2024年04月19日( 金 )

小倉・魚町銀天街から始まるリノベーション活動(2)

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 前回は、小倉魚町銀天街の全体通行量が回復基調にあることを、最新データを使って紹介しました。
 この通行量という指標は、小倉地区中心市街地活性化計画(中活)の成果指標の1つです。
 それ以外の指標は、他に3つあってその達成状況を下表に示します(資料は、前回紹介した「認定中心市街地活性化基本計画の最終フォローアップに関する報告」2014年5月、北九州小倉地区)からです。全体通行量の数字は、前回の数字の方が最新です。

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 これによると、大規模商業施設の年間来店者数だけがC評価、つまり「計画した事業は概ね予定通り進捗・完了。一方、最新の実績では目標値および基準値にも及ばなかった」状況にあります。
 大規模商業施設の年間来店者数は、既存の大規模商業施設である井筒屋小倉店、コレット井筒屋、リバーウォーク北九州などと中活事業で新規に計画実現した大規模商業施設「小倉駅北口商業ビル(ラフォーレ跡)再生事業」や「北九州市漫画ミュージアム整備事業」「魚町3丁目複合商業施設開発事業(クロスロード)」などの年間来店者数の合計値です。これが基準値に達しなかったのです。
 未達の要因は、期間中に計画の実現はおろか、着手さえもできなかった2つの大型事業の影響が大きいです。その2つの事業とは「チャチャタウン小倉2期開発事業」と「旦過第一地区市街地再開発事業」です。それぞれ、1日あたり1万360人(年間約400万人)、1万6,550人(年間約600万人)を見込んでいたわけですから、この事業が着手・完成されなかったのは、目標達成に対して大きな影響を与えました。
 これ以外の3項目は目標値には届かなかったものの、基準値はクリアしており、この厳しい社会経済環境のなかにあって善戦したと言えましょう。
 さて、このような中活事業の全体的な成果のなかにあって、中活事業の対象になってはいないにもかかわらず一際異彩を放つのが、今回のリノベーション活動の舞台となる中屋興産ビルおよびその周辺エリアでの活動です。
 話は、10年、中活事業の初期予定期間のちょうど中間年のことです。既述のように、この年に筆者は中活協議会のタウン・マネージャーを担っていました。筆者は、いかにして小倉中心部の活性化を図るかについて協議会のメンバーの方々と知恵を絞っていました。
 そんなときに経済産業省の「中心商店街区再生に係る調査・研究事業」による「魚町サンロード・カルチェラタン構想」という提案書を見る機会がありました。これは、北九州まちづくり応援団株式会社を経由して10年2月に提案されたものです。この要点をまとめますと、

・(人口・世帯数、商業力の分析を加えたうえで)大型商業施設の閉鎖等で若者の市外流出(とくに福岡市への)が進んでいる。
・大学・専修・専門学校等の学生(高専・高校生除く)が約3万2,500人いる。
・これら学生が中心市街地で楽しめる場所は少なく、福岡や周辺SCへ流出している。
・個性的なカルチャーを欲する学生をターゲットに、若者が魅力と感じる街区再開発を進め、中心市街地に新たな賑わいを創出する。
といったことでした。

 このようなことから、「若者が楽しめる街、若者と一緒に賑わう街」を目指すとしており、「若者主体の次世代商店街業態構想」を掲げています。
 魚町サンロード商店街は、メインの魚町銀天街とモノレール平和通駅に挟まれた商店街であり、空き店舗の多い商店街ですが、なかには若者向けに特化した店舗も散見されていました。しかも、近くの旦過市場周辺には映画館があり、若者向けの飲食店も集積しつつある状況でした。さらに、同報告書では、「周辺の商店街との不動産賃料水準と比較すると、家賃が低く1万~1.5万円の相場となっている」との指摘もあり、低賃料水準からこのエリアが若者拠点になり得るとしています。そして、具体的には「学生を居住させる家守制度(詳しくは次回)とカウンターカルチャーを集積した若者向けのショップを組み合わせた商店街の新業態を提案する」としており、「魚町サンロードと大型専門店空き区画を合体して、若者が集う自由区『サンロード・カルチェラタン』として開発し、まちづくり応援団が一元管理をする」とも記述しています。その後段には具体的な店舗構成などにも触れています。
 実は、このことは筆者が小倉中活での日々の活動から実感したものであり、私の活性化プランにも記述していたのでした。

(つづく)

<プロフィール>
100609_yoshidaM&R 地域マーケティング研究所
代表:吉田 潔
和歌山大学国際観光学研究センター客員研究員、西日本工業大学客員教授、福岡大学商学部非常勤講師

 
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