【特集】全管協及び自民党ちんたい支部連合会が推進する党員募集に政治資金規正法違反の疑い浮上

 全国2,000社超の賃貸住宅管理・仲介会社が加盟する全国賃貸管理ビジネス協会(全管協)は、業界の要望を政治に反映させるため、自民党ちんたい支部連合会などを通じて党員獲得を進めてきた。その党員数は一時約4万人に達したが、当社の取材では、会員企業やその代表者が本人に代わって党費を負担していたとされる事例が全国各地で浮上している。こうした党費負担は、政治資金規正法上の寄付行為にあたる可能性がある。巨大な職域党員組織は、どのようにつくられてきたのか。その実態を追う。

ロビー活動自体は合法

 全国賃貸管理ビジネス協会(以下、全管協)の会員企業やその代表者が、自民党の党員勧誘活動に際し、本来党員となる個人が支払うべき党費を負担している実態がある。この行為は、政治資金規正法上の寄付行為にあたる可能性がある。

 自民党員の獲得・拡大に関わる全管協の政治団体「全国賃貸住宅経営者政治連盟」(ちんたい政連)は、全管協名誉会長・高橋誠一氏が2021年5月から会長を務めている。ちんたい政連は、自民党の賃貸住宅対策議員連盟(ちんたい議連)と連携し、家賃の消費税非課税化や定期借家権制度の導入などを働きかけてきた。業界団体が政治団体をつくり、政府・与党へ政策を働きかけるロビー活動自体は違法ではない。問題は、その活動が法令や社会的規範に則って行われているかどうかである。

 全管協と「自民党ちんたい支部」との関係は、14年にさかのぼる。全管協は会員の声を自民党の政策に反映させるため、各都道府県に「自民党ちんたい支部(職域支部)」を設立した。職域支部は業界団体や企業単位で組織される自民党の基礎組織で、それらを取りまとめる「自民党ちんたい支部連合会」の会長も高橋氏が務めている。

寄付金を党費に流用か

 これまでの取材では、全管協から全国の自民党ちんたい支部へ寄付された約5億円について、新規党員獲得のための「活動費」として利用するよう、全管協から職域支部長へメールが送られていたことが分かっている。その活動費の一部が、新規獲得した党員の党費の負担に使われていたとの証言もある。

 当社が入手した20年10月12、13日付のメールには、「活動費を活用した新規党員獲得など」とのタイトルが付けられ、当時確保していた新規党員数に対して、およそ10倍の新規党員確保が全体として必要な状況にあることが記されていた。また、活動費を使って新規党員を大幅に増やしている支部を紹介したうえで、高橋氏が活動費を使った新規党員獲得を求めていることも伝えられていた。

 さらにメールには、高橋氏と当時の菅義偉首相との面談について、写真とともに、高橋氏が「党員3万3,000人の達成を目標」に取り組んでいることを報告したとの記載もある。こうした全管協本部のメールに基づいて党員獲得が行われ、その過程で企業や代表者などが本人に代わって党費を負担していたとすれば、政治資金規正法上の寄付行為にあたる可能性がある。同法は、本人名義以外の名義や匿名による政治活動への寄付を禁じており、企業や代表者などが当人に成り代わって党費を支払う行為は、違法行為にあたる恐れがある。

 高橋氏が全管協会長を退いた後も組織内で強い影響力を行使できる理由について、複数の関係者は「政治力にある」と語っている。高橋氏は全管協グループ企業の代表取締役のほか、自民党ちんたい支部連合会の会長など10の代表職を兼任している。政治家に対して自らの影響力を示すうえで、高橋氏が自民党員の拡大を推し進めているとの指摘もある。

2020年10月12日、13日付のメール抜粋

2020年10月12日、13日付のメール抜粋

2020年10月12日、13日付のメール抜粋
2020年10月12日、13日付のメール抜粋
高橋誠一氏が代表を兼任する全管協関連団体

背景に自民党の「党員千人」ノルマ

 全管協による党員獲得の背景には、高橋氏のトップダウンによる指示に加え、自民党本部が国会議員に課している年間「党員千人獲得」のノルマがある。ノルマを達成できなかった議員には、不足する党員数に応じた負担が都道府県連から求められるほか、成績の公表、衆院選で比例代表名簿への登載対象外とするなどのペナルティが設けられている。

 自民党では、09年の野党転落後に党員数が約78万人まで減少したことを受け、安倍政権時代の14年、当時の石破茂幹事長のもとで「120万党員獲得運動」が始まり、国会議員1人あたり年間1,000人の党員獲得ノルマが課されるようになった。全管協によって自民党ちんたい支部連合会がつくられたのも14年だった。

 高橋氏が党員拡大の号令をかける理由の1つには、自民党に対する政治力の強化があるとされる。党員集めに苦労する各地の自民党国会議員にとって、全管協や自民党ちんたい支部連合会はありがたい存在である一方、その陰で全国の全管協加盟事業者や従業員が負担を強いられている。

九州で職域支部が解散

 党員獲得をめぐる問題は全国各地で表面化している。九州では、自民党ちんたい支部連合会の一部支部が解散していたことが明らかになった。25年10月31日に開かれた全管協九州支部の定例会では、ある県支部から職域支部の解散や全管協の組織運営の在り方について意見が出され、同年11月18日の代議員総会でも、高橋氏の面前で同趣旨の意見が出された。

 関係者によると、長年にわたって職域支部の運営に携わるなかで、党費の多くを支部長自身が負担し、名簿だけの党員が存在している実態があるとの指摘があった。また、高橋氏の号令のもと、党員目標の数字を割り当てられ、困惑しながらも目標達成を求められているとの不満も示された。

 全管協の組織運営についても、本部役員がほとんど変わらず、名誉会長の独断によって運営される組織になっているとの批判が出ている。とくに問題視されているのが、「ほとんどの党費は支部長のポケットマネーで賄われ、名簿だけの党員となっている」との告発と、高橋氏の影響力が依然として強いことへの指摘だ。同様の声は九州だけでなく、北海道、東北、関西など全国から寄せられている。

関西では「名義貸し」も

 関西でも党員獲得は大きな負担となっていた。関西地方の全管協加盟企業の代表者によると、党員獲得目標は人口割で算出され、人口の多い関西支部では党員ノルマも大きかったという。なかでも大阪は大阪維新の会が強く、自民党員を集めること自体が難しい地域だった。

 この代表者の会社では1,000人の党員を獲得したが、その内実について、社員や社員の家族、親族らに名前を出すよう依頼したと証言している。役員や店長には「半強制的」に名前を出してもらったとも語った。自民党の理念に賛同していない人にまで名義貸しを依頼していた実態があったという。

 それでも本部からの増員ノルマを達成することは難しく、取引先企業の代表者らにも協力を求めたという。また、20年度からは、自民党費の原資として、全管協から関西の職域支部へ寄付された資金の一部が流用されていた可能性がある。関西支部内部では強い党員獲得要求はなかったものの、同代表者は全管協名誉会長の高橋氏からプレッシャーがあったと証言している。

北海道では正常化への動き

 北海道支部でも、全管協本部へ新規獲得党員数を報告してきた。北海道の全管協加盟企業の代表者は、会員企業のなかで他人の党費を支払った例が確実にあると証言するとともに、自身も全管協の各種会議で本部からの圧力を感じていたと語った。

 その一方で、北海道ではこうした状況を正常化しようとする動きが始まった。全管協北海道支部は26年4月9日の役員会で、今後は全管協本部へ党員数を報告せず、自由民主党北海道支部へ直接報告することを決定した。本人の同意に基づいた正当な募集によって自民党を支援していくとしている。

鹿児島・東京でも退会や更新辞退

 鹿児島でも、会員企業が他人の党費を支払っていたとの証言がある。県内の全管協加盟企業の代表者は、自身の会社でも、全管協本部の圧力や自民党ちんたい支部連合会の説明によって社員などの党費を支払ったとしている。その後、「全管協をよくする会」の活動を通じ、こうした状況を前提として党員募集をすべきではないと考え、自由民主党鹿児島県ちんたい支部の支部長に党員全員の退会届を提出した。

 一方、熊本県のある全管協会員は、1人ひとりに党員更新を依頼し、本人から党費を支払ってもらう地道な党員獲得を続けてきたと証言している。ただし、熊本県内のほかの会員では、他県と同様に会社や会社代表者が党費を負担していたケースもあるという。

 東京では、全管協加盟企業の代表者が、高橋氏から「1社で最低1,000人以上」の党員を獲得するよう指示を受け、長年党員募集に取り組んできたと証言している。全管協との窓口担当者によれば、定期的に本部会議室へ呼ばれ、「党員数が今何件なのか」「いつ達成するのか」などと問われ続け、強い圧力を感じていたという。

 同社はその後、1,000人以上に上るすべての党員について更新を辞退した。今後、自民党を支援するための獲得党員リストは、全管協を介さず自民党へ直接提出したいとしている。

自由民主党鹿児島県ちんたい支部に提出された複数名による党員退会届
自由民主党鹿児島県ちんたい支部に提出された複数名による党員退会届

「全管協をよくする会」507社が参加

 全管協の自民党員獲得方法やコンプライアンス、ガバナンスについては、以前から会員企業の間で問題視されていた。そこで25年11月、全国の全管協会員有志によって「全管協をよくする会」が結成された。同会は全管協を内部から是正するための活動を行い、自民党員獲得活動についても会員企業への周知を進めている。約507社が参加している。

 こうしたなか、全国各地で自民党員募集について全管協本部の活動と距離を置く動きが出ている。24年は約4万人だった党員数が、25年は目標4万5,000人に対し、実績は約3万2,000人となった。

【近藤将勝】

「全管協の闇」シリーズ調査報道の全容はWebで
 本誌では、全国賃貸管理ビジネス協会(全管協)をめぐる一連の問題について、NetIB-NEWSで掲載してきた「全管協の闇」シリーズから、その一部を再構成して紹介している。
 当社報道の「全管協の闇」シリーズではこのほかにも、全国賃貸住宅修繕共済をめぐる問題などについて継続的に取材・報道している。
 これまでの記事は、NetIB-NEWSの「全管協の闇」シリーズ特設ページにまとめている。
▶「全管協の闇」シリーズ特設ページ

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