磐梯高原より、秋の便り

福島自然環境研究室 千葉茂樹

 今回は磐梯高原の秋の便りをお届けする。

 2026年9月13日、南麓の翁島(おきなしま)登山口から乳下(にゅうじた)台地に行ってきた。私の場合、山頂までの登山ではなく、若いころに地質調査で歩いた場所の現状確認である。それでも、いろいろなものに出会った。

風光明媚だった風景は何処(いずこ)へ

 磐梯山の南麓に「翁島(おきなしま)登山口」がある。1970年頃までは、JR翁島駅から歩いて登山していた。大正・昭和の初め、天皇家の皆さまもこの登山道で磐梯山頂を目指された(郷土の資料をどう守るか―その2/パワハラ体質の福島県立博物館(前))。

 現在は標高800m付近まで車で登り、駐車場に車を停めて、ここから歩いて登山する。この登山道は、登り初めがきつい。溶岩からなる乳下台地の側壁、標高差約200mを一気に登る。

 遡れば、80年に登山口から乳下台地の上(標高1,050m)まで、立派な林道(乳下林道)がつくられた。ちょうど私が磐梯火山の地質調査を始めたころで、95年頃まで車で頻繁に登った。

 85~86年、登山口の下方50mに、「京急猪苗代リゾートホテル」とスキー場が開設された。この乳下林道もスキー場の開設と管理のためにつくられたのだと思う。当時は管理が十分行き届き、乳下台地からは広大な猪苗代平野と猪苗代湖が望めた。実に素晴らしかった。

画像01

 画像01は、85年の眺望である。画像は、古いネガからなので、ご了承いただきたい。この画像には、「磐越自動車道」はない。この後の88年頃から工事が始まった。なお、この当時は、頭無丘陵には別荘がいっぱいあった。ドラマのロケも頻繁に行われた。時は遷(うつ)り、2004年頃から、翁島丘陵に別荘が出来始めた。この丘陵には現在、別荘がたくさんある。この丘陵から磐梯連峰の雄姿が眺望できる。実にすばらしい。だから、大正期に高松宮別邸(現在の天鏡閣)がつくられたのである。

画像02

 話は戻って、乳下台地からの眺望も、今は林のなかに埋没した。山麓のホテルもスキー場も閉鎖され、管理なしの「草ボウボウ」「木は伸び放題」になった。画像02は、乳下林道の今の姿である。ここは登山道の一部として使われているが、林道の他の部分はほとんど痕跡である。

画像03

 画像03と04は、ゲレンデ跡から磐梯山と猪苗代湖を見たものである。ススキがいっぱいで秋を感じる。なお、登山道の大半は、樹木が大きくなって眺望はまったくない。

画像04

 このススキ原には「大型動物が歩いた跡」がはっきりと残っていた。おそらくクマが住んでいる。登山の際には、ご注意いただきたい。

乳下台地の自然

画像05

 この台地にも秋が訪れている。画像05は、ノコンギク(野紺菊)である。紫色の花がかわいらしい。林道脇に咲いていた。同じような花にシオン(紫苑)がある。背が高いものはシオンで、背の低いものがノコンギクとのことである。

 また、林道脇にナナカマドがあり、一部の葉は真っ赤に色づいていた(画像06)。

画像06

 今回、この登山道を歩いて気が付いたことがある。この付近は地元民に知られた「キノコの宝庫」で、食用キノコがいっぱい出る。00年頃までは、秋にこの付近を歩くと、必ずキノコ採りの人と出会った。ところが今回は、登山グループ2つ、6人だけであった。林道も荒れて、キノコ採りの人もいない。

 画像07は、登山道脇で見つけた「シャカシメジ(釈迦占地)」である。画像中の1円玉は直径2cmで、このキノコが「小さくて、かわいらしい」ことがわかる。なお、私は調理をする気のない時には採取しないので、このキノコはそのままにしてきた。

画像07

 乳下台地の上で、下山中の埼玉県のパーティー5人と出会い、話をした。彼ら彼女らは、このキノコの脇を通ったはずであるが、気が付かなかったようである。

 私の場合、単に山登りをするのではなく、周辺の自然を楽しむ。周りの「植物」「昆虫」時には「動物」との出会いを楽しんでいる。山を感じている。これが「本当の山の楽しみ方」だと思う。この「山にいる今」は二度と訪れない。一期一会(いちごいちえ)である。

 10月になれば、紅葉真っ盛りとなる。ご興味のある方は、磐梯高原に来ていただきたい。


<プロフィール>
千葉茂樹
(ちば・しげき)
千葉茂樹氏(福島自然環境研究室)福島自然環境研究室代表。1958年生まれ、岩手県一関市出身、福島県猪苗代町在住。専門は火山地質学。2011年の福島原発事故発生により放射性物質汚染の調査を開始。11年、原子力災害現地対策本部アドバイザー。23年、環境放射能除染学会功労賞。論文などは、京都大学名誉教授吉田英生氏のHPに掲載されている。
原発事故関係の論⽂
磐梯⼭関係の論⽂
ほか、「富士山、可視北端の福島県からの姿」など論文多数。

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