2024年04月28日( 日 )

予算案スピード通過~財政は野となれ山となれ!(3)

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参議院議員 藤巻健史氏

GDPはほぼ同じで借金だけが3倍に増えている

 ――先生は1990年代から「日本の財政危機」に警鐘を鳴らされています。昨年末には
『国家は破綻する「日本は例外」にはならない!』(幻冬舎)を著されました。その思いを教えて頂けますか。

 藤巻 私は日本の財政危機を20年間言い続けています。最近は同じ様に警鐘を鳴らす著名な経済学者や財政学者の方も増えてきました。現実はどんどん悪い方向に進んでいます。しかし、幸いにも私が心配している事態にはまだ至っていません。今後のことですが2つの見方ができると思います。1つは今年も幸いに何も起こらないこと、もう1つはもう20年も経ったので、そろそろ財政破綻・ハイパーインフレが現実に起こってしまうこと、です。いずれの場合でも、冷静に現在の財政状況を国民がよく理解してその時に備えることは必要です。備えあれば憂いはありません。迫りくる危機のために、多くの読者に現実を知って欲しかったのです。

 1997年11月に「財政構造改革法」ができました。同法案の第2条には、はっきりと「日本の財政は危機的」と記されています。その後、山一証券、北海道拓殖銀行などの破綻で不況が深刻化するなか、同法は事実上廃案となってしまいました。しかし、その時と現在を比較してみますと、名目のGDPはほぼ同じで、借金だけが3倍に増えています。

現在は日銀に経営破綻の危機が迫っています

 ――2013年に日銀の黒田総裁が開始した「異次元の質的量的金融緩和」(異次元緩和)をどのように評価されていますか。

参議院議員 藤巻 健史 氏

 藤巻 私は2013年に黒田日銀総裁が、その政策の是非はこれからお話しますが、異次元緩和を行わなければ、日本は13年の段階で財政破綻していたと思っています。異次元緩和を行って、国家の財政破綻危機を一時的に凌ぎました。しかし、その日銀に、現在経営破綻の危機が迫っています。日銀が倒産すれば日銀が発行している紙幣は紙くずとなります。

 中央銀行のバランスシートの大きさに関して、金融史が専門のハーバード大学のファーガソン教授は「1950~80年は中央銀行(中銀)の肥大化がインフレと深く関わっていた。1900年以降、主な中銀の資産規模はGDPのほぼ10~20%だが、現在のFRB(連邦準備制度理事会)、ECB(欧州中央銀行)やBOE(英国中央銀行)は約25%で歴史的に見て極めて高い水準にある」と警告をしています。

 日銀の資産規模の対GDP比ですが、1998年当時は約15%でしたが、今や約90%になっています。2016年9月21日の金融政策決定会合で、日銀は「異次元緩和を長期化する」と決めました。この数字がさらに巨大化し、近い将来には100%を超えることは確実です。

禁じ手であり「歴史の教え」を無視した政策

 ――先生は先ほど異次元緩和を行わなければ、13年の段階で日本は財政破綻していたと言われました。同政策以外に他の方法はあったのでしょうか。

 藤巻 日本は先進国の中で最悪の財政状況です。それにも拘わらず、延命して財政破綻が起きていない理由は異次元緩和が行われたからです。しかし、それは禁じ手であり「歴史の教え」を無視した政策なのです。それ故、延命不能になった時のショックはとても大きくなります。日銀は「ジリ貧」を回避しようとして「ドカ貧」の道を選んでしまったと言えます。日銀は「ルビコン川」(一度渡ったら戻れない)を渡ってしまったのです。この先には「三途の川」(財政破綻、ハイパーインフレ)しかありません。私は今回起こるXデーは明治維新、第2次世界大戦に匹敵するぐらいの大激震だと思っています。

1927年と46年に、ハイパーインフレを経験

 日本は1927年と46年にハイパーインフレを経験、そしてその結果、預金を封鎖して、新券を発行、事実上国民の財産を没収しました。にも拘わらず、政府も日銀も全く反省をせず、また同じことを繰り返そうとしています。

 ハイパーインフレとは、通常は1年間で1~3%のインフレが100~200%とか急激に進むことを言います。1年間で物価が2~3倍になります。国の借金が多くなり借金を返すことができなくなり、国の信頼がなくなったときにお金の価値は大きく下落します。もともとお金とはただの紙切れで実際には何の価値もありません。国という大きな存在が、そのお金に価値を持たしているわけです。そのお金の価値を保障している国の信頼がなくなれば、お金の価値はなくなるのは当然で、ただの紙切れに変わります。

 当時私は民間人でしたが、始めから「異次元の質的量的金融緩和」には大反対で「マイナス金利政策」を提唱していました。

(つづく)

【金木 亮憲】

<プロフィール>

藤巻 健史 氏藤巻 健史(ふじまき・たけし) 参議院議員(日本維新の会)・経済評論家
 1950年東京生まれ。一橋大学商学部卒業後、三井信託銀行に入行。80年に行費留学してMBAを取得(米ノースウェスタン大学大学院・ケロッグスクール)。85年モルガン銀行入行、東京支店長を経て2000年に退行後、フジマキ・ジャパンを設立。世界的投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーなどを務める。2013年の参議院選挙で当選、現在に至る。1999年から2011まで一橋大学経済学部で、02年から08年まで早稲田大学大学院商学研究科で非常勤講師として毎年秋学期に週1回半年間の講座を受け持つ。日本金融学会所属。東洋学園大学理事。

 
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