結局たどり着く消費税減税

政治経済学者 植草一秀

 総選挙のキーワードは「裏金がどうした内閣」「歴史修正主義」「利権補助金バラマキ」「統一協会」。

 高市自民が裏金議員を公認し、比例代表への重複立候補を認めるのは驚き。自民は「政治とカネ」を主因に24年総選挙と25年参院選で惨敗し、「解党的出直し」を掲げたのに「政治とカネ」問題を放棄した。

 政治資金規制を拒絶して裏金議員に堂々と公認し、比例代表への重複立候補を認める。「裏金がどうした内閣」の面目躍如だ。日本の主権者国民はまずはこの点について厳しい判断を下すべきだ。

 消費税減税は実は24年秋の衆院総選挙の最大争点のひとつだった。いま最優先の政策課題は消費税減税だ。消費税は所得がゼロでも、所得が100万円でも、所得が10億円の個人と同じ税率で税金を徴収される。所得税の場合、所得がゼロの場合はもちろん、所得が100万円の場合でも課税額はゼロ。生存権を保障するために所得の少ない人々に配慮している。

 しかし、消費税は違う。所得の少ない人は収入金額のすべてを消費に充てるだろう。200万円の収入を全額消費に回すと約18万円が税金で奪われる。全額が食料品の消費でも約15万円が税金で奪われる。所得が10億円の人は収入の一部しか消費しない。年間に1億円消費する場合では消費税の負担は収入金額の1%で済んでしまう。

 消費税は金持ちに限りなく優しく、所得の少ない人に限りなく過酷。日本の国税収入は2020年度から2025年度までの5年間に年額で20兆円も膨張した。自然増収と呼ばれるものだが、国民の税負担が増大したということだから実態としての増税である。

 1年あたりの税収が20兆円かさ上げされた。この20兆円はGDPを押し下げる働きを持つ。20兆円の税負担増加はGDPを3%程度も押し下げてしまう。つまり、「超緊縮」の財政政策が行われているということ。日本経済が低迷するなかで「超緊縮」財政政策運営は適切でない。

 財政政策を「超緊縮」から「中立」に戻すことが必要。その際、具体的方法が二つある。歳出拡大と税収削減。歳出拡大は財政をメタボ化させる政策。税収削減は財政をスリム化させる政策。2020年度に日本財政は史上空前の大膨張を演じたから、いまやるべき対応は財政スリム化だ。したがって、財政政策の修正は減税で行うのが正しい。今後も永続する根雪の税収が年額で20兆円も増大したから、恒久減税を行う必要がある。

 消費税率を10%から5%に引き下げると地方税収を含めて税収が年額で15兆円減る。20兆円の自然増収を国民に還元することを考えるなら、まずは消費税率5%を断行するべきだ。総選挙が挙行され、各党が消費税減税を提案しているが、自然増収が20兆円に達していることから、少なくとも「恒久減税」を実施することを確実にするべきだ。食料品非課税には問題もあるが、恒久減税で実施するなら自民が提示する2年限りの減税よりははるかに良い。消費税減税を徹底論議する必要がある。

 食料品税率ゼロを実施する際に最大の影響が発生するのは飲食業である。スーパーで弁当を購入して家で食べれば税負担はゼロ。町中華で飲食すれば10%もの税金が徴収される。生活が厳しさを増すなかで国民がどのように行動するのかは明白だ。これまで町中華で食事していた人の多くがスーパーでの弁当購入に切り替える。日本全体で飲食業の倒産ラッシュになるだろう。

 食料品非課税は他国でも採用されている制度で一考には値する。しかし、飲食業への影響等を踏まえれば、まずは消費税率を全体として5%に引き下げることを優先するべきだ。

 同時に重要なことはインボイスの廃止。複数税率がインボイスの強い根拠とされている。インボイスによって非課税事業者は取引から除外されている。また、複数税率は財務省利権の巣窟である。

 何を非課税にするのかの決定権が財務省にある。この軽減税率で財務省は多くの業種を支配下に置いている。新聞に軽減税率が適用されているから新聞は財務省の御用記事だけを掲載する。財務省は複数税率大々歓迎である。

 スーパーのシステム変更が大変だという主張の主因も複数税率にある。単一税率にすればシステムは一気に単純化できる。中小零細企業潰しのインボイスを廃止して消費税率を一本化すべきだ。

 日本経済の低迷が30年も続いている。世界で最も成長できない国。これが日本。2012年12月に発足した第2次安倍晋三内閣は「成長戦略」を掲げた。まずは成長を目指すとした。しかし、日本経済の成長率はまったく高まらなかった。民主党政権時代の実質GDP成長率単純平均値は1.8%だったが、第2次安倍内閣発足後の成長率単純平均値は0.9%に低下した。

 「失われた10年」は「失われた20年」になり「失われた30年」になった。日本は世界最悪の低成長国に転落している。このなかで株価だけは上昇した。日経平均株価は5万円の大台を突破した。だが、これは日本経済の成長を示すものではない。「大企業利益の成長」を示すものだ。

 財務省が公表する法人企業当期純利益推移を見ると企業利益は史上空前の水準に拡大している。経済が成長しないのに企業の利益だけが増えた。何が起きているのか。答えは単純だ。労働者賃金が減少しているのである。

 労働者一人当たりの実質賃金は過去30年間に17%も減少した。アベノミクス開始以降でも8%も減少した。経済が成長しないなかで労働者の取り分を減らした。これが「成長戦略の正体」。「大企業利益の成長戦略」だった。

 資本の取り分が増えて、これを反映して株価が上昇したということ。株価上昇は労働者賃金減少を反映するもので政府が自慢することでない。この低迷する日本経済に追い討ちをかけたのが消費税増税。日本の個人消費は2014年4月に消費税率が8%に引き上げられた瞬間から減少トレンドに転じた。

 消費税率5%の時代までは個人消費が辛うじて増加していた。しかし、消費税率が8%になった瞬間から減少に転じた。10%になってさらに消費減少が強まったことは言うまでもない。総選挙では恒久的な消費税減税を主張する勢力に投票しなければならない。


<プロフィール>
植草一秀
(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。経済金融情勢分析情報誌刊行の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門第1位。2002年度第23回石橋湛山賞(『現代日本経済政策論』岩波書店)受賞。著書多数。
HP:https://uekusa-tri.co.jp
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