追い風となった奥田・革新県政
蔵内勇夫氏は1987年、筑後市選挙区の福岡県議会議員選挙に革新系の支援を受けて無所属で立候補し、初当選しました。同時期に当選した元議員で、蔵内氏の議員生活の初期を知る人物Aは次のように、当時を振り返っています。
「蔵内さんが議会で存在感を発揮するようになったのは、自民党県議団に入った2期目から。1期目は革新系であったこともあり比較的おとなしく、どちらかといえば目立たない存在だった。権力を本格的に強めたのは4期目以降だった」
蔵内氏の4期目は、99年4月30日~2003年4月29日。この間、01年5月22日からの1年間、県議会議長に就任。03年には自民党県議団会長に就任し、以降12年間にわたりその地位に君臨していました。
さて、福岡県では83年4月23日から95年4月22日までの12年間、九州大学の教授だった奥田八二氏(01年死去)が知事を務めていました。蔵内氏は奥田県政の12年のうち87年から95年の8年間、1期から2期にまたがる時期に、県議会議員としての時間を過ごしました。
奥田氏は、当時の社会党や共産党の推薦を得て当選し、革新県政を展開。蔵内氏にとって、この状況が追い風になり、県政のキーパーソンになるための仕掛けをしていたようです。Aは次のように指摘しています。
「革新県政においては、中央官庁との関係が疎遠になり、そのことは県庁職員が持ち寄る政策が実現しづらくなる事態を引き起こした。自民党の国会議員などとの交流を深めていた蔵内さんは、『執行部』(行政:県職員の意味)にとって使い勝手が良い存在であり、中央官庁との橋渡し役となったことで、福岡県の政策実現に影響力をもつようになっていた。そうした経験は、後のことにはなるが、現在の知事である服部誠太郎氏との蜜月の関係にもつながっている」
なお、奥田氏は議会内で少数与党であったこと、さらに就任前に「お布施事件」(選挙関係者が福岡市内の寺院約20カ所にお布施として現金入りの封筒を置いていったと言われています)が発覚したこともあり、議会運営に苦慮していました。
こうした状況をたくみに捉え、自民党内はもちろん、他党、県職員など関係者との交流を深め、県議会内での影響力を強めていったわけです。4期目には議長に就任し、さらに議会での立場を強めることにつなげるかたちとなりました。福岡県議会においては、議長職は当選4期目に就任することが多く、同氏もその慣例に則って就任したかたちです。
自民党県議団の分裂騒動
そして、決定的に蔵内氏の存在感を強めたのが、5期目の2003年に起こった自民党県議団分裂騒動においてでした。
自民党県議団分裂騒動とは、03年4月の統一地方選挙で、自民党は福岡県議会で初めて単独過半数を獲得。ところが、選挙後の4月30日、改選後初の議員団総会で、県議団の運営や人事をめぐる対立が表面化。約3割の自民党公認県議会議員が「自民党福岡県議会議員会」という別会派を結成して、県議団と対峙する事態となったものです。
Aは「当時は、三木清氏をはじめとする有力議員がそれぞれの勢力をもち、県議団内で主導権を争っていた。ところが、政治的な対立やさまざまな事情によって、三木氏を含む有力議員が次々と表舞台から姿を消していった。力をもった先輩たちがいなくなるなかで、蔵内氏がより存在感を増していった」という旨の証言をしています。
この最中に県議団の会長に就任し事態を収めたことが、約12年間にわたり県議団会長職に就くなどの盤石な権力の構築につながったわけです。このように蔵内氏の経歴をみると、同氏がその時その時の状況を的確に捉え、政治基盤を強化させていったことが見えてきます。
ところで、Aは議会の議長・副議長を誰が務めるのかをめぐる話をしてくれました。
「当時は、議員の期数や年次、所属するグループなどを踏まえ、関係者が話し合って人事を決めていた。こうした人事調整の仕組み自体は、蔵内さんが台頭する以前から存在していた。つまり、蔵内さんが一から新しい権力構造をつくり出したというよりも、従来からあった議会内の人事慣行や勢力間の調整を理解し、それを活用することで影響力を強めたということになる」
次回は、この正副議長ポストをめぐる金銭授受疑惑について、考えていきたいと思います。この疑惑は野党をも巻き込む福岡県議会の機能不全(悪い言い方をするとだらしなさ)、蔵内氏の巧妙な人心掌握術を表していますし、何より有権者にも責任があることを示していると考えています。
(つづく)
【三輪尚樹】
<プロフィール>
三輪尚樹(みわ・ひさき)
50代半ば。福岡市在住。マスコミ関連の仕事を長くしてきましたが、政治関連の取材・執筆の経験はほとんどありません。学生時代から30年以上、関東に居住していたため、福岡県の政治情報についてもほぼノータッチで生きてきました。政治不信。いわゆる「ノンポリ」で支持政党はありません。









