という指示を出しますが、現場の部門のチーフからは「それでは利益が削られてしまう」と反発が出ることもあります。しかし、トータルでの集客を考え、「(ある部門で)1万円損しても、他で取り返せばいい」という柔軟な考え方ができる人材を育てたいと思っています。もちろん、こうした方針に納得感をもって仕事を進めてもらうためには、伝え方が非常に重要です。

2035年に1,000億円へ

 ──今年の出店計画および今後の長期的なビジョンについて聞かせてください。

 後藤 板付店(福岡市博多区)のオープンを26年2月後半に予定していまして、同店は当社にとって非常に重要な戦略的拠点となります。最大の特徴は、22年の宗像店以来、4年ぶりとなる「ロードサイド店舗」であるという点です。近年、当社では大型商業施設内への出店が続いていました。施設内出店は集客力がある一方で、施設のルールや営業時間に縛られる側面もあります。

 一方でロードサイド店舗では、自分たちの思うような店づくりができる自由度があります。看板の出し方1つとっても、フードウェイの個性を最大限に発揮できるのです。広大な敷地に500坪以上の売場面積の店舗の出店を予定しており、「すし大臣」も併設する予定です。こちらはスーパーとお寿司屋がガッチリと組み合った、「スーパー×本格寿司」のコラボレーション店舗となります。

 4月には静岡市の「ベイドリーム清水」への出店が控えており、東海エリアへの足がかりを築きます。現在、フードウェイの33店舗中10店舗が関東・東海エリアにあり、売上でも3分の1を占めるようになっています。

 長期的な売上目標について、フードウェイ創業35年目の2035年に売上高1,000億円になることを目指しています。現在のグループ全体の売上は約450億~460億円で、拡大を無理して急ぐつもりはありません。過去に成長が急すぎてその後に息切れしてしまった他社のケースもありましたので、慎重に進めたいと思っています。

 今後、M&Aも良いご縁があれば取り組みます。たとえば農場のM&Aによって農業を手がけて垂直統合を進めるなど、独自性をさらに磨いていきます。農場の朝採れの新鮮な野菜をその日のうちに店舗に並べることができれば、究極の鮮度管理であり、強力なブランディングになります。目指すのは、それぞれの地域で「圧倒的ナンバーワン」と言っていただける店です。ただ安売りをするのではなく、鮮度とライブ感、そしてプロの接客を通じて、お客さまの毎日の食卓を豊かにしたいと思っています。この挑戦に終わりはありません。

【文・構成:茅野雅弘】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:後藤圭介ほか2名
所在地:福岡市早良区高取1-2-22
設 立:2000年6月
資本金:5,000万円
売上高:(25/2)450億円(グループ)


<プロフィール>
後藤英和
(ごとう・ひでかず)
1985年10月生まれ、福岡市出身。西南学院大学経済学部卒。2009年(株)フードウェイに入社。13年フードウェイ新横浜店店長、16年取締役店舗運営部長、19年取締役専務を経て、21年代表取締役副社長に就任。

関連記事