鹿児島大学名誉教授
ISF独立言論フォーラム編集長
木村朗
2月8日に投開票が行われた衆議院議員選挙で、自民党単独で3分の2を占める絶対多数を得る結果となりました。そこで、今回の記事では、総選挙の総括を行うとともに、高市政権がこれから日本をどんな国にしようとしているのか、またそれに対して私たちはどのように向き合うべきなのか、を考えてみたいと思います。
1.総選挙の総括
2026年2月8日に投開票が行われた第51回衆議院議員総選挙は、日本の政治史に残る大きな節目となる選挙結果となった。
今回の選挙では、自民党(公示前198議席)が全289選挙区のうち249選挙区を制し(議席占有率は86.2%)、単独で3分の2(465議席中の310議席)を超える316議席を得て圧勝した。これは戦後史上でも例のない高い議席数であり、しかも比例区では14議席を自党の立候補者が足りずに野党に明け渡すことがなければ、実に340議席という途方もない議席数(「超多数」)を得たことになる。
また、自民党と連立を組む日本維新の会も36議席(+2)、連立勢力全体で352議席を獲得し、与党は衆議院全体の約75%近い議席を占める結果となった。これにより、与党は法案成立や議会運営において圧倒的な影響力を持つことになった(予算委員会や憲法審査会など重要な委員会の委員長を独占できるだけでなく、政府・与党提出の法案が参議院で否決されても衆議院で3分の2以上の賛成で再可決されれば法案は成立する)。
一方で、今回の選挙は野党側にはかなり厳しい結果となった。特に、衆院選直前に結成された「中道改革連合」(立憲民主党と公明党が「合併」)は、解散前の167議席から49議席(公明党が28議席、立憲が21)と大幅に議席を減らすことになった。中道改革連合の小選挙区の得票率は21.6%だったが、獲得議席は7、議席占有率は2.4%にとどまった。
旧立憲の21議席のうち6議席は、比例代表選で候補者が足らずに自民党から「お流れ」した6議席が含まれており、それが無ければ旧立民の獲得議席は15だった。
また、護憲3党といわれる共産党、れいわ新選組、社民党は議席・得票数を大きく失い、その他の野党では、国民民主党が1議席増、参政党が2議席から15議席、チーム未来が0議席から11議席へとそれぞれ大幅増となった。
そして、衆議院解散後にできた中道改革連合への参加を拒否してゆうこく連合をつくった原口一博氏は、減税日本の河村たかし氏などと合流して「減税日本・ゆうこく連合」を急遽結成して選挙戦に臨んだ。選挙戦ではワクチン接種禁止や消費税廃止などを掲げて戦った。しかし、結局、原口氏も僅差で落選し、現有議席を公示前の5議席から河村氏の1議席へと減らす結果となった。
2.高市政権が推し進める戦争国家・警察国家への道
高市政権は選挙で得た絶対多数を背景に、これから裏金・統一協会問題の封印だけでなく、改憲の流れを一挙に加速することが予想される。下記に、高市政権がこれから推し進めるであろう、国論を二分する政策項目を少し整理してみた。
☆自民党・日本維新の会の連立政権合意書にある主な政策
①スパイ防止法 ⑤憲法改正 ⑨外国人政策の厳格化
②対外情報庁創設 ⑥日本国国章損壊罪
③「5類型」撤廃 ⑦皇室典範改正
④防衛力の抜本的強化 ⑧旧姓使用法制化
☆憲法改定は9条と緊急事態条項がカギだ。
緊急事態条項は「全権委任」の性質を帯びる。ナチス党が全権委任法を制定してドイツが暴走した。「ナチスの手口に学ぶ」(麻生太郎)が高市・自民党の合言葉。
日本が地獄絵図に突き進むのかどうか。日本はいま重大な岐路に立たされている。
※自民で衆院「3分の2」高市政権は改憲へ動き出す 維新が「アクセル役」…与党に「ブレーキ」役はもういない:東京新聞デジタル(2026年2月10日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/467702
・国家情報局(日本版CIA)の設置(高市首相は、解散・総選挙を宣言した1月19日、「国家情報局の設置」「スパイ防止関連法の制定」が「急がれます」と述べ、自民党は衆院選公約に「対外情報機関を設置」も明記した)。
・スパイ防止法の制定(スパイ防止法に反対するものはスパイだ⁉)
・SNS規制法の改悪→ 権力による誤・偽情報 の一方的選定と取り締まりの本格的開始 (検閲・言論統制の強化) →メディアと権力が一体化した情報操作による洗脳と国民の思考停止
・国旗損壊罪法の制定(26年通常国会において、「日本国国章損壊罪」を制定し、「外国国章損壊罪」のみ存在する矛盾を是正する)
・衆議院比例区の50議席削減(れいわ新選組とゆうこく連合、共産党と社民党も壊滅的打撃を受ける可能性大)
・安保関連3文書の改定 (超軍拡・大増税路線: 専守防衛国家→先制攻撃国家)
・非核三原則の見直し(持ち込ませず、を排除)→ 米国との核共有への移行(密約ありか?)→核武装国家への転換
・攻撃型武器輸出の解禁 (「武器輸出大国」へ、「日本版軍産複合体」の形成→米国と並ぶ「戦争中毒国家」への転換)
・改憲と緊急事態条項の導入→徴兵制の導入→戦争国家・警察国家の構築→超監視社会・デジタル社会の到来
※戦前と類似した、ファシズム体制(独裁主義)の確立
・軍事費10兆円から30 兆円へ⇒消費税10%→12%→15%→20%?
・年金制度の破綻と国民皆保険の崩壊・個人の尊重を基礎とする民主主義的な平和・人権教育→国家・天皇・家族・秩序を尊重する軍国主義と皇国史観(歴史修正主義による「自虐史観」の徹底的排除)
※想定される最悪のシナリオ
・第三次世界大戦の勃発←発火点としてのウクライナorイラン?
・東アジアでの有事・戦争発生(南シナ海、朝鮮半島、尖閣諸島、台湾海峡)
・世界的な食糧・水危機の発生→日本だけで5,000万人〜7,000万人以上の犠牲者
・新たなプランデミックとワクチン接種の義務化・地震・津波・大火事などの大災害の発生(気象兵器の使用も警戒すべきか?)
・テロ・地震などによる原発破壊
もちろん、高市政権だけでこれらすべての政策を実現することは困難であろう。ただ、今回の総選挙で歴史的大勝を得た自民党・高市政権は、あと4年間は衆議院を解散する必要はなく、その間に憲法改正以外のかなりの法案を強行採決などで通す可能性は極めて高いと思われる。
その憲法改正のための発議も、与党(自民党・日本維新の会)が過半数割れをしている参議院において改憲に同調する野党(国民民主・参政党・日本保守党・チームみらい、そして公明党)を取り込んで3分の2以上の議席を占める大連立政権をつくれれば可能となる。もしそれが難しければ、2年後に行われる予定の参議院選挙(可能性は低いが、衆参同日選挙もあり得るか?)で、さらなる議席増を狙うことになるだろう。
その一方で、衆参両院を合わせてかろうじて野党第一党を保っている中道改革連合(参議院では、公明党と立憲民主党)も小川淳也新代表の下で、高市政権とどう向き合っていくのか。高市政権がこれから推し進める超軍拡・大増税路線や憲法改正への対応をめぐって、再び分裂する動きが出てくる可能性も否定できない。他の野党を巻き込んでの新たな政界再編もあり得る。いずれにしても、いまの日本は大変な危機的状況にあることは間違いない。
私たちは、このような暗黒時代(戦争国家・警察国家)の到来を防ぐために、いま何ができるのか、何をすべきなのかを1人ひとりが自分で考えて意思表示をしていく必要がある。
改憲と戦争への道を暴走する高市政権を止めるために、私たちに残された時間はわずかである。日本の平和と民主主義・人権保障を守るために、最後まで諦めることなく力を合わせて抗い続けることを1人でも多くの人々と共有したい。
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