(株)アクロテリオン
代表取締役 下川弘 氏
3.福岡地下鉄国際線ルートの新たなルート提案(参照:図-2)
現在の福岡市の考える計画ルート案では、国内線ターミナルとつながらないし、将来的にどこにつながるのかもわからない。「博多駅──国際線ターミナル」間の路線だけを考えていては、国際線ターミナルから先の計画がまったく見えないのである。「インバウンド客を市内に誘導するために、国際線からの地下鉄がないので、七隈線の延伸で博多駅と国際線をとりあえずつなぐ計画を考えました。予算もたくさんないしね。」というのが本音ではないだろうか。まさに行き当たりばったりの計画のように感じてしまう。
①地下鉄空港線の国内線ターミナルから延伸して「博多の森」へつなぐ
では、どのように考えれば良いのか、まちづくりと都市交通計画の観点から筆者なりの考えを「新ルート案」として示すこととする。まずは地下鉄七隈線を延伸するのではなく、地下鉄空港線を延伸することだ。
つまり、国内線ターミナルからユニバ通りを通って、東平尾公園交差点に「博多の森駅」を設ける。この博多の森(正式名:東平尾公園)は、約90haの敷地を持つ総合運動公園でもあり、この敷地のなかにある「ベスト電器スタジアム」はサッカーのアビスパ福岡本拠地でもあり、かつジャパンラグビーリーグワンの公式スタジアムでもあるため、サッカーファンもラグビーファンも試合日には約2万人が応援に駆けつける場所である。「ベスト電器スタジアム」にもアクセスが良くなり、サッカーファン・ラグビーファンの足として利用することが可能となり得る。さらに自動車による交通渋滞も減少し、かつ博多の森全体への集客増加が見込まれる。そしてスタジアム自身の収益の増加にもつながるものと考えられる。
いかんせん、博多の森およびベスト電器スタジアムの所有者は福岡市なのであるから、なおさら駅を設けることを考えたほうが良いのではないだろうか。
②「博多の森」から「国際線ターミナル」へ
次に、東平尾公園交差点から東平尾1号線に曲がり、福岡空港内の滑走路地下を横切って、国際線ターミナルへと延伸してつなぐことができる。もちろん、地下鉄工事による滑走路の陥没など、航空機の離発着に影響があってはいけないので、地下の深さや工法などを詳細に設計することが重要でもあるが、国際線ターミナルにアクセスすることが課題であるならば、七隈線を延伸するよりも国内線―国際線を博多の森経由で結ぶ方が良いのではないだろうか。
仮に、滑走路の地下を横断することを国交省が了承しないとしたならば、下月隈まで回り込んでも良いかもしれないが、将来的に今の空港が移転する可能性もないわけでもないから、そうすると、数十年先に、また行き当たりばったりの線路が残ってしまうかもしれない。
③「国際線ターミナル」から開発著しい「竹下駅」周辺へ
筆者が考える新ルート案では、国際線ターミナルまででとどまるのではなく、さらにそこから県道112号(福岡日田線)を南下し、東那珂2丁目交差点から竹下駅前線を南西に進みJR竹下駅方面につなぐ。
JR竹下駅周辺では、2022年4月「三井ショッピングパーク ららぽーと福岡」が開業し、遠方からの利用客だけでなく、マンション開発が進み人口が増えているところである。さらには、今年2月に「アサヒビール博多工場跡地」の12.6haをJR九州・日鉄興和不動産・JA三井リース九州の3社が購入し、福岡市とも協力し小学校も新たにつくり、魅力的なまちづくりを行う」旨が発表された大規模開発が予定されている。今後人口増加が見込まれるこの場所に地下鉄の駅ができれば、既存のJR竹下駅との乗り継ぎができ、JR鹿児島本線の久留米方面からくる空港利用者も混雑した博多駅で乗り換えなくても、国内線・国際線にアクセスできる利便性も高まり、相乗効果になり得るのではないだろうか。
④「JR竹下駅」から「西鉄大橋駅」へ
さらに、筆者はこの竹下駅から県立筑紫丘高校や九州大学大橋キャンパス・純真高等学校・大学などの教育機関が集中する学園地区でもある「西鉄大橋駅」へとつなぐ延伸ルートを提案する。この「西鉄大橋駅」は特急電車も停車する拠点駅であることから、乗降客が増加するものと考える。
⑤新ルート案のメリット(軌道系の三重の環状ルート)(参照:図-3)
図-2に示した新ルートの提案は地下鉄路線だけを着色しているため、少しわかりづらいのだが、図-3をご覧いただきたい。この案が最も優れている点は、JR鹿児島本線との環状ルートができること。さらに西鉄電車との環状ルートも、天神乗り換えルートと七隈線を使った薬院・博多乗り換えルートの2つが考えられることから、軌道系による三重の環状線ができ上がることである。
「環状ルートができたからどうなんだ!」といわれる方もいるかもしれないが、軌道系を利用して福岡空港国内線・国際線に行く方法・博多の森に行く方法が複数通りできるということは、都市機能・都市交通のリダンダンシーの観点からも大変重要な役割をはたすのである。つまり、万が一の故障や災害時に備えて、同じ機能や代替手段を多重化してもたせる状態をもてるということなのだ。たとえば、仮に地下鉄空港線の博多──国内線ターミナル間がトラブルなどで、不通になったとしても竹下回り・大橋回りで行くことができるのである
事故や故障の場合だけではない。一般利用についても、平尾や高宮に住んでおられる方が、現状空港に向かおうとすると、西鉄バスで博多に行って空港線に乗り換えをするか、西鉄電車で天神に行って乗り換えるかの2通りしかないのを、この環状線ができることで、大橋乗り換えで行くという選択もできるのだ。
そしてまた福岡市民の利便性だけではなく、久留米方面から空港に向かう場合、現状ではJR鹿児島本線または九州新幹線を使って博多駅で乗り換え、地下鉄空港線かバス・タクシーで向かう。あるいは、西鉄電車の場合は大橋まで来て、国際線ターミナル行きシャトルバス(1時間あたり2本)に乗り換えるかである。
この環状線ができた場合には、竹下駅・西鉄大橋駅から新ルート線を使えば、混雑する博多駅を通らずに、福岡空港国内線・国際線ターミナルへの移動が容易になるということである。併せて、サッカーやラグビーの試合観戦も同様なのである。
4.新ルート案の先に見える将来性(まとめ)
今回地下鉄の国際線ターミナルへの延伸について新ルート案として提言させていただいたが、国内線ターミナルから大橋駅までのルートだけでも、需要はかなり多いと思われるが、大橋駅止まりで考えているわけではない。
2021年5月(再掲2021年8月)からNetIB-NEWSに連載させていただいた「2050年代を見据えた福岡グランドデザイン構想」のなかでも紹介しているのだが、福岡市南区の全域や博多区の板付・月隈周辺、城南区の原周辺・四箇田団地・室見が丘団地周辺などは、公共交通機関である地下鉄の恩恵をまったく受けられていないのである。地下鉄難民と称し、そして前述でベスト電器スタジアムの例を挙げたが、もっとひどいのは、連日約4万人の野球ファンが押し寄せる「みずほPayPayドーム福岡」へのアクセスである。昨年12月に地下鉄空港線の最寄り駅「唐人町駅」から「みずほPayPayドーム福岡」まで動く歩道を設置する要望書が福岡ソフトバンクホークスから出され、福岡市は検討しているようだが、なぜドームにつながる地下鉄路線を考えないのか不思議でたまらない。
前述した、ベトナムの地下鉄ネットワーク図のように、福岡市民が地下鉄の将来構想ネットワーク案を見たら夢がドンドン広がり、各駅周辺には民間投資も今以上に増えるはずなのに、「インフラ整備はお金がかかるから、市の財政が・・・」と言ったような理由で後回しにされ、将来構想案さえ考えようとしない。考えたとしても、今回の国際線への延伸のように、行き当たりばったりの計画案でしかないのであろう。
福岡市高島市長様、市交通局のご担当者様、市会議員の皆さまにおかれましては、もし本稿をご覧になるようであれば、七隈線延伸による国際線ターミナルルートの見直しとともに、新ルート案をぜひご一考願いたい。
最後に、2021年に掲載した地下鉄現状の課題とネットワーク構想案を掲載する。前述掲載の図-2・3と多少路線位置が異なることをご了承願いたい。
(了)
<プロフィール>
下川弘(しもかわ・ひろし)
1961年11月、福岡県飯塚市出身。熊本大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程を修了後、87年4月に(株)間組(現・(株)安藤・間)に入社。建築営業本部やベトナム現地法人のGM、本社土木事業本部・九州支店建築営業部・営業部長などを経て、2021年11月末に退職。03年4月熊本大学大学院自然科学研究科博士後期課程入学、05年3月同大学院中退。現在、(株)アクロテリオン・代表取締役、C&C21研究会・理事、久留米工業大学非常勤講師。












