好機を捉えて成し遂げた韓国・慶尚南道議会との友好交流(後)~原口剣生 自由民主党福岡県議団会長
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福岡県議会と韓国・慶尚南道議会は、2012年5月に友好交流協定を締結し、現在でも緊密な友好関係が続いている。当時、どのような流れで締結まで至ったのだろうか。自由民主党福岡県議団会長であり、福岡県日韓友好議員連盟会長も務める原口剣生県議に当時の話を聞いた。
(聞き手:弊社代表・児玉 直)
――あの友好交流協定が締結されるまでに、そういう経緯があったのですね。
原口 そういうことで慶尚南道と交流を続けていますが、他にも慶尚南道の隣の大邱広域市に山一産業(株)(本社:福岡県久留米市、山本稚典代表)さんが工場を持っていらっしゃいますし、私の地元の久留米JCと大邱八公JCが姉妹JCを結んでいたという縁もあり、大邱にも勉強会に行ったりしていました。
――大邱は250万人ぐらいの規模の学園都市だと聞いています。そういうところにも視察に行かれたと。
原口 英語学校があって、日本の教員さんたちが短期留学で勉強に行ったりしています。視察に行ったとき、日本から講義を受けに来ていた人たち30人ぐらいと、たまたま昼食で一緒になりました。話を聞くと「ここは凄いです。短期留学で覚えることに身があります」と。そういう風に教育の勉強をさせていただいたり、ソウルや釜山に進出している日系企業とお話ししたり、他にコンベンションホールも見させていただきました。福岡のコンベンションホールとは規模が違いますね。東京モーターショーを同時に2つも3つも開催できる規模のコンベンションホールがソウルにはあります。国際会議を誘致する手法などを勉強させていただいて、そういったことを県議会で発信してきました。また、そうした交流のなかで、慶南大学の学長さんとお会いさせていただきました。大学内に寺内文庫をキレイに保管してあり、親日の文化があるんですね。そのときに学長さんに聞かれたのが、「従軍慰安婦問題をまず片づけないと、日韓関係は先に進むことはできないと自分たちは思う。それについてあなたはどう思うか」です。「私は総理総裁ではないから、そういったことに答えることはできない。私が今言えるとするならば、地域間交流を続けていくことで、その上に国と国との交流が積み木のように重なっていくだろう。私はそれを信じて日韓友好議員連盟の会長もしているし、こういう交流をいろいろな場所で行っている」と答えました。実際に私はそういう思いで、この5年間やってきました。
――韓国の親日の方々は、いろいろな問題の解決案を日本に聞きたがっていると思います。どのように対応をすればいいんでしょうか。
原口 「従軍慰安婦問題をどう考えるか」。これはどこに行っても聞かれますね。これについては、「そういう歴史的な認識があったことは私たちも存じ上げている。でも、その背景というのは私たちは存じ上げない。それに私たちが発言すると、日本を代表して言ったように書かれることもあるから、それについては私たちは申し上げることはできない。ただ、そういうことはお互いに礼を尽くして考えていきましょう。私たちは韓国から海を少し隔てた九州にいて、お互いに経済交流、広域交流、観光、環境などの課題を避けて通ることはできません。そして、ミサイル攻撃に代表される対北朝鮮の問題もずっと続いている。それについてはお互いの国家観は別として、協力をするべきところはすべきだと私たち地方議員も思います」ということを言ってきました。
毎年、県議会が終了したら慶尚南道に行って交流をしています。他にも、全羅南道の方々が「私たちとも交流を結んでくれ」と昨年福岡県議会にいらっしゃいました。私たちが慶尚南道と交渉したように、今度は韓国側から言ってきているんですね。でも、調印は1カ所としかできないんですよ。「調印はできませんが、友好交流は進めていきましょう」ということで、今度私たちが全羅南道に行きます。
――この4年間、日韓友好議員連盟会長としてさまざまな交流を行ってこられましたが、これは貢献できたという部分は?
原口 あちらは環境問題への関心が高いですね。久留米周辺で使われている。ゴミを分別して、それを燃やして熱エネルギーに変える「ストーカ方式」を勉強されに来ました。そして、とくに勉強したいと言われるのが北九州のロボットとやはり環境。昔の北九州は虹色の雲で青空が見えなく、川はヘドロ状態と一番汚かった都市ですが、今は川に魚が住んでいるし、青空が見えますからね。その次に、果物などの福岡県ならではの農産物。
あとは韓国は超大手が経済を抑えているため、本当の経済交流をなかなかできない状況なんですね。ところが、少しずつ大手だけの状態が緩んできたことで、企業の方たちは地理的に近い福岡との交流を結びたいと考えていますよ。もしお役に立てることがあるならば、交流県として頑張っていきたいと思いますと先方には言っています。
――福岡県の県力であれば対応できますからね。我々北部九州の市民としてはどう対応していけばよいのでしょうか。
原口 私は今まで通りの自然体でいるべきだと思います。そして、やはり末端交流。これを大事にしていけば、いつかは芽が出て花が咲く。それを私は信じて末端交流しています。
ただ、従軍慰安婦問題やデモとかを見ていても、ほんの一部の方々がメディアやインターネットを通じて、昔でいう革マル派などの学生さんを使って、過激なことをやらせているように見えますね。
――そうですね。そういった偏見は、実際には少ないと思います。
原口 私もそういったわだかまりはないですね。福岡という土地には、昔から在日の方がたくさんいらっしゃいます。私は飲食関係の議員連盟の会長もしていますが、焼き肉屋には韓国の方が多く、そういう方々ともよく話をするんですよ。在日だからと困ったことになることもあるそうですが、同じ日本で生活しているのだから、仲良くするべきです。
私たちが韓国に勉強に行っても、丁寧にしっかりと教えていただけます。今までわけ隔てを感じたことはありませんよ。私たちが心配しているのは、これから行われる大統領選挙。経済や教育の交流は良くなっていますが、韓国という国の政治がどうなるのか。そこはお隣の国として見極めていく必要があります。
――大統領を追い詰める体制というのが凄いですよね。
原口 お国柄ですかね。なし崩しにしない。日本は「そこまでしなくても」という部分がありますが、韓国は「自分たちの総帥である人物が、特定の人物を可愛がるようなことをするのは許さない」ということでしょうね。
金守漢会長が言われていましたが、「朴槿恵(パク・クネ)さんは親日だったけれど、大統領になったときに独島の問題などいろいろあって、そこで振り上げた拳を降ろし損ねた。『いいところはいい、悪いところは悪い』と朴槿恵さんは言わなければならなかった。日本も考えるべきところは考えないとダメだし、韓国も引くべきところは引く必要がある」ということですね。
私たちは日韓友好議員連盟を作っていますし、友好交流協定を結んでいますので、支援ができるものは支援して、今後も交流を続けていきたいと考えています。
(了)
【文・構成:犬童 範亮】<プロフィール>
原口 剣生
1954年、福岡県久留米市生まれ。自由民主党福岡県議団会長。第61代福岡県議会議長、福岡県日韓友好議員連盟会長、福岡県生活衛生議員連盟会長などを務める。関連キーワード
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