2024年05月07日( 火 )

生体認証に落とし穴はないのか?(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 米国の市場調査会社AMIによると、2015年の世界生体認証の市場規模は26億ドルで、20年には333億ドルが見込まれるという。20年にはすべてのスマホには生体認証が搭載されると見ている。それでは生体認証の方式について、1つずつ具体的に見ていこう。生体認証のなかで一番普及しているのは指紋認証だ。他の生体認証に比べ、安価であることからスマホやパソコンでも利用が増えている。指紋を一度登録しておくと、その後指を当てるだけで本人認証ができるため、抵抗の少ない方法である。しかし、指が濡れていたり、汚れていたり、ふやけていたりすると、指紋の読み取りをうまく行えない。また指を傷つけた場合も同じである。指紋は比較的偽造が簡単なことや誤認識率が高いことも、問題として指摘されている。

 次はGalaxy S7が採用して話題になった虹彩認証。虹彩とは瞳孔の周りの色の付いた部分を虹彩という。虹彩の役割はカメラの絞りのように、網膜に入る光の量を調節する。虹彩は明るいところでは小さくなり、必要以上の光がはいらないように光を調節する。虹彩認証を行うには、スマホに赤外線カメラを搭載する必要がある。虹彩を登録しておくと、カメラを見つめるだけで認証ができる。虹彩は生後2年ほどで安定化し、月日が経ってもほとんど形状が変化しないという。そのため指紋認証に比べて、判別力は数十倍も高くなるらしい。指紋の特徴は40個くらいである反面、虹彩の特徴は266個で、指紋認証に比べ虹彩認証は特徴が6倍も多いとされている。他人と同じ虹彩を持つ確率は10億分1でしかないという。この虹彩の特徴を登録しておくことで、認証する方式が虹彩認証である。米国、イギリス、カナダ、ドバイなどでは出入国の審査に虹彩認が活用されているし、インド、インドネシア、イラク、アフリカでも虹彩認証方式で電子身分証明書が発行されている。虹彩認証にはまだコストがかかるが、高セキュリティを要求される分野では採用が進んでいる。

 そして最後は、静脈認証だ。静脈認証とは、手の血管を流れる成分(ヘモグロビン)が光を吸収する性質を利用して、静脈パターンを読み取ることで実現する認証方式である。手のひらの静脈は本数が多く、複雑で、偽造が困難なので、指紋情報のように偽造される心配もない。また識別の精度は極めて高い。それに手が濡れていても静脈の形状に変化が起きないため、プールや温泉などでも利用が可能である。ところが、静脈は温度変化により血管が収縮したり拡張したりするので、実際に認証する際に登録時の静脈パターンと違ってきて、認証できないような事例も起こるようだ。

 インターネットが日常生活と切り離すことができないような現状では、生体認証技術に磨きがかけられ進化していくことは間違いない。しかし、生体認証は万全ではないことを肝に銘じて、賢く活用されることを期待したい。

(了)

 

(前)

関連キーワード

関連記事