2024年10月07日( 月 )

一級建築士免許裁判、残された「構造設計一級建築士」の疑問(中)~仲盛昭二氏

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混乱する現場、国主導による法令違反の可能性

 ――現在、免許取消処分の取消を求める訴訟の控訴審が行われていますが、構造設計一級建築士だけ有効で、一級建築士免許だけ取り消されたという“いびつな状況”に関して、執行停止などの仮処分は申請されなかったのですか?

免許取消処分通知

 仲盛 免許を返納する前に構造設計を行った物件には、いまだ建築中の物件や、工事完了を迎える物件もあります。建築には設計変更が付き物であり、工事中、大なり小なり変更が生じるので、軽微変更や計画変更の手続きが必要になります。構造に関する部分の変更手続きには、その物件の構造設計者の変更検討や見解が必要になります。しかし、私の一級建築士の免許がなければ、変更手続きが滞ってしまい、建物の工事完了検査を受けられず、建物を使用できないという深刻な事態となってしまいます。

 このような混乱を防止するため、控訴審にあたり、昨年9月に執行停止の申立を行いました。すでに半年が経過しようとしていますが、いまだに執行停止について、イエスともノーとも決定されないので、いくつもの工事完了物件において弊害が生じています。なお、現在審理中である控訴審は、5月30日に結審となることが決定しました。

 ――工事業者や施主は困っているのではないですか?

 仲盛 建物の引渡しができなければ、施主から施工業者への工事費の支払いにも影響を与えるので、大問題となっています。完了検査を担当する建築確認機関も板ばさみになり困っています。私が構造設計者であった某マンションでは、施工途中で壁の変更などがありました。完了検査を受ける前に軽微変更届を提出するために構造の検討を、元請設計事務所から依頼され、検討書を作成しました。軽微変更手続きの提出を受けた民間の建築確認機関は、私の構造検討が添付された変更手続きを受理すべきか結論を出せず、国に相談し、相当長い期間協議をされた挙句、「変更はなかったこととして処理をする」と、確認機関から元請設計事務所を介して通達がありました。

 このような処理をせざるを得なかった事情があるのかもしれませんが、法律に触れているように思えます。確認機関が国に相談をしたうえでの決定ですから、確認機関は国からの指示に従っているはずです。国主導で、法令違反を行っている可能性が極めて高いと言えます。調べてみてはいかがでしょうか。

 私は、民間の建築確認機関を否定している訳ではありません。建築確認業務が民間に開放されたことにより、行政による建築確認審査とは比較できないほど、審査のスピードは格段に速くなり、審査内容も厳格になりました。民間の確認機関の担当者の方は非常によく勉強もされており、担当者レベルでの法的・工学的な「イエス・ノー」の判断も明確です。ただ、今回の問題のように、国に判断を仰いだ場合、国の指導に従わざるを得ないということです。

(つづく)

 
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