2025年の新設住宅着工 過去20年で最も少ない約74万戸

 住宅市場の縮減傾向に、歯止めがかからない。国土交通省がまとめた2025年の建築着工統計調査報告によると、新設住宅着工戸数は前年比6.5%減の74万667戸となり、3年連続の減少となった。過去20年で最も少ない着工戸数となり、住宅市場の低迷を印象づけるかたちとなった。

福岡県・長崎県では
分譲マンションが増加

 2025年の全国の内訳は、持家(注文住宅)が前年比7.7%減の20万1,285戸で、4年連続の減少だった。貸家(賃貸住宅)は同5.0%減の32万4,991戸で、3年連続の減少。分譲住宅は同7.6%減の20万8,169戸で、こちらも3年連続の減少となっていた。分譲住宅のうち、マンションは同12.2%減の8万9,888戸で、一戸建は同4.3%減の11万5,935戸。いずれも3年連続の減少となった。全体の74万戸という数値は過去20年で最も少なく、さらに1963年以来、実に62年ぶりの低水準となった。

表

 九州における25年の新設住宅着工戸数は同9.1%減の7万3,329戸となり、3年連続の減少となった。内訳は持家が同8.7%減の2万1,580戸で4年連続の減少、貸家が同10.1%減の3万3,776戸で2年連続の減少、分譲住宅が同1.5%減の1万7,528戸で3年連続の減少だった。分譲住宅のうち、マンションは同2.9%増の7,596戸(前年の3年連続の減少から増加に転換)、一戸建は同4.4%減の9,884戸(3年連続の減少)となっていた。

 福岡県の25年の新設住宅着工戸数は同0.5%減の3万5,014戸で、3年連続の減少。内訳は持家が同6.9%減の7,100戸で4年連続の減少、貸家が同3.0%増の1万8,030戸で3年ぶりの増加に転じた。分譲住宅は同7.0%増の9,797戸で4年ぶりの増加。これは分譲住宅のうち、マンションが同20.1%増の4,897戸(4年ぶりの増加)となったためで、一戸建は同3.0%減の4,883戸で4年連続の減少となった。

イメージ    福岡県に次いで市場規模が大きい熊本県では、全体で同21.9%減の1万1,270戸。持家が同10.4%減の3,671戸、貸家が同30.4%減の5,373戸、分譲住宅が同17.7%減の2,089戸(うちマンションが同34.7%減の492戸、一戸建が同3.0%減の1,575戸)となっていた。熊本県では半導体製造大手の台湾企業・TSMCの進出にともない、これまで着工は比較的堅調だったが、25年は息切れ感が鮮明になった。また、九州においてマンションの着工が増えているものの、実際に増加したのは福岡県と長崎県(743戸、前期比31.7%増)のみ。

 長崎県においては「長崎スタジアムシティ」(24年秋開業)の全面稼働など、スタジアム周辺での利便性を見込み、大手デベロッパーだけでなく地場業者によるマンション着工が相次いでいることが背景となっている。地元のある不動産関連事業者によると、「斜面地の住宅からの住み替え需要が顕在化している。管理が楽でバリアフリーな平地の分譲マンションは、富裕層はもちろん、高齢者層にとっても有力な選択肢になっている」という話もある。

省エネ基準適合 義務化なども影響

長崎スタジアムシティの開業が周辺のマンション開発を後押し
長崎スタジアムシティの開業が
周辺のマンション開発を後押し

    25年の新設住宅着工の特徴として、福岡県や長崎県のような再開発が進むエリアで分譲マンションが前年を上回ったことに加え、25年4月の法改正(4号建築物の確認申請義務化など)を前に、駆け込み着工とその反動減が発生し、月ごとの変動が非常に激しい1年であったことが挙げられる。また、同じ予算なら郊外の広い一戸建よりも、利便性の高いコンパクトなマンションや、一時的な住まいとしての賃貸(貸家)を選ぶ傾向が強まっており、これが福岡県などで貸家や分譲マンションの着工が相対的に増えている一因ともなっているようだ。

 加えて、一戸建については25年4月からの省エネ基準適合義務化で、イニシャルコストが増加したことも影響していると見られる。住宅取得検討者である若年層の所得が伸び悩んでいる一方で、物価高や資材価格の高騰などによる住宅価格上昇、住宅ローン金利の上昇傾向などが住宅需給マインドを低下させてもいることから、住宅市場全体が上向くことは期待できない状況である。

【田中直輝】

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