2024年04月28日( 日 )

九州古代史を思う~「倭奴国」から「日本国」へ(8)

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「魏志倭人伝」を読み説く(4)

 「魏志倭人伝」に書かれた内容を踏まえて、現在に相応するだろうと思える地点を巡ってみます。

 帯方郡(現在のソウル近郊)より船で韓国を南下し、狗邪韓国(現在の木浦近郊)を経て、対馬に渡り、壱岐を経由し、佐賀唐津周辺の末盧国に上陸し、伊都国に至ります
 唐津から、海沿いで加布里へ。そこから海沿いの現在の国道ではなく、山沿いに古道があることをご存じでしょうか。現在は西九州道と交差している道路、豊臣秀吉も朝鮮戦争時に通った道です。唐津から加布里~糸島~日向峠~早良~博多~香椎~青柳~赤間~折尾~八幡~門司へと続く道、「古々道」と呼ばれている現在の唐津街道がそれです。
 私は、古代史に興味を持ち始めたときから、唐津方面に行き来するときは、海沿いの国道は通らず、早良から日向峠越え、加布里への山沿いの古々道を通り、三雲・平原の遺跡群、怡土城・神籠石などがある伊都国を、古代の国を想像しながら移動するのが好きでした。

 「使者が常に留まる所なり」、「卑弥呼は誰とも顔を逢わせず、1人の男子がすべてを伝達する」と倭人伝に記されています。ということは、中国の使者はこの地で倭国側と面談し、これより各地については倭人側から聞いた方角と、距離を記した物ではないかと考えられます。

 「ここ伊都国から東南へ百里行けば奴国があり、東に百里で不弥国。不弥国から南の投馬国に至るには、水行二十日。不弥国から南、隣接する所に「耶馬壹国」に至る、女王が都とする処なり」、「女王の位置する所は、都を出発して、水行する事十日、陸上行く事を合わせ一月程かかる所だ」とあります。
 この方法で、伊都国から各地を連鎖式に考えるより、伊都国を起点として放射線状に考えてみると、筑紫・筑後が見えてきます。三雲・平原遺跡群を出発し、日向峠を越えれば、早良盆地・吉武高木遺跡群に至ります。東南方向に行けば奴国、須玖岡本・那珂、御笠川~那珂川地区には、数々の古墳群が点在します。春日市の丘陵地区は、吉野ケ里遺跡と同じように土器・甕棺などが多数露出していて、新幹線車両基地建設にともなって開発発掘されました。東行すれば不弥国、板付遺跡群・金の隈古墳近郊。南は「邪馬壹国」に至ります。邪馬台国は女王が都としている所です。

 「景初二(238)年六月、倭の女王、皇帝に謁見して朝貢したいと、魏の都、洛陽に使者を送る。その年十二月、皇帝は詔を倭の女王に答え、「親魏倭王」の金印と紫の綬(官位を表す組みひも)を授ける。使者には、「率善校尉」に任じ、銀印青綬を与え帰還させる」。
 「邪馬台国」の所在地は何処なのか。また、近畿天皇家を首と仰いでいたのでしょうか。いいえ、邪馬台国は明らかに中国の属国の立場を取っています。また、文中の記述から、北部九州を出ることがないことが見えてきます。
 これでも近畿天皇家の地方出先機関とされるのを信じますか。明治新政府から現代の政府・文科省が「万世一系」と唱え続ける天皇制が、そもそもの間違いです。古代九州は中国の属国で、中国の意向で統治せよと、都督府の官職をもらって、7世紀に倭国最後の五王まで、中国の国書に記載されているのです。

 風水思考を重んじる徐福が作り上げた国は、食料を得るための平野、気候の山脈、作物を作る水、前面に筑後川、背後に背振山脈、肥沃な佐賀平野を有する吉野ケ里。徐福、平原広沢を求め帰らずの地です。魏志倭人伝に記載されている「邪馬台国」は、吉野ヶ里を起点とした筑後~筑前・太宰府領域にあったと思います。久留米の高良山、八女にある磐井遺跡、太宰府を囲むように築かれた水城、北部九州から瀬戸内地方に見られる神籠石群、どれも古代日本にとって大きな意味がある物ばかりでしょう。

 卑弥呼が親魏倭奴王の「金印紫綬」を授かるときに、随行使者に「銀印青綬」を与えているのです。従来の学者の皆さん達は、このことを故意に失念されているのでしょうか。明らかに「金印」「銀印」の使い方が判明しているにもかかわらず、田舎の小国である筑紫に都があったことにするわけにはいかないとの思いで「漢の属国である倭国のなかの奴国の王に授ける」と、「~の~の」を入れる論法。
 また、現在の学校教育では、古代人は文字さえ知らない空白の時代が続き、初めて7世紀に「聖徳太子」が、仏教・法律制度などを制定すると教科書で述べられている。
 「古代の日本には中国の属国である倭奴国の倭人が住み、歴代中国に使者を送り、漢字・仏教などの文化面の影響を受けていた」と、本当のことを言えばすっきりすると思います。何度も言いますが「万世一系」を採る日本国には永遠に無理でしょうが。

(つづく)
【古代九州史家 黒木 善弘】

 
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