箱中か?福中か?
市民病院移転候補地は2案に
建物施設や医療設備の老朽化などのため、移転が検討されている博多区吉塚本町の福岡市民病院(以下、市民病院)。その移転先候補をめぐる動きについては、本誌vol.80(2025年1月末発刊)でも触れているが、候補先が絞り込まれる新たな動きがあった。
市民病院は、もともと「堅粕千代両町組合伝染病院」として開院し、その後に数度の改称や診療科の増設、病床数の増床などを経ながら、1989年5月に現在地で「福岡市民病院」として開院。病院施設は89年5月竣工の本館(SRC造・地上9階建、延床面積1万3,930.74m2)のほか、14年9月竣工の別館(救急診療棟/S造・地上4階建、延床面積1,447.06m2)の2棟で構成され、病床数は204床(一般200床、感染症4床)。20診療科を備え、「救急告示病院(二次救急)」「地域医療支援病院」「第二種感染症指定医療機関」の認定を受けた公立病院である。当初はこども病院・感染症センターと市民病院を統合して新病院を開設する方針で、新病院の建設場所はアイランドシティとされていたが、両病院の統合案が白紙となり、福岡市立こども病院・感染症センターは単独でアイランドシティ内に移転し、14年11月に「福岡市立こども病院」として開院した。一方で、市民病院は現在地での運営が続いていたが、医療機器の大型化や提供する医療の高度化・多様化にともなう診療科に開設などにより狭隘化が進んでいたほか、老朽化によって電気・給排水などの施設・設備が大規模修繕の時期を迎えていること、200床台の病院規模ではスケールメリットが発揮しにくいなどの経営面の課題などから、22年10月頃より改めて市民病院の在り方についての検討を開始。現地建替えが難しいとの結論となったことで、「現地以外での整備」についての検討が進められることになった。
そして24年12月開催の「福岡市病院事業運営審議会」のなかで、東区千早の千早病院と統合して移転する方針を提示。ただし、市民病院と千早病院の統合は現時点では決定したものではなく、統合・再編などに向けた具体的な協議を進めていくこととなっている。
そしてこのとき、移転先の候補地として、「かしいかえん跡地」(香住ヶ丘7丁目)、「香椎浜ふ頭緑地」(香椎浜ふ頭1丁目)、「箱崎中学校」(筥松4丁目)と、いずれも東区内の3カ所が選定。ただし、いずれの候補地も現時点では活用可能時期が未定となっている点がネックだったことから、3つの候補地については引き続きヒアリングなどを進めていく一方で、市では新たな候補地となり得る土地の探索も同時並行で実施していた。
その後、25年10月開催の審議会で、新たな候補地として東区馬出3丁目の「福岡中学校」が追加された。同中学校は、馬出小学校の校地への移転(福岡中・馬出小の施設一体型小中学校)が計画されており、順調に進んだ場合は27~30年度に新校舎建設工事などが行われ、活用可能な土地となる。そして11月開催の審議会では、福岡中学校も含めた計4カ所の候補地を評価・比較。その結果、箱崎中学校と福岡中学校の2カ所が総合評価で「適」となった一方で、香椎浜ふ頭緑地とかしいかえん跡地は総合評価で「可」とされ、移転先の候補地は箱崎中学校と福岡中学校の2つに絞られた。
今後は26年3月末までに、新たな市民病院の役割と機能、整備場所等について市の方針を決定。その後、福岡市および福岡市立病院機構で、「新病院基本構想」の検討・策定を進めていく予定となっている。
● ● ●
候補地が2案に絞られ、いよいよ現実味を帯びてきた市民病院の移転。現在の市民病院はJR吉塚駅からも近く、交通利便性の面からエリア内でも一等地といえる場所。そのため、その移転後の跡地活用についても注目されるところだ。同病院が所在する吉塚エリアについては、以前に本誌vol.44(22年1月末発刊)でも触れたことがあるが、今回改めて、歴史やエリア特性、開発動向などを取り上げてみたい。
東西で異なる顔をもつ
交通利便性に優れた地
吉塚エリアと一口にいっても、なかなか定義が難しいところだが、今回はJR吉塚駅を中心とした半径約1kmのエリア、西は国道3号、南は国道3号および福岡高速環状線、東は国道3号博多バイパスと宇美川、北は都市計画道路・馬出東浜線で区切られた博多区と東区にまたがるエリアについて取り上げてみたい。公称町別では、博多区の吉塚(1~8丁目)、千代(1~5丁目/6丁目は除外)、東公園、吉塚本町、堅粕(1~4丁目/5丁目は除外)、東区の馬出(1~6丁目)となる。
その吉塚エリアは、JR吉塚駅を中心に発展してきたエリアだ。福岡市の中心市街地の1つである博多から1駅の吉塚駅は、鹿児島本線と篠栗線(福北ゆたか線)の2路線が乗り入れるほか、かつては国鉄の勝田線(1985年4月に廃線)も乗り入れていた駅だ。その吉塚駅の24年度の1日平均乗降客数は1万5,884人。JR九州の駅としては九州全体で6位、福岡市内では博多駅に次いで2位となっており、多くの人々が利用している。
吉塚エリア内にはほかに、吉塚駅から西に約500mの距離には福岡市地下鉄箱崎線・馬出九大病院前駅が、南西に約950mの距離には福岡市地下鉄箱崎線・千代県庁口駅があるほか、エリア内には県道550号(妙見通り)と県道607号(パピヨン通り/吉塚通り)の2つの幹線道路が通る。また、エリアの外周部分を国道3号、国道3号博多バイパス、福岡高速環状線などがぐるりと囲み、鉄道および道路の両方のアクセスが良好なのが特徴だ。
吉塚駅の周辺をはじめとしたエリア内の現況を見ていくと、まず駅西側には福岡県庁や福岡県警察本部、福岡県吉塚合同庁舎、千代ゴールド免許センター、福岡市民体育館、26年1月に移転・開館を迎えたばかりの福岡武道館などの公的機関や公共施設が立地。また、東公園や十日恵比須神社、九州大学病院、複合商業施設「ブランチ博多パピヨンガーデン」、“公立高校御三家”の一角である福岡高等学校などがある。
一方の駅東側には、古くからの商店街が生まれ変わった「吉塚市場リトルアジアマーケット」があり、中小の工場や企業事務所などが立地するほか、昔からの低層の住宅地が広がっている。駅西側に比べると、駅東側のほうがやや静かな印象であり、駅およびJR線路の東西で異なる顔をもっているのが吉塚エリアの特徴だ。
用途地域では、幹線道路沿いが商業地域(建ぺい率80%/容積率400%)で、JR線路から西側は第一種住居地域(建ぺい率60%/容積率200%)や第二種住居地域(建ぺい率60%/容積率200%)となっている。また、吉塚駅の東側駅前には第二種住居地域(建ぺい率60%/容積率200%)があり、線路東側には準工業地域(建ぺい率60%/容積率200%)が大きく広がっているほか、一部は第1種住居地域(建ぺい率60%/容積率200%)となっている。
【坂田憲治】

月刊まちづくりに記事を書きませんか?
福岡のまちに関すること、建設・不動産業界に関すること、再開発に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。
記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。
記事の企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は別途ご相談。
現在、業界に身を置いている方や趣味で建築、土木、設計、再開発に興味がある方なども大歓迎です。
また、業界経験のある方や研究者の方であれば、例えば下記のような記事企画も募集しております。
・よりよい建物をつくるために不要な法令
・まちの景観を美しくするために必要な規制
・芸術と都市開発の歴史
・日本の土木工事の歴史(連載企画)
ご応募いただける場合は、こちらまで。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。
(返信にお時間いただく可能性がございます)











