福島自然環境研究室 千葉茂樹
高柴山のブナ「黄金の輝き」
阿武隈山系の山々には、美しいブナ林がある。高柴山では、11月に「真黄色に色づいたブナの林」を見ることができる(画像08)。実に美しい。この時期の「黄色に色づいたブナ林」を楽しみに登山する人もいる。

なお、最近のクマ問題について書く。この付近は、従来「クマは生息していなかった」。2000年ごろから、西側の奥羽山系からクマが移動してきたようで、福島県の太平洋沿岸でもクマが生息するようになった。
私は、04年から高柴山に、年間20回ほど登山している。しかし、クマの気配は感じたことはない。私は、高柴山では「熊鈴なし」で登山する。
イノシシは、「浮金登山道」には生息する。登山道周辺にイノシシが地面を掘った痕跡がある。しかし、牧野登山道にはイノシシはいない。イノシシは、通常は牧野登山口の駐車場より下の、人家に近い方にしか生息していない。その意味では、安心して登山できる。
なお、牧野口からは、登山道と林道があり、山頂まで続く。多くの方は、道幅は広い「林道」を歩くが、路面が固いので、膝を悪くするリスクがある。登山道はU字状にへこんでおり、ここに落ち葉が溜まって「クッション」となっている。膝のためには登山道を歩く方が良い。
登山道が地図に描かれていない
なお、先ほどの登山道を記した地図には、林道は描いてあるが、昔からの牧野登山道は描いていない。この牧野登山道は、江戸期からの登山道と考えられる。しかし、林道が開設されてから、使われなくなったようである。私が初めて登山した04年4月には、藪になっていて通れなかった。しかし、04年秋に有志によって藪が切り開かれて、再開通した。この登山道は、今でも地図に描かれていない。仕方がないので、私は大雑把な登山道の地図をつくり、登山の度に微修正している。最近は、衛星測位システム(GNSS)の電波を受信しながら、さらに精度を上げて修正作業をしている。自分の勘だけで作成した初期の地図では、登山道の位置が最大10mほどずれていた。完成したら機会を見て公表したい。
この山道問題は、高柴山に限ったことではない。有料の登山地図にも、同様の問題がある。かなり前に廃道になった登山道が描かれている、ルートが変わったのに修正されていないなどの問題などがある。
なお、最も登山道を知っているのは、地元に長年住んで、その山を知り尽くした人間である。私は、磐梯連峰の山道・山菜取りの道などは、大抵知っている。しかし、山菜取りの道などは、久しぶりにそこに行くと、藪になっている場合が多い。面白いことに、今はだれも通らない廃道でも、ある時期に大量の人が歩いた道は、今でも局部的に残っている。明治期の道も部分的に残っている。この山道問題は、こちら(PDF)に書いているのでご覧いただきたい。
衛星測位システム(GNSS)とは。GPSは精度が悪い
最新の「衛星測位システム」はGNSSが主流で、一般に言われているGPSはかつてのシステムである。GPSは、今となっては、不安定で精度が悪すぎる。日本の上空にある測位システムの人工衛星は「中国のものが一番多い」。私が使用している機械は、中国からの個人輸入品である。中国の衛星「北斗」の電波も受信し、公称精度は水平が2.5m以内で、私の実測の誤差は水平約4m・高度約5mである。興味のある方は、Google AIに「日本の上空にある測位システムの人工衛星 北斗の数」と入力すると、中国衛星の数が表示される。なお、AIの回答にも注意が必要である。私がAIに聞いた際の、AIの回答「日本上空のGPS衛星数」は、全世界のGPS衛星数で、日本上空の数ではなかった。
スマホの登山ナビはあてにならない。GNSS受信機の表示には癖がある
23日、登山グループと立ち話をした。そのなかで、気になることがあった。それは「前回、登山した際にスマホの登山ナビを見て歩いていたら道を間違えた」というのである。
皆さんは、測位衛星の電波と受信側(GNSS受信機やスマホ)の特性を知っているだろうか。私の経験では、GNSS受信機の表示には癖がある。要するに、登山で「移動中に表示される位置は正しくない」のである。私の経験では、5~10分同じ場所にいないと、正しい位置(緯度経度)は表示されない。
原理をいえば、GNSS受信機は同時に複数の衛星電波を拾い、その情報から位置を割り出す。ヒトが移動している場合、過去の情報(5~10分遅れ)により位置が表示される。だからGNSS受信機に表示される値は、ヒトの数分前の位置である。正しい位置情報を得るには、同じ場所に5~10分とどまる必要がある。
上記のように機械に頼るのは、道に迷う危険性がある。登山の場合、時と場合によっては「命に関わる」。重要なのは、「地図および実際の地形」が読めるようにしておくことである。極論は、「アナログの地形図判読」と、登山者自身の「地形を読む力」である。
この衛星測位システムの受信機の問題は、こちら(PDF)にも書いている。
まとめ
高柴山は、四季によって、いろいろな風情が楽しめる。この山は、5月に「ツツジの花」を見るために、ハイキング気分で登山する方が多い。しかし、これからのシーズンは、ブナ林の黄葉(こうよう)である。「ブナ林の黄金の輝き」を楽しむのも一興である。野生動物の危険も少ないので、のんびりと登山するのも良いと思う。自然を満喫していただきたい。
(了)
<プロフィール>
千葉茂樹(ちば・しげき)
福島自然環境研究室代表。1958年生まれ、岩手県一関市出身、福島県猪苗代町在住。専門は火山地質学。2011年の福島原発事故発生により放射性物質汚染の調査を開始。11年、原子力災害現地対策本部アドバイザー。23年、環境放射能除染学会功労賞。論文などは、京都大学名誉教授吉田英生氏のHPに掲載されている。
原発事故関係の論⽂
磐梯⼭関係の論⽂
ほか、「富士山、可視北端の福島県からの姿」など論文多数。









