グローバル展開へ動き出したWebコンサルティング会社(前)
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(株)ペンシル 代表取締役社長 覚田 義明 氏
独自の研究で蓄積してきたノウハウをもとにWebサイトを分析し、クライアントの売上や成約アップにつなげていく研究開発型Webコンサルティングを手がける(株)ペンシル。ホームページでは、大手企業の通販サイトの売上拡大をはじめ、これまでに達成した数々の成功事例が記載されている。近年は海外支店の設立など、Webコンサルを武器に世界を舞台にした事業展開に乗り出した同社の代表取締役社長を務める覚田義明氏に、創業からこれまで、そしてIT業界で、トップで居続けるための要因を聞いた。
(聞き手:弊社リサーチ事業部副部長・鹿島 譲二)
1つひとつの成果が次の受注へ
――ホームページ(Web)のコンサル会社ということですが、どんな会社ですか。
覚田 そうですね。たとえばライオン(株)さんの場合。オンラインショップを構築してネット販売を行っていたそうですが、3年間売上が低迷していたそうです。そこで、ペンシルに依頼があり、Webコンサルティングを行いました。サイトを分析して問題点を発見し、改善するレポートを提出しました。その後、一緒に実行に移し、実施後は効果検証を行い、問題があれば再度提案を行っていく。上手くいくまで粘り強くサイト改善を続けました。細かな改善を重ね、1年目で売上をそれまでの10倍に上げました。2年目に大幅なサイト改善であるサイトフルリニューアルを行い、取り扱う商品を増やし、さらに10倍増の売上に結びつけることができ、2年間で100倍の売上アップになりました。結果として6年間で1,500倍の売上アップに導くことができました。
――御社のホームページには、ライオンさんをはじめ数々の成功事例が掲載されていますね。最初の躍進のきっかけは、(株)ふくやさんですか。
覚田 そうです。当時、マーケティングや分析をしており、ユーザーの検索回数の多いキーワードなどを調べていました。すると、「特産品」という言葉ですごく調べられている、ということがわかりました。
インターネット上でそんなに探されているのであれば、特産品に関するホームページをつくったらいいのでは、と。福岡で特産品といえば、明太子。明太子といえば、日本初の製造、販売を手がけられたふくやさん。それまで面識はなかったんですが、ご紹介をいただき、訪問させていただきました。――その頃には、自社サイトを持たれていたんですか?
覚田 ええ。ネットで販売をされていて半年間で3個売れた、という状況だったそうです。本来であれば、ホームページのフルリニューアルを提案するところですが、売れていない理由が解りませんでしたので、いったんリニューアルはやめましょうと伝え、その代わりにWebマーケティングを提案したんです。明太子が消費者にどのくらい浸透しているのか、どんな明太子を食べたいのかといったことをまず把握してから着手しようと。質問を16問、名前や住所、電話番号などをセットにして回答していただくというアンケートを用意し、応募していただくと明太子が当たる、というキャンペーンにして明太子が好きな人を集めていきました。
すると、月間5,000人ほどのアンケート回答があり、ネットであればどんな商品を提供すればよいのか、20~30代の若い人向けの明太子の開発など、段々見えてきました。そのマーケティングデータをもとにネット専用商品を開発していただいて、受注生産方式で売り出しました。一般向けに販売するのではなく、アンケートに答えていただいた方を対象にしたクローズドページでの限定販売としました。大幅に売れてその手応えを感じました。――どれくらいの成果がありましたか。
覚田 キャンペーンを毎月実施し、アンケート回答は1年間で4~5万人だったと思います。そのなかで「明太子をネットで購入したい」という声が大きくなってきたので、次の年にホームページのリニューアルに踏み切りました。「明太子ミュージアム」というネット上での明太子の博物館のようなホームページも併せてつくって売り出しました。その結果、1カ月で1万個の明太子が売れ、売上は単月で1億円に達しました。これが1997年のペンシルのダイレクトマーケティングの成功事例ということになります。
――この成功事例から発展していったと。
覚田 ふくやさんの社長が本当にすごい方で。その成功事例を発表して良い、と言っていただいただけでなく、その成功事例を福岡の人に知ってもらおうと、地場中小企業経営者の方々が集まるセミナーの講師に私を呼んでいただきました。ふくやさんの社長もその場にいらっしゃっており、そのセミナーでも太鼓判をいただきました。
ホームページにふくやさんの事例を掲載する許可もいただくことができまして、そこからキューサイ(株)さん、(株)三好不動産さん、お仏壇のはせがわさん((株)はせがわ)、とご縁を次々にいただきました。
そうして、1社1社成功に導き、掲載許可をいただいたものを次々にホームページに成功事例として掲載していきました。そうしたところ、ある日オムロン(株)さんからお問い合わせをいただきました。地場を中心とした活動をしてきたなかで、全国規模の企業のWebコンサルはこれが初めてでした。――こちらでも成果を上げられた。
覚田 今ある企業サイトではなく、ある1つのサービスに特化した独立型のサイトをつくることを提案し、承諾をいただきました。また高い目標を掲げたのですが、結果的に目標の1.4倍の資料請求数を達成することができました。何よりも大きかったのは、ペンシルのノウハウが全国的にも通用するということがわかったことですね。
――その頃に、東京からの受注を受けるようになり始めたのですか。
覚田 はい。2003年には(株)リクルートさんと業務提携し、次世代SEO(サーチ・エクスペリエンス・オプティマイゼーション=検索体験最適化)の共同研究に着手しました。内容としては、インターネット上の膨大な情報・データのなかから、利用者がいかにして探している最適なサービスにたどり着けるかを調べるもので、8年間研究を行いました。
そして、その共同研究発表の場にライオン(株)さんが来ておられたことがきっかけで、先ほどの通販サイトのWebコンサルのご依頼をいただいたんです。――1つの成果がさらなる受注に、というかたちで実を結んでいますね。
覚田 はい。実はふくやさんを成功させた後から、ほとんど営業をしておりません。こういったペンシルの成功事例が知られることで、クライアントからの直接の問い合わせや紹介を次々にいただけるようになりました。本当にありがたいことです。
(つづく)
【文・構成:吉井 陸人】<COMPANY INFORMATION>
代 表:覚田 義明
所在地:福岡市中央区天神1-3-38
設 立:1995年2月
資本金:5,200万円
TEL:092-515-1000
URL:http://www.pencil.co.jp/<プロフィール>
覚田 義明(かくだ・よしあき)
1995年に研究開発型Webコンサルティング会社『ペンシル』を設立。分析を強みとしライオン、カゴメ、江崎グリコ、リンナイ、全日本空輸、日本ベリサイン、など多くの企業のWeb戦略を成功に導く。2014年、サンフランシスコオフィス、15年に台湾オフィスを設立。14年にシリコンバレーに米国独立法人Pencil Inc.(ペンシルインク)を設立。関連記事
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