人手不足が深刻化するなか、地方企業にとって外国人材の活用は、もはや一時的な労働力確保ではなく、事業継続に直結する経営課題となっている。外国人材はいまや補完的な存在ではなく、製造、物流、農業、建設、介護、飲食など、地域産業の現場を支える存在になった。一方で不法就労などの問題に対応するため、政府の外国人材をめぐる方針と制度も変化しており、受け入れ企業には採用だけでなく、育成、生活支援、地域との共生、法令遵守まで含めた体制整備が求められている。外国人材を「どう受け入れ、どう定着させ、どう戦力化するか」について、外国人材に特化したサービスを展開する地球人.jp(株)の山本剛央執行役員に話を聞いた。
地方企業を支える人材
2019年に特定技能制度が創設され、人手不足が深刻な分野で、一定の技能をもつ外国人材を受け入れる仕組みが整えられたことで、外国人材は「一時的に働きに来る人」から、日本の産業を支える担い手として位置づけられるようになった。
外国人材の存在感は、統計上も明確に表れている。厚生労働省による「外国人雇用状況」まとめによると、25年10月末時点の外国人労働者数は257万1,037人(前年比11.7%増)となり、外国人雇用状況の届出が義務化された07年以降で最多、外国人を雇用する事業所数も37万1,215所(同8.5%増)と過去最多となった。福岡県ではそれぞれ8万5,385人(同12.1%増)、1万3,682所(同11.0%増)。外国人材の活用は一部企業の特殊な取り組みではなく、日本の労働市場全体に広がる動きとなっている。
とくに地方企業にとって、この変化は切実である。女性や高齢者の就労拡大も進んできたが、現場産業ではそれだけで人手不足を補うには限界がある。外国人材を活用するかどうかは、単なる採用戦略ではなく、事業を続けられるかどうかを左右する問題になっている。
定着志向への変化
外国人材を取り巻く変化は、人数の増加だけではなく、出身国・地域や本人の意識の多様化にも表れている。かつては中国出身者が大きな比重を占め、その後ベトナム出身者が急増し、近年は、インドネシア、ネパール、フィリピン、ミャンマーなど、出身地域が多様化している。前述の「外国人雇用状況」まとめによると、25年10月末時点、国籍別ではベトナムが60万5,906人で最多、中国が43万1,949人、フィリピンが26万869人と続く。出身国が異なれば、言語、宗教、文化、食生活、生活習慣も異なる。企業は「外国人材」と一括りにするのではなく、1人ひとりの背景を踏まえた受け入れ体制を意識しなければならなくなっている。
加えて、外国人材本人の意識も変化している。以前は「数年間働いて帰国する」という前提が強かったが、近年は日本に定着し長く働くことを希望する人材が増えている。長期的な就労や家族帯同を可能とする特定技能2号の対象分野拡大なども、こうした意識変化の背景にある。
この変化は、企業側にとって大きな意味をもつ。外国人材を短期的な人手不足の穴埋めとして扱うだけでは、人材は定着しない。将来像が描けず、給与や評価の仕組みが見えず、生活面でも不安が大きければ、より条件の良い企業や都市部へ移っていく可能性が高まる。
地方企業が外国人材に選ばれ、働き続けてもらうには、採用時の条件だけでなく、入社後の育成やキャリア形成を示す必要がある。どのような技能を身につければ給与が上がるのか、どの資格を取れば職域が広がるのか、どの役割を担えば現場の中核人材になれるのか。こうした道筋を示せるかどうかが、定着率を左右する。企業のなかで成長できる仕組みを整え、地域で安心して暮らせる環境をつくることが、外国人材活用の前提条件になりつつある。
重くなる企業責任
外国人材の活用が広がる一方で、制度は厳格化している。政府は25年から「多文化共生」ではなく「外国人との秩序ある共生」という考え方を示すようになった。内閣官房には「外国人との秩序ある共生社会推進室」が設置され、26年1月には「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」が決定された。受け入れを進めつつも、不法就労や制度の悪用を防ぎ、外国人と地域社会がルールのもとで共生する方向性を強めている。
これは、企業にとっても責任が重くなることを意味する。かつては、在留資格の確認や就労時間の管理を、紹介会社や本人任せにする企業も少なくなかった。しかし現在は、受け入れ企業側にも管理責任が問われる。在留資格と実際の業務内容が合っているか。留学生の就労時間が週28時間以内に収まっているか。社会保険や雇用保険の取り扱いは適正か。こうした確認を怠れば、故意でなくても企業にとって重大なリスクになり得る。
特定技能制度をめぐり、出入国在留管理庁は26年3月、外食業分野の1号在留者数が同年2月末時点で約4万6,000人となり、受け入れ見込数である5万人を超える見込みだとして、同分野の受け入れ上限の運用方針を示した。外食分野では新規受け入れが難しくなる局面が生じており、今後は定着、転職者の採用、特定技能2号への移行などを含めた人材戦略が必要になる。
27年4月に予定されている育成就労制度の趣旨は、単に人手不足を補うことではなく、働きながら技能を高め、一定の要件を満たせば特定技能へつなげていくというものだ。技能実習制度においては特定技能移行への試験免除措置が認められているが、育成就労制度では免除措置はなくなる見通しだ。企業には、長期的な視野で育成する責任がより明確に求められる。
企業にとって、こうした制度変更への対応は経営を見直す機会でもある。外国人材にどの業務を任せ、どのように教育し、どの段階で評価し、どのような待遇改善につなげるのか。人事制度、労務管理、現場教育、生活支援を一体で考えなければ、外国人材は定着しない。外国人雇用は、採用担当者だけの業務ではなく、経営者が向き合うべき総合的な経営課題になっている。
外国人材を前提とした事業運営を
こうした変化を、外国人材支援の現場はどう見ているのか。一般的な労働者派遣、人材紹介、紹介予定派遣に加え、特定技能外国人の登録支援、グループ会社や提携先を通じた技能実習生の監理などを手がける地球人.jp(株)の山本剛央執行役員は、企業の外国人材活用は「採用」から「定着」と「育成」の段階に移っていると指摘する。地方や現業部門では、日本人材の採用が難しいから外国人材を採用するという段階を超え、外国人材を前提に事業運営を考える局面に入りつつある。
執行役員 山本剛央 氏
外国人材の採用において、山本氏は採用前の段階で本人の希望と企業側の人材戦略をすり合わせることが重要だと強調する。特定技能制度の広がりもあって、外国人材の意識は「数年で帰国する」のではなく、「日本で長く働きたい」「家族を呼びたい」「正社員として安定したい」というものへ広がっているという。
企業側には、外国人材を単純作業の担い手として固定しない姿勢も求められる。長期的な育成を視野に入れている人材に対して、短期的な補充を想定して採用すれば、ミスマッチによる早期離職につながる。外国人材に対し資格取得や日本語教育、特定技能2号への移行、正社員化など、成長の道筋を示すことで、彼らは自分の将来を描きやすくなる。どの技能を身につければ給与が上がるのか、どの役割を担えば評価されるのかを明確にすることは、外国人材の意欲を高め、定着につながる。
同社はフィリピンで、自社が主体的に関与する送り出し・教育体制を構築し、インドネシアでは提携する送り出し機関・教育施設を通じて、入国前から日本語教育や職業訓練に関与している。来日後に教育を始めるのではなく、来日前から日本語や日本の生活習慣を学び、就労意識を高めるほか、家族に日本での就労環境を説明することも、受け入れ後のミスマッチを防ぎ、長期就労を可能にするうえで重要だという。
地域との共生を支援
生活支援も定着の重要な条件の1つである。働く環境が整っていても、住まい、通信環境、買い物、交通ルール、地域との関係に不安があれば、外国人材は地域で孤立しやすい。とくに地方では、母国語で話せる同郷者が少なく、相談できる相手が限られる。仕事以外の不安が積み重なれば、職場への不満や離職につながる。地域との摩擦の多くは生活習慣の違いや情報不足から起こる。たとえばゴミ出しのルール、騒音への感覚、自転車の交通ルール、近隣住民との付き合い方など、小さな行き違いが積み重なれば、本人にとっても地域にとっても不幸な結果を招く。だからこそ、企業は外国人材を職場のなかだけで見るのではなく、地域で暮らす生活者として受け入れる必要がある。
外国人材の来日後も地域密着でフォローできるよう、同社では現場近くに拠点を構えており、現在は東北から九州まで、全国17拠点を展開している。各拠点には、外国人材と同じ言語を話せる社員も配置し、母国語で相談できる環境をつくっている。住居を確保するだけでなく、家具・家電からSIMカードまで、生活に必要なものを事前に準備するとともに、日本で暮らすうえで知っておくべき生活のルールを説明するほか、自転車保険の加入などの支援を行っている。花見イベントやコミュニティ交流活動などを通じて、孤立を防ぐ取り組みも行う。山本氏は「安心して生活できれば、仕事も安定する」とその意義を強調する。
重要性高まるコンプライアンス
政府の方針転換もあって、企業の外国人材雇用において、コンプライアンスが事業継続上の課題として重要性を増している。たとえば、「在留資格と実際の業務内容が合っていない」「留学生の就労時間が制限を超えている」「在留カードの有効期限が過ぎている」などといったミスは、故意でなくても企業にとって重大なリスクにつながる。不法就労が発生した場合、本人だけでなく、受け入れ企業側も不法就労助長罪に問われる可能性があるからだ。加えて制度が複雑化するほど、現場担当者の経験や注意力に頼る管理には限界がある。
外国人材の活用では、本人確認、在留資格、生活支援、就労時間、学校情報、キャリア形成が相互に関係する。企業単独でこれらすべてを管理するには負担が大きく、専門的な支援機関との連携も現実的な選択肢となる。地球人.jpでは、クラウド型顔認証システムを活用し、在留カード番号と在留資格に関わる情報(留学生であれば教育機関情報、学生証の期限)などを一元的に管理することで、法的制限を超えないよう労働時間を管理している。
外国人材の受け入れは、採用、人事、労務、教育、生活支援、地域共生、法令遵守が重なる総合的な経営課題である。地方企業に問われているのは、人を採る力だけではない。受け入れた人材をどう育て、どう地域に定着させ、どう企業の将来を支える戦力にしていくかという設計力である。外国人材を単なる労働力として見る時代は終わりつつある。企業と地域の受け入れ体制づくりこそが、今後地方企業の持続性を左右する。
【茅野雅弘】
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