阿武隈高原「高柴山」の秋(前)美しい紅色のあじさい

福島自然環境研究室 千葉茂樹

 今回は、阿武隈高原の秋をお伝えする。

 10月15日と23日に阿武隈高原の高柴山(標高884m)に行ってきた。阿武隈高原は、福島県の東部に位置し、東西約50km・南北約170kmの広がりをもつ。高柴山は、その中央よりやや南に位置する。

画像01

 この山は5月下旬に満開となる「ツツジ」が有名である(画像01、02)。山の地形はプリン形で、山頂部には平原が広がる。山頂部では、江戸期から馬や牛の放牧がなされていた。馬や牛は、草は食べるが、ツツジには毒成分があるため食べなかった。このため、山頂部にはツツジの低木だけが残った。現在、放牧は行われていないが、地元の自治体によりツツジの管理が行われている。

画像02

 なお、ツツジの見ごろは、2010年ごろまでは5月25日~31日であった。しかし、近年は5月15日~20日と早まっている。これも地球温暖化のためであろう。ただし、今年は「遅霜」で花芽が枯れてしまい、きれいな花は見られなかった。

 登山シーズンは5月の「ツツジの開花前後」で、それ以外の季節は登山する人は少ない。登山口は3つあり、西側の「浮金口」は穏やかな傾斜で、人気が高い。ゆっくり歩いて1時間で山頂に至る。私は、北東側の牧野(まぎの)口から登ることが多いが、こちらは急こう配で、約50分のコースである。私は40代にはこのコースを30分程度で登っていた。しかし、今はゆっくりと登っている。逆に、ゆっくり登ることで、樹木や草を見たり、鳥の鳴き声を聞いたりしている。この山は小鳥が多く、美声を聞くことができる。毎回、クロツグミの鳴き声を聞いている。こんなことが分かったのも定年退職後の時間の余裕からである。

紅(くれない)色のアジサイの花

 まず、今回の登山での「衝撃的な出会い」から、お話しする。それは、「美しい紅色のアジサイの花」である(画像03)。アジサイの場合、花といわれる部分は「ガク」である。アジサイは、梅雨の時期に「青紫色」や「赤紫色」の花を咲かせる。その後、夏には「緑色」になり、秋には「褐色(茶色)」になる。これが通常である。

画像03

 ところが、今回出合ったアジサイは、何と「紅(くれない)」色であった。私自身もこのような紅色(赤色)のアジサイを見たのは初めてである。まわりの植物が冬支度のなか、「凛(りん)とした美しさ」があった。よく見ると、一部にはまだ「青色」のものもあった(画像04)。なお、この花(ガク)1個の大きさは、約5cmもあり、極めて大きなものであった。通常のガクの大きさは、2cmで大きくても3cmである。

画像04

 自然には、私たちの想像を超える不思議さがある。だから、自然のなかでの散策は楽しいのである。いろいろな山で、いろいろな登山者に会うが、皆さん「登ること」を目的とし、周囲の自然に目がいかないようである。実にもったいない話である。「自然との一期一会」を楽しんでいただきたい。

高柴山の頂からの風景

 画像01のように、この山からは、北方に阿武隈山系の山々が一望できる。東に目を転じれば、鍾乳洞で有名な阿武隈洞があり、星の村天文台(リンク)もある。その近くには、阿武隈山系の最高峰である大滝根山(標高1,192m)もある(画像05)。この山の山頂部には、自衛隊のレーダー施設があり、東日本の監視活動をしている。南に転じれば、蓬田岳(標高952m)もある。その麓には、芝桜やアジサイ園で有名な「ジュピアランドひらた」がある。

画像05

 西に転じれば、すぐ近くに黒石山(標高865m)、その奥に磐梯連峰、その北側に安達太良連峰、吾妻連峰がある(画像06)。吾妻連峰一切経山の火山噴気も見える。手前の黒石山は、良質な黒御影石(ハンレイ岩)の採石場で、山頂部は採石が進み竹串状に細々と残っている。画像の中に鉄塔が見えるが、これはテレビの通信塔で、東京のキー局からローカル局への電波の中継塔である。 

画像06

 さらに、北には蔵王連峰が見える。その手前には、片曽根山(標高719m)、その東には移ヶ岳(うつしがだけ、標高994m)が見える(画像01参照)。北東奥には、日山(別名:天王山、標高1,058m)があり、その東には鎌倉岳(標高967m)がある。

阿武隈山系から富士山が見える。

 阿武隈山系は、富士山遠望の東北端に位置する。上記の山のうち、蓬田岳(標高952m)、移ヶ岳(標高994m)、日山(標高1,058m)、麓山(標高897m)からは、富士山が見える。実は地球が球形のため、単純計算では富士山は見えないのだが、大気差という「浮き上がり現象」によって、単純計算の値より遠方で富士山が見える。大気差を取り入れた計算では、花塚山(標高918m)が「北東側の最遠」となる。実際の撮影となると、地平線上の雲や大気の汚染物質で霞んで見えないことが大半である。

画像07

 画像07は、麓山(別名:羽山、標高897m)から私が09年11月4日に撮影したものである。富士山からの距離は298kmである。私は気象条件を先読みし、前日に勤務先に休暇申請を出し、早朝に撮影に向かった。私の読み通り、撮影日の早朝は「数年に一度の好条件」で、朝日に映える富士山を撮影できた。この写真は、当時「富士山の北東側で最も高緯度(北側)」での実際の撮影写真であった。学術論文にも掲載した(PDF)。また、私の論文などを掲載いただいている京都大学名誉教授吉田英生氏のHPにも貸し出している。

 なお、富士山遠望の「北東側の最遠」にあたる花塚山(918m)では、17年にアマチュアカメラマンにより富士山が撮影された。また、18年には、NHKが4Kカメラで撮影し、NHKのテレビ番組で紹介した。問題は、両者とも「撮影一番乗り」を名乗っていることである。この騒動の原因は、アマチュアカメラマンの映像が「鮮明でない」ことから生じている。私からいえば、アマチュアカメラマンも「もう少し倍率の高い望遠レンズ(超望遠レンズ)」で撮影すべきであった。そうであれば、NHKに一番乗り宣言をされずに済んだ。ちなみに、私が麓山から撮影した富士山は「850mm望遠レンズ」での撮影である。

(つづく)


<プロフィール>
千葉茂樹
(ちば・しげき)
千葉茂樹氏(福島自然環境研究室)福島自然環境研究室代表。1958年生まれ、岩手県一関市出身、福島県猪苗代町在住。専門は火山地質学。2011年の福島原発事故発生により放射性物質汚染の調査を開始。11年、原子力災害現地対策本部アドバイザー。23年、環境放射能除染学会功労賞。論文などは、京都大学名誉教授吉田英生氏のHPに掲載されている。
原発事故関係の論⽂
磐梯⼭関係の論⽂
ほか、「富士山、可視北端の福島県からの姿」など論文多数。

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