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2016年11月02日 10:41

小倉・魚町銀天街から始まるリノベーション活動(6) 地域づくりにマーケティング発想を! 

 小倉魚町銀天街に立地する中屋ビルのリノベーション活動が始まります。
 中屋ビルは、鉄筋コンクリート造り5階建て部分と、すでに老朽化したと言ってもいいような木造2階建て部分とで成り立っています。嶋田氏は、この木造部分のリノベーションに着目します。その発想の根本には、次のような記述があります。

 「(北九州市は)産業構造の変化によって雇用が失われ、消費も落ち込んだ。それが商店街の衰退の根本的な原因であると、清水さんは説いていた。だからこそ商店街で雇用を生み、それを空き家の再生と重ね合わせる。そうやって産業を振興しコミュニティを再生するというビジョンだった」(前掲書より)。

 先に紹介した小倉家守構想の推進者清水義次氏の説く視点が、嶋田氏の発想の原点にあったとみてよいでしょう。

「メルカート三番街」の開業

新装になったメルカート三番街内部<

新装になったメルカート三番街内部

 ヤンキーのたまり場になっていた中屋ビルの木造部分を、若い起業家・クリエーターの拠点にしようというのです。嶋田氏は、まず入居者の条件を35歳以下と設定します。ここから入居者探しが始まります。SNSを使ったり、まわりの人たちに紹介を頼んだりといった活動を行います。

 そうすると、努力の成果は出るもので、情報や人がつながり始めます。結果的に、フラワーデザイナー、ハンドメイドの服飾雑貨作家、グラフィックデザインのユニット、カフェ経営者(これは女性経営者で、何と筆者が北九州市立大学の大学院MBAでマーケティング戦略の講義を担当していた時の受講生)、そして「水玉食堂」という昭和レトロな水玉食器のコレクターの女性経営者、さらにはウェブメディアである「小倉経済新聞」などの入居が一気に決まります。たった、2カ月でテナントが埋まったのです。とくに、ウェブメディアなどは情報発信にとって、このうえないテナントです。

 さあ、これまで朽ち果てた感じの店舗が一気に明るい店舗集積に変化しました。2011年6月、「メルカート三番街」(写真参照)の誕生です。

「フォルム三番街」の開業

 この同時期に、空きフロアであった中屋ビルの4階に「フォルム三番街」もオープンさせます。これは、中屋ビルの10人乗りエレベーターをギャラリーに見立て、若いアーティストに開放する。そのことをきっかけとして、空きフロアであった4階を若いアーティストの拠点にするというものです。“シェアアトリエ”と言っています。詳細は省略しますが、見事な仕掛けです。

 失礼ながら廃墟のようになっていた商業スペースを、数カ月のうちに見事によみがえらせた実績は、大いに評価できると思います。これらの活動実績を踏まえて11年7月(資料によって開催月に違いがある)に、いよいよ「リノベーションスクール」を開催します。時系列的に記述すれば次はこのリノベスクールの内容ということになりますが、このシリーズのテーマが「リノベスクール」であり、一番大事な点でもあるので、これは次回以降にお話します。

「ポポラート三番街」の開業

区画割りされたポポラート三番街内部<

区画割りされたポポラート三番街内部

 時は10カ月経過し、12年4月に中屋ビルの2階に「ポポラート三番街」がオープンします。この開発コンセプトが大変面白いのです。「手づくり作家たちのシェアアトリエ」です。150坪ほどの大きなスペースを、しかもビル2階を丸ごとテナントリースするのは、大変難しいのは経験済みです。
 そこで嶋田氏は、先のメルカート三番街に入居した手づくり服飾雑貨屋さんを見て思いつきます。「こういう作家さんが、実はたくさんいるのではないか」と。北九州市内各地でフリーマーケットが盛んに行われており、数百人もの作家が出店などかなり盛り上がっているという情報に接します。

 ここから、あらゆる手でこのような巷の作家さん探しが始まります。しかし、「小倉のまちにはクリエーターはいないのでは?」といった声が耳に入ります。しかし、違うのです小倉では、クリエーターはいかにもクリエーターですという顔をしてまちを歩いていない。「そう、クリエーターはまちではなく家にいたのだ」。趣味の時間を家から町に引っ張り出してきて、それを仕事として成立させる。そういうことに気づいたわけです。
 こういう人たちに、家賃は小遣い程度5,000円から1万5,000円くらいに設定し150坪を区画割します。家賃1万円の入居者が40人集まれば、月40万円の家賃収入が見込めます。リノベーション事業としては、2年間くらいで投資回収が見込める、というような見込みが立ったわけです。

 こうして「ポポラート三番街」も開業にこぎつけます。まさに見事な発想、事業展開だと思いませんか。これだと、雇用は生む、ビルは再生する、収入も安定する、安定した収入は再投資に回せる、というわけです。

(つづく)

<プロフィール>
100609_yoshidaM&R 地域マーケティング研究所
代表:吉田 潔
和歌山大学国際観光学研究センター客員研究員/西日本工業大学客員教授/福岡大学商学部非常勤講師

 
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