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2016年02月25日 07:03

日本伝統文化を凌駕するマンガ・アニメの人気!(3)

マンガ研究家・翻訳 グザヴィエ・エベール氏

日本マンガ・アニメの卓越した表現方法に興味

 ――前回、フランスには「オタク」はとても少なく、「萌え」の文化は再生産されていないというお話は興味深かったです。ところで、グラヴィエさんにとってマンガ・アニメとは何ですか。パリ第7大学大学院の博士課程で「日本の漫画」を専攻し、千葉大学大学院では「漫画の物語理論」で博士号を取得されています。

パリで開催されたジャパンエキスポ<

パリで開催されたジャパンエキスポ

 グザヴィエ それは難しい質問です。しかし、一言で言えば、私は日本マンガ・アニメの卓越した表現方法にとても強い興味を覚えています。私は子どもの頃から現在まで、自分でもマンガを描いてきました。その経験から言うと、日本マンガのテクニックはすごいということが、肌感覚でわかります。今はマンガの世界もかなりデジタル化されてきましたが、やはりそれでもかなり違います。たとえば、専門用語で言えば「コマ割り」などのテクニックがすごいです。読者がページをめくる際にストレスを感じることなく、期待感を持って読み進めることができる工夫が至るところになされているのです。

日本マンガ・アニメは、冒険的で大胆さがある

 日本のマンガ家の描く手順やペンの使い方、描くスピードや彩色の方法などにも特徴があります。そして何と言っても、その物語性が際立っています。とくに手塚治虫は、私の研究対象になりますが、本当に素晴らしいです。
 私はそんな魅力のある「日本の漫画」を研究したかったのです。フランスのバンド・デシネ(BDはアート的色彩が強く、世界の漫画や芸術にも影響を与えている点では素晴らしいと思います。しかし、その物語性を比べると、日本マンガのほうがより冒険的で、大胆さを持っています。バンド・デシネの物語は、どちらかと言うと予定調和的な傾向にあります。

「人生とは何か」、「人間とは何か」を追求する

 ――グラヴィエさんは、たいへん多くの日本のマンガ家のなかでも、「手塚治虫」を研究対象にしています。それはなぜですか。とくに好きな作品はありますか。

 グラヴィエ 私は子どものときから日本マンガに興味がありました。当時はフランス語版がなかったので、まずは個人で日本語の勉強を始めました。そのうち、個人ではもの足りなくなり、パリ第7大学の東洋言語文化学部日本語科に入学しました。大学院の修士論文としては「日本の漫画」を専攻し、主に手塚治虫研究をしています。

左からグザヴィエ氏とセドリック氏(トキワ荘跡地にて)<

左からグザヴィエ氏とセドリック氏
(トキワ荘跡地にて)

 手塚治虫の作品は小さい頃から読んでいましたし、日本で「マンガの神様」と言われ、一番人気があることを知っていたからです。彼はそれまでの日本マンガの概念を変え、数々の新しい表現方法で、ストーリーマンガを確立し、マンガを魅力的な芸術としました。
文学や映画を始め、あらゆるジャンルに影響を与えています。同時に、アニメーションにおいても、漫画におけるそれと優るとも劣らない大きな足跡を残しています。とても魅力的な人物であると思います。

 私が手塚作品のなかで、一番好きなのは『火の鳥』です。これは手塚治虫のライフワークとも言える作品です。古代から未来まで、地球や宇宙を舞台に生命の本質・人間の業が手塚治虫の独特な思想を根底に描かれています。物語は、「火の鳥」と呼ばれる鳥が登場し、火の鳥の血を飲めば、永遠の命が得られるという設定になっています。主人公たちは、その火の鳥と関わり合いながら、悩み、苦しみ、闘い、残酷な運命に翻弄され続けるわけです。作品は、壮大なスケールで、「宇宙編」「未来編」「鳳凰編」など複数の編から成り立っています。
そのなかでも、私が一番好きなのは「未来編」です。ここでは、「人生とは何か」「人間とは何か」などという命題を追求しています。非常に哲学的な内容です。マンガの作品で、このような深いテーマを扱ったものはなかったので、とても衝撃を受けました。ある意味、神秘的でさえあります。

手塚治虫に縁のある名所・旧跡を訪問できた

 ――なるほど、たしかに手塚作品はある意味、神秘的なものも多くありますね。ところで、今回の来日は7年振りです。どのような感想をお持ちですか。

 グザヴィエ 今回は、漫画家のセドリック・チャオと一緒に来日しました。大阪の「宝塚市立手塚治虫記念館」、東京・豊島区の「トキワ荘跡地」、「手塚治虫の墓」など手塚治虫に縁のある多くの名所・旧跡を訪問しました。また、多くの大学の研究者、新聞、出版界の人などにお会いし、意見の交換ができ、とても有意義な訪日であったことを感謝しています。とくに手塚治虫に縁のある「トキワ荘跡地」他その界隈の散策はとてもよかったです。同じ界隈に、手塚治虫を始め石ノ森章太郎、赤塚不二夫など日本マンガ・アニメの礎を築いた漫画家が10人以上住んでいたことは驚きに値します。トキワ荘跡地では記念撮影、トキワ荘の住人が通った「松葉」ではラーメンを食べることができ、最高の1日でした。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
xhグザヴィエ・エベール(Xavier Hebert)
1966年フランス・ノルマンディー生まれ。パリ第7大学大学院(Denis Diderot)東洋言語文化学部日本語科博士号前期課程研究免状(DEA)取得「日本の漫画」(1997年)、千葉大学大学院社会文化研究科都市研究専攻
博士号取得「漫画の物語理論」(2002年)
パリのマンガ専門学校Eurasiam教員(日本マンガの分析及び実践を指導)。日本マンガに関する論文・寄稿多数(手塚治虫研究、漫画における視覚的物語手法)。日本マンガの仏語翻訳(手塚治虫、黒田硫黄、五十嵐大介、高浜寛など)。グレナ(GRENA-ソルボンヌ大学・マンガ研究者グループ)会員。

 
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