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2016年02月05日 11:02

日本経済新聞、「電子版」成功の光と影

business 新聞業界に先駆けた電子版の成功に続き、英国の高級紙フィナンシャル・タイムズを買収して気炎のあがる日本経済新聞社だが、好事魔多し。電子版の普及につれ実売部数は減少傾向にある。販売店主の間には「フィナンシャル・タイムズに1,600億円もつぎ込むのならば、“押し紙”をなんとかしてほしい」と不満がくすぶっている。

 日経は唯一の経済専門紙という特異な地位が手伝って、“新聞離れ”のなかでも比較的堅調に部数を伸ばしてきた。しかも2010年3月に業界に先駆けて、有料のインターネット版である「電子版」をスタート。それまで、媒体のブランド価値向上の宣伝のためとしてネットに無料でニュースを配信していた新聞界が、「有料」に舵を切る大きな転機となった。
 そもそも新聞界には、ヤフーを始めネット業者が十分な対価を支払わず、報道機関のニュースに”ただのり”しているとの不満が長らくくすぶってきた。なかでも唯一の経済紙の日経にとって、他メディアにはない経済ニュースという商品価値の高い情報を、みすみすネット企業に提供するのはもったいないと思ったに違いない。有料化して囲い込むとともにネットには安易に記事供給をしなくなった。賢明な判断だろう。

 ところで日経の主力購読者は大都市で働く30歳~50歳代のホワイトカラー。他の全国紙が60歳以上の高齢者に支えられ、宅配された新聞を自宅で読むのが習慣化しているのと比べると、通勤車中で斜め読みする若手・中堅のサラリーマン、OLの読者が多いのが特徴だ。こうした人たちはITリテラシーがそれなりに高く、電子版が始まるや否や、「たまった新聞紙を古紙回収に出す手間が省ける」などと電子版に乗り換える層が急増。ちょうど2010年にiPhone4、12年にiPhone5が発売されて、スマートフォンの操作性が格段に向上するにつれ、都市住民を中心に紙の日経新聞から電子版に切り替える人が加速度的に増えた。いまや電子版の登録会員(無料)は297万人を突破し、有料会員も45万人にもなる。朝日新聞の電子版である朝日新聞デジタルの有料読者が23万人しかいないことから、日経がいかにダントツなのかがわかるだろう。

 しかし、こうした電子版の普及につれて、落ち込みが目立つのが日経本紙の販売部数だ。2010年の日経の有価証券報告書によると同年の販売部数(国際版を含む)は309万部あったが、14年3月のABC調査では276万部、15年3月の同調査では272万部の漸減している。それだけではない。「本当はもっと落ち込んでいるのですが実売にあわせて部数を切らせてもらえないんです。つまり“押し紙”が急速に増えているのです」と打ち明けるのは、日経を扱っている販売店主だ。同店主によると、日経の押し紙は2011年ごろまではほとんどなかったというが、12年以降急増。「すごい勢いで部数が落ちています」。同店主が日経本社から卸してもらっている部数は約4,000部だが、実際に配達して配っている新聞は約3,000部にすぎないという。実に25%もの新聞が余ってしまい、古紙回収業者に引き取られているのだという。「実売が落ちてきているので部数を切らせてほしいのだが、日経はやらせてくれない」と店主。おそらく公称部数を落としたくないからではないかとみられる。
 もともと自前の販売網を十分に持たない日経は、読売や朝日、毎日、さらには有力な地方紙など他のライバルの販売網に乗っかって新聞を配達してきた。読売や朝日の販売店も、日経の部数が堅調に伸びてくる状況のなかでは異論もなく、むしろ「日経を扱わせてくれ」と積極的なアプローチをしてきた。

 ところが部数が減少し、押し紙が増えると、日経にはうまみがない。「朝日や読売がそれぞれ専売店に卸す価格と比べて、日経は卸値が高いんです。しかも入ってくるオリコミ広告が読売、朝日と比べて少ない。オリコミは販売店にとって貴重な収入源なので、それが少ないということはそれだけうまみがないということなんです。さらに読売や朝日などと違って日経には押し紙に対する販売補助金が乏しい。いわばリベートが少ないんです。だから販売店にとって日経は押し紙がなければ、すごくいい新聞。ですが、押し紙があると、販売店にはまったくメリットがない」と全国紙の販売担当幹部。
 日経の押し紙は全国的に問題になっているようで、日経を扱っている読売や毎日の専売店主が日経本社側に苦情を言っているらしい。ある専売店主は「あまりにも押し紙がひどいので改善を要望したのですが、『だったら他の店に扱ってもらう』と非常に高飛車な態度なので驚きました」と怒って、こう語る。「FTに1,600億円もつぎ込むぐらいならば、押し紙を減らしてほしい」
 好調な電子版とは裏腹に日経の押し紙問題がそろそろ顕在化する時期かもしれない。販売店にはかなりマグマがたまっているようだ

【泰安 洋行】

 
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