2024年03月29日( 金 )

ソレキアのTOB価格の引き上げ合戦!佐々木ベジ氏と富士通が白熱バトル(後)

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 佐々木ベジ氏(62)。懐かしい名前を目にした。バブルの時代「秋葉原の風雲児」として一世を風靡した人物だ。現在は、東証二部上場のプラスチック押出機製作のフリージア・マクロス(株)のオーナー。その佐々木氏が「兜町の風雲児」として再び脚光を浴びることになった。東証ジャスダック上場の独立系電子部品商社ソレキア(株)を巡り、富士通(株)とTOB(株式公開買い付け)価格の引き上げ合戦を繰り広げている。4月28日に、どちらに軍配が上がるかが決まる。

通販事業の倒産で、破産宣告を受けたことも

 富士通を相手に大立ち回りを演じている佐々木ベジ氏は、バブル紳士の生き残りの1人だ。1955年9月26日、東京・青ヶ島の生まれ。村長を務めていた父親が菜食主義者であったことから「ベジ」(菜食主義者であるベジタリアニズムのベジ)と名付けられた。15歳で島を離れ、都内の高校を卒業。75年、20歳でフリージア家電を創業。89年度には、家電の低価格安売りで年商200億円をあげるまでに成長させ、「秋葉原の風雲児」と呼ばれた。
 90年、35歳のとき、化粧品のエイボン・プロダクツの買収を仕掛けたが、エイボンの株価が急落したため、10億円のペナルティーを払って撤退した。
 91年、36歳で、東証二部上場の谷藤機械工業(株)を買収して社長に就いた。前経営者が行なっていた海外不動産投資や海外電子事業の輸入の失敗で、87億円の累積赤字を抱え、倒産の危機にあった。佐々木氏は15年かけて累積損失を一掃した。これがフリージア・マクロス。社長の奥山一寸法師氏(56)は佐々木氏の実弟である。
 だが、山があれば谷がある。75年に創業した通信販売会社のピーシーネット(株)が97年9月、東京地裁で破産宣告を受けた。負債総額800億円。個人として560億円の債務保証をしていた佐々木氏は破産宣告を受けた。以降、佐々木氏は経営の表舞台から消えた。

佐々木氏のTOB合戦の狙いは何か?

 その佐々木氏が、兜町に戻ってきた。オールドファンには懐かしい名前だ。この間、佐々木氏は民事再生法を申請した企業の再生請負人を務めていた。上場会社では、中高年男性向け通販、夢みつけ隊(株)、道路法面工事の技研興業(株)を傘下に収めた。2016年には、グループ企業である機械商社のダイトーエムイーホールディングス(株)を台湾市場に上場させた。現在は、フリージア・マクロスを核として10数社の企業群を率いている。
 佐々木氏が表舞台に姿を現わすのは昨年。佐々木氏が全額出資する持ち株会社フリージアホールディングス(株)を設立した。間接保有していたフリージア・マクロスの株式を持ち株会社に集約。フリージアHDはフリージア・マクロス株式の57.7%を保有(16年9月末現在)。佐々木氏は名実ともにオーナーになった。
 フリージア・マクロスの経営は厳しい。17年3月期の連結決算は、売上高は100億円(16年3月期は102億円)、営業利益は7億円(同10億円)と減収・減益の見込み。保有株式の売却益で純利益は8億円(同2億円)の利益を確保するヤリクリ決算だ。株価は20円台と超低空飛行を続けている。株式市場でまったく注目されていない銘柄だ。
佐々木ベジ氏が登場して、派手なTOB価格の引き上げ合戦を繰り広げる。その狙いは何か。ソレキア株を5.1%所有しているフリージア・マクロスが富士通のTOBに応じて、大きな値上がり益を享受するのを意図しているのではないか。いずれにせよ、4月28日に結果は判明する。

(了)
【森村 和男】

 

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