都市特性評価で国内3位
再訪ランキングもアジア8位
2026年7月29日、森ビル系のシンクタンク「森記念財団都市戦略研究所」は、経済や住みやすさなど都市を多角的に分析・調査した「日本の都市特性評価(JPC)2026年版」を発表した。同調査は、都市の力を構成する要素として6分野(経済・ビジネス、研究・開発、文化・交流、生活・居住、環境、交通・アクセス)を設定し、それらの主要な要素である28指標グループ、さらにそれらを構成する87指標を選定。日本の各都道府県における主要都市(136都市と東京23区)を対象に、都市の力を相対的かつ多角的に分析し、強みや魅力といった都市特性を明らかにした。
そのなかで福岡市は、経済・ビジネス分野での高い競争力を背景に、合計スコアでは昨年に引き続き3位を維持した。特区制度認定数、新規設立法人登記割合はいずれも1位を堅持し、「ビジネス環境」の順位を上げた。文化・交流では行楽・観光目的の訪問の多さと、国際会議・展示会開催件数においてスコアを伸ばし、「交流実績」が5位から4位に改善した。一方で、生活・居住では「生活の余裕度」のスコアをわずかに落とした。
9月8日、デジタル旅行プラットフォーム「Agoda(アゴダ)」を運営するAgoda Company Pte. Ltd.(シンガポール)は、旅行者が何度も足を運ぶアジアの目的地に焦点を当てた、26年の最新版「リピーターランキング(Repeat Visitor Ranking)」を発表した。同ランキングは今年上半期の予約データに基づいて集計されたもので、昨年2位だった東京がタイのバンコクを抜いて初の1位となった。ランキングのトップ10を見ると、2位:バンコク、3位:バリ島(インドネシア)、4位:ソウル(韓国)、5位:大阪、6位:ダナン(ベトナム)、7位:クアラルンプール(マレーシア)、8位:福岡、9位:台北(台湾)、10位ジョホールバル(マレーシア)と続いた。日本からは3都市が名を連ねており、とくに福岡は初のトップ10入りをはたした。
8位の福岡について、アゴダ社は「日本の伝統的な観光拠点以外の目的地への関心が高まっていることを示している」と分析しつつ、ラーメンや屋台の食文化、リラックスした雰囲気に加え、市街地に近接する福岡空港の利便性の高さもリピート旅行を後押しする要因となっていると評価している。
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都市特性評価で国内3位となったほか、旅行者の再訪ランキングでアジア8位となった福岡市。一見すると別々の評価に見えるが、その根は同じである。訪れた企業が事業を広げ、訪れた旅人がもう一度来たくなる。都市への「磁力」が、経済と観光の両面で同時に強くなっているといえよう。
2010年に始まった高島宗一郎・福岡市長の4期16年にわたる市政運営は、福岡市の都市力が高まっていった時期とも重なる。もちろん現在の福岡市の勢いは、すべてが高島市長の功績・手腕だというわけではないだろう。これまでの市政運営のなかでは、効果が不透明なまま頓挫となった仮想行政区「カワイイ区」のような奇策もあったし、断念せざるを得なかったJR博多駅とウォーターフロント地区を結ぶロープウェイ構想などもあった。高島市長でなくとも、今の福岡市の成長につながっていた可能性も十分考えられる。しかし、元アナウンサーということもあり、市内外に向けての情報発信が抜群にうまく、「天神ビッグバン」に代表されるセンセーショナルなプロジェクトを次々と打ち出しながら、全国的に“福岡市”の名前を知らしめた立役者の1人であることは間違いない。
その高島市長は今年8月、11月投開票の福岡市長選挙に立候補しない意向を表明。16年ぶりに新市長へとバトンが渡されようとしており、福岡の都市政策は現在、次の段階へ進もうとしている。今回、高島市政16年間の都市政策について振り返りながら、主要なプロジェクトの現在地を確認するとともに、これからの福岡市の都市政策の行方を考えてみたい。
高島市政・都市政策の代名詞
第1フェーズ終盤の天神ビッグバン
高島市政における都市政策の代名詞といえるのが、何といっても「天神ビッグバン」だろう。15年2月に始動した天神ビッグバンは、開始からすでに10年以上が経過し、市自身が「26年末に1つの区切り」と位置づける佳境を迎えている。
天神ビッグバンは、航空法の高さ制限と容積率という2つの規制緩和や、天神ビッグバンボーナス(以下、天神BBB)を含めた優遇制度によって、更新期を迎えたビルを耐震性の高い先進的なビルへと建て替えることを誘導するプロジェクトだ。当初は25年度(26年3月末)までに30棟の民間ビルの建替えを誘導して延床面積を1.7倍に拡大するとともに、雇用を2.4倍に拡大し、約2,900億円の建設投資効果と、建替え完了後には毎年約8,500億円の経済波及効果を見込んでいた。だが、コロナ禍に見舞われたことで、市は20年8月、ビルの「換気」「非接触」「身体的距離の確保」「通信環境の充実」などの感染症対策を誘導する方向性を新たに策定し、福岡市を「感染症対応シティ」へ変貌させるべく、感染症対策などに取り組むビル計画に対して市独自の容積率緩和を最大50%上乗せする制度へと拡充。併せてコロナ禍による経済停滞を受けて、天神BBBの竣工期限を当初の25年3月末から26年12月末まで延長し、プロジェクト期間は10年から12年間へと延びた。
市によると、天神ビッグバンエリア内では15年2月から26年3月末までに85棟が竣工。26年末までに約90棟、2030年代までに約120棟の建替えが予定されている。また、福岡アジア都市研究所が26年4月に公表した推計では、天神BBB認定済み8プロジェクトと認定に向けて検討中の3プロジェクト、計11プロジェクトが全面開業した場合、経済活動による波及効果は年間約1兆8,900億円で、当初試算の約2.2倍に上る。建設投資による波及効果は約6,300億円、雇用効果は約5万9,000人とされる。この規模の経済波及効果が生まれる意義は小さくなく、都市再生を国の予算頼みではなく民間投資の呼び込みで進める福岡型の手法は、地方都市の再開発のモデルとなりつつある。
これまでに天神BBBの認定を受けたのは、以下の8つのプロジェクトだ。
1つ目の福岡地所(株)による「天神ビジネスセンター」(21年9月竣工)は、基準階貸床面積約717坪・総貸床1万坪超の大規模フロアプレートをもち、地下鉄天神駅に直結する免震・BCP対応の高機能オフィスビルである。2つ目の大名プロジェクト特定目的会社(積水ハウス(株)、西日本鉄道(株)、西部瓦斯(株)、(株)西日本新聞社、福岡商事(株))による「福岡大名ガーデンシティ」(22年12月竣工)は、九州初のラグジュアリーホテル「ザ・リッツ・カールトン」を誘致。また、隣接する旧大名小学校のスタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」と連携した創業支援環境や、約3,000㎡の広場・コワーキングスペースによる交流拠点を備えた複合ビルだ。3つ目のヒューリック(株)による「ヒューリックスクエア福岡天神」(25年1月開業)は、オフィスへの自然換気システムや空中階への庭園設置など「感染症対応シティ」の先駆的な実装例に加え、九州産木材の利用や屋上の太陽光発電による環境配慮、立体広場による新たな地区ネットワークの構築が特徴となっている。

4つ目の西日本鉄道による「ONE FUKUOKA BLDG.」(略称:ワンビル)(25年4月開業)は、「創造交差点」をコンセプトとして、オフィス、商業、ホテルなどのさまざまな用途を導入し、新たなビジネスや文化の発信の場を創出。西日本最大規模のオフィスフロアプレートとともに、6・7Fのスカイロビーにカンファレンスやコワーキングなど充実した共用施設を設置し、新しい事業の創造や交流を推進している。5つ目の日本生命保険(相)と積水ハウスによる「天神ブリッククロス」(25年4月竣工)は、明治通りから昭和通りをつなぐ都市計画道路・天神通線と一体となった幅員8mのプロムナードに、常緑並木や地上から地下までつながる壁面緑化、カフェやベンチを配した憩いの空間を整備。国の誘導基準を超える省エネ性能も備える。6つ目の住友生命保険(相)と福岡地所による「天神住友生命FJビジネスセンター」(25年5月竣工)は、屈曲した天神西通りの正面に各フロアのオフィスバルコニーを配して賑わいを“表情”とし、地下鉄天神駅と接続して敷地東西に広場空間とアートを整備した。7つ目の天神一丁目761プロジェクト(同)と福岡地所による「天神ビジネスセンターⅡ」(26年6月竣工)は、天神ビジネスセンターと隣り合っており、2棟のビルが双子のように連なっている。集客・交流・創造の活性化へとつながる、まちに開かれた「アクセラリウム」を整備しており、BCPや感染症に対応した次世代オフィスとなっている。
そして8つ目が、三菱地所(株)の「天神大樹」(旧・仮称天神1-7計画。27年5月末竣工予定)だ。外装に九州産材のCLT(直交集成板)パネルと植栽を有機的に配置したデザインや、使用電力をすべて再生可能エネルギー由来とする環境配慮、パブリックアートによる「Fukuoka Art Next」への寄与で認定を取得した。なお、天神大樹は竣工時期を27年5月末に延長した結果、天神BBBの竣工期限には間に合わなくなってしまった。その代わりに、福岡市からの「グリーンボーナス」(グリーンボーナスについては後述)の認定を受けており、天神BBBと同様の容積率緩和のインセンティブを受けている。
大規模・複数街区の再開発へ
天神ビッグバン・第2フェーズ
天神BBBの要件は、26年12月末までに竣工を迎える旨が定められており、天神大樹を除く7つのプロジェクトはすでに竣工済み。残る天神大樹は26年12月末の期限には間に合わないものの、グリーンボーナスの適用により特例的にインセンティブを受けられる予定で、この8つのプロジェクトの完成をもって、天神ビッグバンの第1フェーズが完了を迎える。
一方で、複数街区にまたがる段階的および連鎖的な建替え計画については、26年12月末の期限に間に合わずとも個別に判断するとされており、これから始まる天神ビッグバンの第2フェーズは、いずれもこれまでより大規模なプロジェクトとなる予定。現在のところ、「(仮)天神二丁目南ブロック駅前東西街区プロジェクト」や「福岡中央郵便局およびイオンショッパーズ福岡の段階連鎖建替えプロジェクト」「天神一丁目15・16番街区」の3つのプロジェクトが公表されている。
まず「(仮)天神二丁目南ブロック駅前東西街区プロジェクト」は、新天町商店街やパルコ、西鉄福岡駅ビルなどにまたがる約2.2haにおいて、パルコ本館・三井住友銀行、パルコ新館、新天町ビル、西鉄福岡駅ビル、新天町商店街の5つのビル・商店街を一体的に再開発するもの。事業主は新天町商店街商業(協)および(株)新天町商店街公社、(株)パルコ、西日本鉄道(株)、(株)三井住友銀行の5者となっている。中央部を南北に貫くメルヘン通りを挟むかたちで、西街区共同ビルと東街区共同ビルの2棟の先進的なビルを建てる計画。現在の新天町商店街を建て替えるかたちの新天町街区(西街区)では「新天町の歴史を継承した未来に向けた商店街」の実現を行うとしており、店舗や事務所、文化・情報発信などを主要用途としている。一方で、パルコ本館とパルコ新館、福岡駅ビル、新天町ビルの4棟を建て替えるかたちのパルコ街区(東街区)では「新たな文化芸術機能」の導入を行うとしており、店舗や事務所、文化・情報発信のほか、ホテルなどを主要用途としている。
9月8日に福岡市議会の福祉都市委員会で、パルコ街区で地上22階・地下4階建、高さ約110mの新たなビルを建てる事業計画が報告された。地下2階~地上6階部分は商業フロアとなるほか、地上7階部分は商業および文化・情報発信施設が入る。また、地上8~15階部分には基準階1,000坪以上の大規模フロアプレートのオフィスが入り、地上16~22階部分は国際水準のハイグレードホテルを導入。さらに地下3~4階部分には駐車場が設けられ、地下4階にはライブハウスも入る。一方の新天町街区では現在、市街地再開発事業の認可申請に向けて、事業計画等の検討や作成が行われているところだ。
なお、福岡パルコは27年2月末に営業終了を予定しているほか、新天町商店街も27年春までに順次閉店していく予定となっており、先行して進むパルコ街区の竣工は、31年末ごろを予定している。第2フェーズの3つのプロジェクトのなかでは、同プロジェクトが先行して進みそうだ。

「福岡中央郵便局およびイオンショッパーズ福岡の段階連鎖建替えプロジェクト」は、文字通り福岡中央郵便局(1982年竣工)およびイオンショッパーズ福岡(71年竣工)を段階連鎖的に建て替えていくプロジェクトで、事業主は日本郵便(株)とイオン九州(株)。第一段階として福岡中央郵便局を、第二段階としてイオンショッパーズ福岡を段階連鎖的に建て替えていく方針で、福岡中央郵便局建替え(第一段階)は30年ごろの竣工を目標。続くイオンショッパーズ福岡建替え(第二段階)は30年代中ごろの竣工を目標としている。
「天神一丁目15・16番街区」は、天神一丁目15・16番街区の地区内有志の地権者で構成される「天神一丁目15・16番街区再開発準備組合」(事業協力者:西鉄、日鉄興和不動産(株))によって進められる複数街区にまたがる段階的および連鎖的なプロジェクトで、区域面積は約2.5ha。福岡城の鬼門にあたる現在地にある水鏡天満宮を、方角を変えずに那珂川の水辺に近づけるほか、赤煉瓦文化館前の県道を天神通線へ付け替えて一体整備することで、那珂川に面した部分に水鏡天満宮や赤煉瓦文化館と一体となった緑・公園を創出。また、その西側部分に建物の高度利用と都市機能の更新や耐震性の向上、感染症対応、環境負荷低減などに資する建物計画を行うほか、低層・地上部には既存の特徴ある連続した店舗空間(横丁)等の継承を行っていく方針で、全体の完成は30年以降を目標としている。
これら3つの複数街区にまたがる段階的および連鎖的な建替え計画が、天神ビッグバンの第2フェーズといっていいだろう。

なお、天神ビッグバンエリア内ではこのほか、天神2丁目の「福岡天神センタービル」跡地で、野村不動産(株)と(株)竹中工務店が共同で「(仮称)福岡天神センタービル建替計画」を進めている。昭和通りと明治通りに挟まれた敷地で、S、SRC、RC造の地上21階・地下3階建、延床面積約6万9,000㎡のオフィス・商業ビルを建設するもので、外観上の最大の特徴は、敷地内の広場空間や、低層部の壁面・テラスの緑化などによって、都心部に緑あふれる空間を創出する点だ。同ビルの竣工は28年度の予定。ただし、同ビルは、天神ビッグバンのエリア内でありながら、天神BBBの竣工期限に間に合わないことから、天神BBBの認定を受けていない。代わりに受けているのが、福岡市からの「グリーンボーナス」第一号認定だ。このグリーンボーナスについては、後述する。
(つづく)
【坂田憲治】

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