2024年03月29日( 金 )

次世代へ会社を継承させる「浸透する経営理念」とは

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シーエススチール(株)

 そもそも「経営理念」とは何なのか。企業にとって不可欠なものなのか、という疑問を抱いている経営者も、少なくないのではないだろうか。シーエススチール(株)の松原照明社長は、「理念成文化3次元(ASSY)プログラム」を提唱し、立体的な経営理念の作成方法を説いてきた。「理念浸透感動塾」を主宰し、業種・企業規模を問わず、さまざまな経営者にその考えを指南してきた。今までに類を見ない立体的な経営理念を提唱する松原氏に、経営理念の在り方、そして理念を浸透させる方法について聞いた。

(聞き手:弊社執行役員・鹿島 譲二)

「浸透する理念」を創る

 ――まず初めに、なぜ「経営理念」が必要なのでしょうか。

 松原 事業の継承には、経営理念が必要不可欠だからです。極端な話、「自分の代だけ儲かればいい」「この代で会社を潰してしまおう」という考えの会社なら、経営理念はいりません。世の中には、経営理念がなくても財務的に潤っている会社、経営理念があってもうまくいってない会社があると思いますが、会社を後世に残すためには、必ず経営理念が必要になります。

 ――会社を次世代につなげるための指針となるのが、経営理念というわけですね。

 松原 もちろん、今現在、在籍している社員を同じベクトルに向ける、経営の主軸にするという役割もあります。けれど、やはり一番は、その会社の在り方を次の経営者に伝えるためにあるのだと私は思います。たとえば、経営者の方は今後の会社のために土地、お金、株といった目に見える財務面での資産を残したいと思うでしょう。それと同じで、技術や社風といった目に見えない資産も残していく必要がある。それら最たるものとして経営理念があるんです。

 ――経営理念を創るうえで、一番大切なものは何でしょうか。

 松原 それが「浸透する理念」であるか、ということに尽きます。いくら理念を創ろうとも、平面的な言葉で外枠を取り繕ったような理念ではうまく浸透しない。浸透しない理念など、ないものと同じです。だからこそ、理念浸透感動塾では「理念成文化3次元(ASSY)プログラム」を基に、「浸透する理念」を創り、社内に浸透させること目的としています。

経営理念を創る3つの軸

 ――「理念成文化3次元(ASSY)プログラム」とはどのようなものですか。

シーエススチール(株) 松原 照明 社長<

シーエススチール(株) 松原 照明 社長

 松原 簡単に言えば、経営理念を作成する際にX軸、Y軸、Z軸の3つの軸に沿って立体的(三次元)に理念を練っていこう、という考え方です。
 まず、X軸は、経営者の思いや願いに関する7つの要素で構成されています。(1)何のために経営しているか、(2)会社の固有の役割は何か、(3)大切にしている価値観・人生観、(4)顧客・取引先・仕入先に対する基本姿勢、(5)社員に対する基本姿勢、(6)地域社会や環境に対する基本姿勢、(7)ワクワク・ドキドキ感動すること(夢・希望・幸福)。(1)から(6)の項目に当てはまる理念を持つ企業はたくさんありますが、(7)まで満たしているところはあまりありません。
 Y軸はコミュニティー図になります。ステークホルダー、すなわち(1)社員、(2)仕入先、(3)お客様、(4)金融機関、(5)公共・地域社会、(6)出資者の6方面からの自社の姿を見つめ直し、理想の企業像を導き出します。また、ギブアンドテイクの相互関係がきちんと成り立っているかを見直し、バランスの良い関係が保たれるよう理念に反映します。
 そして、Z軸。この軸は「創業者の思いと計画、構想、社員の夢や願望が実現できる企業像を次世代に示すもの」です。本来ビジョンとは現在から未来に向けてのものですが、我々の場合はまず過去に立ち返る。

 ――“創業の原点に戻る”ということでしょうか。

 松原 そうです。今後、会社を永続させていくためには後継者から「継ぎたい」と思われる会社をつくらなければなりません。人が継ぎたいと思う会社はどんな会社か。たとえば、具体的な営業成績に焦点を合わせる会社があります。もちろん、社員の士気を高めると言った点ではそれも良いでしょう。けれど、数字の目標さえクリアしたら良いのか、数字が良ければ次の人が継ぎたいと思う会社なのか―そう考えてみると、必ずしもイコールではない。
 原点に返れば、必ず「こんな会社を創りたい」と初代が強く思ったその理由に行きつくはずです。それをちゃんと理念に組み込めば、次の人が継ぎたいと思える会社がつくれる。過去・現在・未来、そのすべての要素を融合させたものが、良い経営理念になります。

理念を「伝導」させていく

 ――理念がなかなか浸透しないという話が多く聞かれます。経営理念はどうしたら浸透しますか?

 松原 塾生のなかでも、素晴らしい経営理念を創ることはできても、浸透の段階で躓く人が大勢います。そういった人たちに共通しているのが、「従業員と価値観が共有できていない」ということです。

 ――価値観が共有できていない、とは。

 松原 たとえば理念のなかに、「豊かな生活」という言葉があるとします。けれど、「豊かな生活」は、人によって思い描くものが変わってきますよね?私にとっての豊かな生活だったとしても、他人から見たらそれは貧しい生活かもしれない。そういった、いわゆる価値観のズレによって理念が正しく伝わってない場合がある。なので、塾生の方には「必ず理念は噛み砕いて説明してください」と助言しています。「こういう事例がこの理念に当てはまるよね」と具体的に細かく説明していくことで、社員も理念の具体的なイメージを持ちやすくなる。

 ――理念浸透感動塾では、理念を伝えていく責任者のことを「伝導師」と呼ばれていますね。

 松原 これは、私も塾を始めてから気付いたのですが、理念は「浸透」するものではなく正しくは「伝導」させていくものだったのです。
 当初は、理念は液体のごとく、全体へ染み入るように広がっていくものだと思っていました。けれど、理念は熱と同じだった。人と人とが握手をしたときに体温が伝わるのと同じで、そうやって1人ひとりの交流のなかで伝わっていくのが理念なのだと気付きました。社内に伝導師を1人つくり育てることから始まるのです。

 ――松原社長の今後の目標は、何ですか。

 松原 1人でも多くの経営者の方に「理念成文化3次元(ASSY)プログラム」を伝え、素晴らしい経営理念を持った会社をたくさん生み出すことです。各会社に経営理念を伝える伝導師がいるように、私もまた自分自身が「経営理念の在り方を伝える」伝導師だと思っています。

<COMPANY INFORMATION>
代 表:松原 照明
所在地:福岡県糟屋郡粕屋町大字大隈707-7
TEL:092-939-1110
須恵工場:福岡県糟屋郡須惠町大字植木157-2
TEL:092-935-9950
設 立:1992年4月
資本金:2,500万円
URL:http://www.cs-steel.com

 

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