コロナ禍からの価格高騰で
表面利回り4%未満も
「賃貸マンションなどの収益物件は、取り扱うのが非常に難しくなっている」──不動産再生を手がける(株)トリビュート(福岡市中央区)の田中稔眞社長は、足元の市況についてこう語る。
金利上昇に加え、投資用不動産への融資条件は厳しさを増している。一般的なケースでは、長期保有を前提としても「自己資金2割」「金利2%」といった条件が提示されることが多い。たとえば、5億円の賃貸マンションを取得する場合、自己資金として1億円を用意する必要がある。不動産売買を手がける企業にとって、1億円の手元資金が減少する影響は大きく、取得可能な件数に直結する。
さらに、コロナ禍以降の価格高騰により、賃貸マンションの表面利回りはこの5年で2~3ポイント程度低下した。かつて7%前後だった物件が、現在では4~5%に下落している例も少なくない。福岡市内の中小規模物件でも、表面利回りが4%を下回るケースが珍しくなくなってきた。仮に利回り4.5%で購入し、金利が2%の場合、税金や管理費などの諸経費を考慮すると、キャッシュフローはかなり厳しい水準となる。
融資ハードルの上昇で
買い手が限定される
田中社長は、「20億円を超える規模の物件であれば、リートや不動産ファンドなどの投資需要が見込めますが、5億円規模となるとかなり難しくなっています」と話す。大規模物件は機関投資家が取得に意欲的である一方、5億円前後の物件は、主な買い手が個人投資家や中小の事業会社となる。しかし、前述の通り融資条件が厳しく、取得に至るケースが減少しているという。
コンバージョンした賃貸マンション
「これまで賃貸マンションの売買を多数行ってきましたが、とくに今期は過去にない水準で取引が少なかった。2026年3月期の売上高は100億円を見込んでいますが、賃貸マンションの売却は1件のみで、売上高に占める割合は4%程度にとどまりました」(田中社長)。
一方で同社は、賃貸マンションを重要なアセットタイプと位置づけており、決して消極的ではないと強調する。「天神などの好立地の物件、賃料アップサイドが見込める物件、宿泊施設へのコンバージョンが可能な物件は、利回りが低くても積極的に取り組んでいきたいと考えています」と補足した。
取得に至らなかった物件例
・福岡市中央区 Aマンション
価格:2億円/表面利回り:6%
評価:「立地は良いが接道が狭い」
・福岡市南区 Bマンション
価格:6億円/表面利回り:5.5%
評価:「鉄道駅から遠い」
収益物件の売買減少も
「立退き案件」で業績上伸
収益物件の売買が減少するなかでも、同社の売上高が大きく伸びている背景には、「不動産再生」事業がある。とくに、低利用のアパートやマンションを、ホテル用地やマンション用地としてデベロッパーに売却する事業が、業績上伸に大きく貢献している。
大手を含むデベロッパーとの強固なリレーションに加え、所有者として立退き交渉を進め、円滑に商品化できる点が同社の強みだ。「立ち退きや権利調整は、時間を要しても慎重に進める必要があります。こうした分野は地場企業に優位性があり、デベロッパーのトレンドやニーズへの理解度の高さは、当社の強みだと考えています」(田中社長)と話しており、デベロッパー側から立退き交渉などを前提とした物件の持ち込みが行われるケースも出てきているという。
計画している
ホテルイメージパース
現在、トリビュートでは、収益不動産の売買や立退き案件に加え、薬院駅から徒歩6分の立地でS造・地上4階建・全4室の小型ホテル開発も進めている。5月着工、12月開業を予定しており、客室は50m2と広めでファミリーなどの団体利用を想定した企画だ。
また、ある地方都市では、約3,000坪の商業施設用地の開発にも着手。幹線道路沿いの立地で、現在は隣接地の取得交渉を進めているところだという。
【永上隼人】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:田中稔眞
所在地:福岡市中央区渡辺通1-1-1 サンセルコビル6F
設 立:2009年4月
資本金:1,600万円
TEL:092-292-2313
FAX:092-292-2314

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